軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300 クマさん、解体できないので断る

「ユナちゃん、久しぶり。この子が噂のユナちゃんのクマね」

メルさんが怖がらずにくまゆるに触っている。

そういえば、ジェイドさんパーティーの前では一度もくまゆるのことは召喚していなかったはずだけど、普通に撫でている。

「噂は本当だった」

メルさんに続き、セニアさんもくまゆるに近づいて撫でる。

商人は怖がっているけど、二人とも怖がった様子はない。これが冒険者と商人の差かもしれない。

くまゆるが困っているので助けに行こうとしたら、ジェイドさんが手を上げてやってくる。

「ユナ、ありがとう。助かったよ」

お礼を言われるが、わたしが手伝わなくてもジェイドさんたちなら、被害を出すこともなく倒すことはできたはず。まあ、わたしが手伝ったことで、時間が短縮されたぐらいだ。

「それで、どうしてユナがここにいるんだ?」

それはわたしの方が聞きたいよ。ジェイドさんたちは王都を中心に仕事をしている。ゴーレムのときも、シアたち学生の実習訓練の護衛のときも、学園祭のときも王都で仕事をしていた。

たまに他の場所に行って仕事をするとは聞いていたけど。

ブリッツたちもいたし、砂漠で仕事をするのが 流行(はや) っているのかな?

「わたしは仕事だよ。この先にあるデゼルトの街に届け物があってね」

「それじゃ、わたしたちと同じだね」

「俺たちもデゼルトの街に行くところだ」

まあ、隣の国に行くにしてもデゼルトの街を経由しないと駄目みたいだし、基本的に柱を使って移動するなら、目的は同じになる。あとはわたしが来た方向に向かう場合だけど、移動する方向は同じみたいだ。

「あのう、ジェイドさん。そちらの女の子とクマは」

わたしとジェイドさんが話していると商人たちが怖がりながら尋ねてくる。

くまゆるは怖くないのに。

「さっきの戦いを見て分かるように、こんな格好をしているがれっきとした冒険者だ。そのクマも危害を与えたりしなければ、襲ってきたりはしない」

ジェイドさんがわたしの代わりに説明をしてくれる。

でも、こんな格好って説明になるんだね。だけど、そこは反論はできないから仕方無い。

商人たちはジェイドさんの説明で怪訝そうな顔でわたしを見るが、クマが危険でないことが分かったのか引き下がる。

「でも、ジェイドさん。くまゆるを見るのは初めてですよね?」

「冒険者仲間から話は聞いているよ。それに、クリモニアにいればユナの話は入ってくる」

「ユナちゃんがクマに乗って街から出ていく話は聞くからね」

そういえば、わたしがゴブリンキングやブラックバイパーを倒したことも知っていたよね。クラーケンの噂も知っていたようだし、くまゆるやくまきゅうのことを知っていてもおかしくはない。

「おい、みんな! 話していないで手伝ってくれよ。俺、一人に解体をさせるつもりか?」

わたしたちが話していると、一人でワームの解体をしているトウヤが叫ぶ。

「それぐらい一人でできるでしょう」

「がんばれ」

「いや、数が多いって、手伝ってくれよ」

確かに数が多い。砂の上には20体ほどのサンドワームが転がっている。

「早く処理をしないと他の魔物が近寄ってくるかもしれないだろう」

「仕方ないわね」

「トウヤのノロマ」

「いや、俺は悪くないだろう」

仕方なくジェイドさんたちも解体を手伝うことにする。

でも、解体の様子を見ると、魔石だけを回収しているみたいだ。

「おい、クマの嬢ちゃんも手伝ってくれ」

「わたし?」

予想もしてなかった言葉がトウヤの口から飛び出してくる。

「その方が早く終わるだろう。それに魔石の分け前は均等分だ。自分の分ぐらいは解体をしな」

「わたしはいらないからいいよ」

そもそも、解体ができない。お持ち帰りして、フィナに頼むぐらいだ。

フィナもワームなんて解体はしたくないだろうし、お持ち帰りはしない。

「そんなわけにはいかないだろう」

「だって、解体はできないから」

わたしは解体は断固拒否をする。できないものはできない。

断る理由を聞いた四人は驚く。

「解体できないのか?」

「ユナちゃん、冒険者よね?」

「あんなに強いのに」

「冗談だろう」

不思議そうに見られる。

だって、普通のか弱い15歳の女の子に魔物の解体なんて無理だ。まして、幼虫のようなワームは無理だ。

まあ、この世には10歳や7歳の女の子が解体をしたりするけど。

「討伐の報酬はいらないから、解体は遠慮するよ」

「それなら、俺たちが解体したら、ワームを燃やしてくれないか」

ジェイドさんが強制的に解体をさせようとせずに代案を出してくれる。

「燃やすの? ワームは一部の人に珍味って聞いたけど」

「それは違うワームね。サンドワームは不味くて食べられたものじゃないわ」

「それに、珍味とされているのは大きなワームのことだな。ごく稀に大きく成長するワームがいる。ユナが言っているのは、そのことだな」

どうやらサンドワームは不味いらしい。

しかも、珍味とされているのはわたしが倒した大きなワームだけみたいだ。小さいワームはダメみたいだ。

もしかして、あのとき餌として使ったワームは美味しいからクラーケンを釣ることができたのかな?

この世界の食文化は分からないね。

「だからと言って、魔石だけ取って放置すると、他の魔物が寄ってくる可能性がある。だから、不必要な物は燃やして処理をするのが冒険者のルールになっている」

「あとで、ここを通る者の迷惑になるからね」

ああ、確か1万の魔物を討伐したときも、ゴブリンの死体を処理するとかサーニャさんが言っていたっけ。

理由は分かったので、魔石の回収が終わったワームをわたしはメルさんと一緒に魔法で燃やすことになった。

解体作業は四人でやったので、魔石の回収も早く終わり、サンドワームの処理も終わる。

やっぱり、解体技術は冒険者には必要なスキルなのかな?

覚える気はゼロだけど。

「それじゃ、長く留まっていると、また魔物が来るかもしれないから移動しよう」

ジェイドさんは商人たちに移動の指示を出す。商人たちはすぐに移動ができるようにラガルートに乗る。

「ユナはどうする?」

「わたしは先に行くよ」

一緒に行く必要はないので、くまゆるでさっさと行くことにする。

くまゆるのところに向かうために視線を向ける。

「…………!?」

視線の先にはくまゆるがメルさん、セニアさんに抱きつかれている姿がある。

「ユナちゃん、一緒に行こうよ」

「賛成。背中に乗りたい」

「駄目よ。わたしが乗る」

いやいや、それはおかしいでしょう。

なんで、そうなるの?

「えっと、二人ともくまゆるから離れてもらえますか」

「それでユナちゃん。白いクマはいないの?」

「噂では黒と白がいると聞いている」

人の話を聞いてますか? 聞いていないよね。

でも、やっぱりくまきゅうのことも知っているんだね。

「……いますけど」

「見たい」

「えっと、わたしは先を急ぐんで」

「そうね。それじゃ、移動しましょう」

なぜか、くまゆるに乗ろうとする二人。

くまゆるは困った表情でわたしを見る。

「二人ともユナが困っているだろう。移動するんだから、早くラガルートに乗れ!」

二人の様子を見ていたジェイドさんが注意をしてくれる。

でも、二人はジェイドさんの言葉に嫌そうな顔をする。

「わたしクマがいい」

「わたしも」

だから、くまゆるはわたしのだから。

「いいから、早くしろ!」

「わかったわよ」

「ジェイドの意地悪」

二人は渋々とくまゆるから離れて自分たちのラガルートに移動する。

「二人がすまない」

ジェイドさんは謝るが、助かった。

「それで、次の柱で休むがユナもどうだ。魔石を分けたいしな」

「さっきも言ったけど、わたしはいらないんだけど」

「それは駄目だ。冒険者なら受け取れ、今後も足元を見られるぞ。別に多く渡そうと思っているわけじゃない。あくまで等分だ」

そう言われたら断れないので、次の柱までジェイドさんと一緒に行くことになった。

わたしはくまゆるに乗って一番後ろを走る。

ジェイドさんが護衛している商人の数は四人。それぞれが別の商人らしい。この世界では商人が一緒に移動する場合は折半して護衛を依頼をする場合がある。

冒険者ギルドの依頼内容でも、『人数変動あり』と書かれている場合がある。

ジェイドさんたちは移動の間は無言で移動する。

消耗を抑えるためらしい。まあ、暑い中、おしゃべりするのは意外と辛いものがある。

ラガルートは意外と速く、砂漠を走っていく。さすが、砂漠を移動する手段に選ばれた乗り物だ。

まあ、それでも、くまゆるの方が速いけどね。

しばらく走り続けると、休憩する柱に到着する。

商人やジェイドさんはラガルートから降りて、休憩の準備に入る。柱の陰に入り、ラガルートに水を与える。そして、ラガルートに水を与えたメルさんとセニアさんがこちらにやってくる。

「ユナちゃんのクマは速いわね」

「クマが砂漠を走っている姿は不思議」

わたしからしたら、大きなトカゲの存在の方が不思議だ。まあ、その辺りは魔物がいる異世界だから諦めているけど。

「それでユナちゃん、白いクマは?」

覚えていたらしい。

まあ、くまゆると交代するつもりだったからいいけど。

わたしはくまゆるにお礼を言って送還させる。それを見ていたメルさんたちは驚く。そして、くまきゅうを召喚する。

「本当に召喚獣だったのね」

「白いクマ。初めて見た」

二人は今度はくまきゅうを触り始める。

「かわいい」

「綺麗な白」

「あまり、触りすぎないでね」

と注意したけど、二人はくまきゅうを触っている。

後ろを見ると、少し離れた場所にいる商人が驚いている姿がある。

まあ、黒いクマが白いクマに変われば驚くよね。

手品に使えるかな?

「ユナ、魔石の取り分だ」

ジェイドさんがやってきて、サンドワームの魔石を4つくれる。

ここまで来たら断ることもないので、ありがたくもらっておく。

「それにしても噂通りに白いクマもいたんだな」

くまきゅうを触る二人の様子を見ている。

「それで、ユナは一人で行くのか?」

「そうだけど」

「ユナちゃん。一緒に行こうよ」

「クマと一緒」

「そうだな。一人より、皆で移動した方が安全だ」

「でも、嬢ちゃんに必要か? こんな格好をしているのに強いんだぞ」

トウヤの言う通りに必要はないね。

逆に手に負えない魔物が出た場合、一人の方が逃げられる。

「でも、もしものときを考えたら一緒にいた方がいいよ」

「わたしもそう思う」

ナデナデ。

さわさわ。

ナデナデ。

さわさわ。

「おまえたちがクマと一緒にいたいだけだろう」

わたしが心に思っていることをトウヤが代わりに言ってくれる。