軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

294 クマさん、ローザさんたちと再会する

「それで、どうして、ユナちゃんがここに?」

「仕事ですよ」

忘れがちだけど、わたしは冒険者だ。仕事だってやっている。

本当だよ……。

「それで、ローザさんこそ、どうしてここにいるんですか? 最近、クリモニアでは見かけませんでしたけど」

ローザさんたちはミリーラの町からクリモニアにやってきて、しばらく仕事をしていた。

それで、たまに見かけることがあったけど、最近は見ていなかった。まあ、わたしがあまり冒険者ギルドに顔を出していないってこともあるんだけど。

「ブリッツが、いろいろなところに行きたいって言い出してね。仕事をしながら、いろいろなところに行っているの。今回も仕事でこの町に来たの」

ブリッツと別れたわけじゃなかったんだね。

「今日は一緒じゃないんですか?」

ローザさんのパーティーには、リーダーの男性剣士のブリッツに魔法使いのラン、女性剣士のグリモスがいる。男性が一人に、女性が三人なので、わたしは勝手にハーレムパーティーと呼んでいる。

実際にハーレムなのかは謎だけど、他の男性冒険者から見たら、ハーレムらしいから、間違っていないと思う。

「今日は自由行動だから、別行動なの。それで、わたしは町の中を散歩していたら、クマの格好をした女の子が町の入口に見えたから、もしかしてと思ってね。そしたら本当にユナちゃんだったから、声をかけたわけ」

可愛らしい笑みを浮かべる。

どうして、こんな可愛らしい人がハーレムの一人に納まっているのか謎だ。

やっぱり、イケメンだからかな。

「仕事ってことは、護衛? それとも荷物を運ぶのが仕事かしら?」

「運ぶのが仕事ですね」

一瞬、仕事内容を言っても良いものかと脳裏に浮かんだけど。依頼主と運ぶ物を教えなければ良いと思い、そう答える。

「やっぱり、そうなんだ」

「やっぱりって?」

「最近、物資を運ぶ依頼が増えているみたいなのよね」

それって、例の水の魔石と関係しているのかな?

「それで、ユナちゃんは、これからどうするの?」

「冒険者ギルドでデゼルトの街の場所を聞いて、明日には出発かな?」

普通の人はこの町で準備してから、デゼルトの街に向かうらしい。でも、わたしには準備の必要はない。

「ユナちゃん、デゼルトの街に行くの?」

「荷物の届け先がデゼルトの街なんです」

「そうなんだ。それじゃ、あの砂漠を越えて行くのね。わたしからは頑張ってとしか言えないけど、大変よ」

なにか、遠い目をするローザさん。

嫌なことでもあったのかな?

「それじゃ、わたしたちが泊まっている宿に案内してあげようか。今日はこの町に泊まっていくんでしょう?」

「そうだけど、その前に冒険者ギルドに行って、デゼルトの街の行き方を聞かないと」

「でも、先に宿を確保しておいた方がいいわよ。商人が多く来るし、それを護衛をする冒険者もいるから、宿屋は混むわよ。最悪、他の人と雑魚寝なんて嫌でしょう」

う~、たしかに他の人と雑魚寝は嫌だ。そんなところでは落ち着いて寝ることもできない。

まあ、いざとなれば、クマハウスがあるから適当に町の外に建てればいいことだけど。設置場所を考えないといけないので、それはそれで面倒だ。

だから、素直にローザさんの言葉に従って、先に宿屋を確保することにした。

宿屋に向かって歩いていると、先ほどから気になっていることがあるので、尋ねることにする。

「ローザさん、あれってなんですか?」

わたしが見る先には大トカゲのでかいのに乗っている人たちがいる。馬のように手綱を握って、町の中を歩いている姿がある。それも、かなりの数だ。

「ラガルート?」

「あのトカゲみたいなの、ラガルートって言うんですか?」

「ええ、魔物だけど、大人しくて、砂漠を移動するときに乗るのよ。わたしも初めて見たときは驚いたわ」

たしかに、馬じゃ砂漠の移動はできないけど、ラクダじゃないんだ。砂漠って言えばラクダと思ったんだけど。違うらしい。あのトカゲみたいなので砂漠を移動するらしい。

でも、魔物なんだ。

ちょっと、確認のために探知スキルを使用する。すると町の中に無数の魔物の反応が現れ、ラガルートと表示されている。

本当に魔物だ。これ、知らずに探知スキルを使ったら、何事だって思うね。

「危険は無いんですか?」

「わたしも詳しいことは分からないけど、大丈夫みたいよ。基本、大人しいし、昔から砂漠の移動手段に使われていたみたいだから、大丈夫じゃない? わたしもこの町に来て知ったから、この町の人の受け売りだけど」

砂漠を大きなトカゲで移動するなんて、まさしく異世界だからの乗り物だね。

少し、乗ってみたい気持ちもあるけど、わたしにはくまゆるとくまきゅうがいるから、浮気はしない。

「それにしても、視線を感じるわね」

うん、それはわたしも感じているよ。でも、あえて無視をしていた。すれ違う人はわたしたちを見ている。正確にはわたしだけど。

「ローザさんが美人だからですね」

「ふふ、ありがとう。でも、この視線はユナちゃんを見ているわね。ユナちゃんの可愛らしいクマの格好が気になるみたいね」

そこは正直に奇妙な格好とか、珍しい格好とか言ってくれてもいいんですよ。もう、慣れていますから。

「でも、そんな格好をして暑くないの? 見ているだけで暑くなってくるんだけど」

わたしはクマ着ぐるみ装備のおかげで、気温については分からないけど、ローザさんは額に汗をかき、暑そうに手のひらで扇いでいる。

「特別な服だから、暑くないですよ」

「そうなの?」

「そうなんです」

強引に納得してもらう。

涼しいと言っても信じてもらえそうもないしね。

視線を浴びながら、宿屋に向かっていると、見覚えのある女の子が前からやってくる。

「やっぱり、ユナだ」

やってきたのは、ローザさんと同じハーレムメンバーの一人、魔法使いのランだ。

年齢は18歳ぐらいの可愛らしい女の子。この女の子もブリッツの毒牙にかかった一人だ(勝手な思い込み)。

「ラン、どうしてここに? 買い物に行ったんじゃなかったの?」

ローザさんがランに尋ねる。

「行ったよ。でも、一人じゃつまらないから、宿屋に帰るところ。そしたら、二人が見えたから。それで、どうしてユナとローザが一緒なの?」

「ユナちゃんがちょうど町に来たところに偶然に会ったの。それでわたしたちが泊まっている宿屋を紹介しようと思って、宿に向かっているところよ」

「それじゃ、わたしも一緒に行く」

そんなわけでランと一緒に宿屋に行くことになった。

「ユナは相変わらずの格好しているんだね。暑くないの?」

同じことを言われたので、ローザさんに言ったことと同じことを説明をする。

「それでくまゆるは一緒じゃないの?」

キョロキョロと見渡す。

さすがに見知らぬ町の中でクマを連れ歩くわけにはいかない。

驚かれて、攻撃でもされたら、たまったものじゃない。

「くまゆるなら、この中にいるよ」

クマさんパペットをパクパクさせる。

「そういえばあのクマは召喚獣だったわね」

「うう、久しぶりにモフモフしたい」

ランはそう言いながら、わたしのクマの着ぐるみをモフモフする。

「柔らかい」

決して、わたしのお肉が柔らかいわけじゃない。クマの着ぐるみが柔らかいだけだ。

とりあえず、ランを引き離すのをローザさんに手伝ってもらう。

でも、なかなか離してくれなかったので、取引でくまゆるをモフモフしても良い約束をした。

くまゆる、ゴメンね。クマのパペットの中にいるくまゆるに謝っておく。

「ふふ、くまゆるに会える。モフモフができる」

嬉しそうにするラン。

そして、宿屋に到着して中に入ると1階は酒場のようになっている。視線を向けられるが、無視をして、カウンターのところに行く。

「あら、二人とも戻ったのかい?」

カウンターにいる、少し肉つきの良いおばちゃんがローザさんたちに声をかける。

「戻りました」

「それで、その可愛らしい格好した女の子はなんだい?」

おばちゃんがわたしの方に視線を向ける。

「わたしたちと同じ冒険者ですよ。仕事でこの町に来たところを偶然に会ったんです。それでこの宿を紹介しようと思って」

「この可愛らしいクマの格好した女の子が冒険者?」

おばちゃんは信じられないような表情でわたしを見る。

これもいつものことだ。

「そこらにいる冒険者よりも強いですよ」

「わたしたちが束になっても勝てないかも」

「今まで、嬢ちゃんみたいな若い冒険者は見てきたけど、強いとなるとね」

二人の言葉に、あらためて信じられなさそうにする。

「本当ですよ」

「ランクもわたしたちと同じC」

「本当かい」

「本当ですよ」

全員の視線が集まるのでいたたまれなくなる。

クリモニアで会ったときに、ランクのことを聞かれたので、Cランクに上がったことは教えてある。

でも、このままではいつまでもわたしの会話が続きそうなので、得意技を発動する。

秘技、会話ずらし。

「あのう、それで部屋の方は?」

とりあえず、部屋をお願いして、逃げることにする。

「ああ、ごめんよ。一人部屋でいいんだよね」

わたしは頷く。

見事に会話を変えることができた。

「ごめんよう。それが、空いている部屋がないんだよね」

「そうなの?」

わたしの代わりにローザさんが尋ねる。

「なんとかならないんですか?」

「うーん、そうだね」

「ローザさん、わたしなら別の宿に行きますから」

宿屋なら他にもあるはずだ。最悪、クマハウスがある。

「駄目、約束」

宿屋を出て行こうとするわたしを、ランがわたしの着ぐるみを掴む。

そうだったね。くまゆるをモフモフさせる約束をしたね。

「それなら、わたしたちの部屋に泊まればいい」

ランがとんでもないことを言い出す。

「ランの部屋って、……ブリッツがいるんでしょう?」

男の人と一緒の部屋に泊まるのはさすがに。

「大丈夫。追い出すから」

「そうね。それは良い考えね」

ランのアイディアにローザさんも賛同する。

「いや、それはまずいでしょう」

「ふふ、冗談よ。元から別々の部屋を借りているの。わたしたちが借りたとき、三人部屋と一人部屋しかなくてね。あとで、四人部屋も空いたんだけど。面倒だから、このまま借りているわけ」

「でも、三人部屋なんでしょう?」

「大丈夫、ユナは小さいから、一緒に寝れるよ」

「え、遠慮するよ。他の宿に行けば良いだけだし」

「なら、あんたたち四人部屋に移動するかい?」

「四人部屋空いているんですか?」

「さっきは空いてないって」

「空いてないのは一人部屋さ。四人部屋なら空いてるよ」

「なら、四人部屋に移動させてもらおうかしら。それなら、ユナちゃんも問題はないでしょう」

「えっと、わたし一人で、その四人部屋を借りてもいいけど」

お金ならあるし。

なによりもその方が落ち着く。

「駄目よ。同じ部屋じゃないと、くまゆるちゃんをモフモフできない」

それが理由ですか。

「おばさん。とりあえず、三人部屋から四人部屋への変更をお願いします。代金はわたしたち持ちで」

ローザさんが部屋の変更の手続きをお願いする。

「わたしも払うよ」

「いいのよ。ユナちゃんにはあのときにお世話になったからね」

お世話になったのはわたしも同様だ。

あのときはわたし一人じゃできなかったことが多い。

盗賊から救い出した人たちに言葉をかけ、家族を殺された人たちに優しく声をかけたのはローザさんたちだ。あのときのわたしはなにもできなかった。あのときは盗賊を倒せば終わりと思っていたけど、それだけじゃないことを知ったときだった。

「それじゃ、部屋はあんたたちが使っている階の一番奥の突き当たりの部屋になるよ。三人部屋を空けたら、鍵は返しに来ておくれ」

おばちゃんは四人部屋の鍵をローザさんに渡す。