軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

293 クマさん、町に到着する

キングオオスズメバチの後ろから数匹のオオスズメバチが現れる。

わたしはくまきゅうから飛び降りる。

「くまきゅう、おじさんをお願い!」

オオスズメバチもいるので、くまきゅうにおじさんの護衛を任せる。

「嬢ちゃん!?」

「おじさんは絶対に動かないで!」

わたしはおじさんに忠告すると、目の前の大きなキングオオスズメバチと対峙する。キングオオスズメバチはお尻をわたしに向けて突き出すと、大きな針を出す。

そんな大きな針で刺されたら死ぬから。尖端恐怖症じゃないけど、怖いよ。

キングオオスズメバチは針をわたしに向けたまま、一気に急降下してくる。わたしは横に避け、すれ違うタイミングに合わせて、クマパンチを胴体に打ち込む。プニュウって柔らかい感触が伝わる。そのまま、クマパンチを振り抜く。キングオオスズメバチは地面を転がる。

致命傷を与えた感覚はない。

獣や甲殻類と比べると、柔らかいみたいだ。倒せない相手じゃない。

でも、あまり触りたくないね。なによりも、至近距離でキングオオスズメバチの顔を見たくない。虫嫌いもあるけど、すれ違いで見た顔が怖い。あの口で噛まれたらと思うと、震えてしまう。

悪いけど、長く相手にしたくないので、早々と決着をつけさせてもらうことにする。

倒れているキングオオスズメバチは口をカチカチさせ、羽を高速に振動させると飛び上がろうとする。逃がさないように風魔法を放って追い討ちをかけるが、キングオオスズメバチの方が早く、一気に飛び上がってしまう。

いろいろと気持ち悪いことを考えていたら、反応が遅れてしまった。

飛び上がったキングオオスズメバチに攻撃を仕掛けようとしたとき、後ろから叫び声があがる。

「あわわわわわ。こ、こっちにくるな」

声がした方を見ると、おじさんに襲い掛かっているオオスズメバチがいる。でも、くまきゅうがわたしのお願い通りにおじさんを守っている姿がある。

オオスズメバチがおじさんを襲う。でも、くまきゅうが襲い掛かってくるオオスズメバチにタイミングを合わせて、本物のクマパンチをして叩き落とした。そして、地面に落ちたオオスズメバチにトドメの一撃を与える。

おお、くまきゅう、格好いい。

「こっちは任せて」的な表情でわたしを見るので、おじさんのことはくまきゅうに任せて、わたしはキングオオスズメバチに専念することにする。

わたしは空を飛んでいるキングオオスズメバチに向けて、風の刃を放つが簡単にかわされる。大きい図体のくせに小回りはきくみたいだ。

今度は避けられないように連続で風の刃を放つ。今度は躱すことはできない。命中したと思ったが、風の刃は消える。

うん? 振動? 羽の起こす風?

わたしの攻撃を防いだキングオオスズメバチは飛び上がっていく。

それなら、これならどう?

土の塊を放つ。これなら、振動や風で防ぐことはできないはず。だが、キングオオスズメバチはクルッと回転して避ける。そして、再度、お尻を突きだし、わたしに針を向けて急降下してくる。

大きいくせに動きが速い。本当は虫が相手なら、炎系がいいんだろうけど、さすがに森の中じゃ、木に燃え移りでもしたら大変なことになるから使えない。

わたしは急降下してくるキングオオスズメバチの前に土のクマを作り上げる。しかも魔力を注ぎ込んで、強度もアップ。キングオオスズメバチの立派な針は土のクマに突き刺さることもなく、ポキッと折れる。そして、キングオオスズメバチは地面に落ち、口をカチカチさせる。

ううぅ、やっぱり至近距離で顔を見ると駄目だ。

でも、今が倒すチャンスなので、倒れているキングオオスズメバチの頭を風魔法の刃で切り落とした。

無事にキングオオスズメバチの討伐が終了する。

わたしはすぐにおじさんのことを思いだして、くまきゅうの方を見る。

そこには数匹オオスズメバチが地面に落ちており、おじさんとくまきゅうが仲良くしている姿があった。

どういうこと?

「倒したのか?」

「うん」

おじさんとくまきゅうが仲良くやってくる。

「嬢ちゃん、本当に凄いな」

倒れているキングオオスズメバチを見て、おじさんの口から素直な感想が出る。

それにしても大きい。こんな蜂の魔物がいるのはゲームの世界だけだと思ったよ。まあ、異世界だけど。

「おじさん、このでかいのは?」

「分からん、初めて見た。でも、こんな大きなオオスズメバチが村の近くにいたと思うとゾッとする。本当に嬢ちゃんには感謝だな。ありがとう」

まあ、偶然に居合わせて倒しただけだ。成り行きとも言う。

それに虫系の魔物は討伐するに限る。

「それと、嬢ちゃん。このクマはなんて言う名前なんだ?」

「くまきゅうだけど」

「くまきゅうって言うのか。可愛らしい名前だな。くまきゅう、守ってくれてありがとうな」

おじさんはくまきゅうの頭を優しく撫でて、お礼を言う。

「くぅ~ん」

くまきゅうは可愛らしく鳴く。

少し前にくまきゅうを見て、驚いていた人とは思えない変わりぶりだ。

なんでも、オオスズメバチから守ってくれたのに感激したらしい。

「クマはこんなにも可愛いものだったんだな」

「わたしのクマが特別なんだよ。間違っても、野生のクマに近づいちゃ駄目だからね」

野生のクマに近づいて、襲われでもしたら危険だ。間違えば死ぬかもしれない。

「分かっているが、こんなクマがいることを知ってしまうと、撫でてしまいそうだ」

おじさんはくまきゅうの頭を何度も撫でる。

本当に危険だから、止めてよ。

それから、わたしはキングオオスズメバチをフィナの解体の練習用にクマボックスに仕舞う。

こんなのいるかな、と思いつつ。

おじさんはくまきゅうがオオスズメバチから守ってくれたことが嬉しくて、何度もわたしではなく、くまきゅうにお礼を言っている。

たしかにおじさんを守ったのはくまきゅうだけど、他のオオスズメバチやキングオオスズメバチを倒したのはわたしなんだけど。

まあ、くまきゅうが怖がられるよりはいいけど、納得がいかない部分もある。

それから、わたしは砂漠に向かう道を教えてもらうために、おじさんの村の近くまで行くことになった。

「でも、この目で見ても信じられないな。嬢ちゃんみたいな可愛い女の子が冒険者で、オオスズメバチを倒すなんて。しかも、こんなクマまで従えて」

「まあね」

「それで、嬢ちゃんには礼もしたいから、村に寄ってほしいんだが」

「さっきも言ったけど、お礼はいらないよ。別に村のために倒したわけじゃないし。それにちょっと急いでいるから、お礼なら道を教えてくれるだけでいいよ」

道に迷って、余計な魔物討伐までして、時間をかなり浪費してしまった。今は少しでも急ぎたい。

わたしが道に迷ったせいで、街が手遅れになったなんてことになったら困る。

「あと、本当にあのオオスズメバチをもらってもいいのか?」

「いいよ。今度、魔物が現れたら、冒険者に依頼をする資金にでもして、魔物討伐は専門家に任せた方がいいよ」

洞窟の前に置いてきたオオスズメバチは村の人たちにあげることにした。

わたしには不要だ。貰った数匹も、フィナがいらないと言ったら、速攻で処分するつもりでいる。

それに村の人がおじさんみたいに頼りない人たちばかりとは思わないけど。おじさんが魔物と戦うことを想像すると不安になる。

あんな腰を抜かして、適当にナイフを振り回したからといって、魔物が倒せるわけがない。

それなら、今後の討伐用の資金にしてもらった方が精神的に安らぐ。

「そうだな。そうさせてもらうよ。俺にはあんな魔物と戦うことはできないからな」

分かってくれて一安心する。

それから、しばらく歩くと村が見えてくる。

「あれが俺の村だ。そして、この道を進むと大きな道に出る。その道を左に行くと王都、右に行くと嬢ちゃんが目指しているカルスの町に行くことができる」

道はこっちだったんだね。見事にずれていた。あのまま進んでいたら、違うところに行くところだった。

オオスズメバチとおじさんに感謝だね。どっちか片方が無くても駄目だ。

オオスズメバチがいなければ、森の中でおじさんと会うことはなかっただろうし。おじさんが居なかったら、オオスズメバチを倒して、そのまま進んでいた。2つの出来事が重なったことで、道を知ることができた。

「もし、村の近くに来ることがあれば、いつでも寄ってくれ。嬢ちゃんなら、歓迎する。もちろん、くまきゅうも歓迎するぞ」

「くぅ~ん」

「ありがとう。そのときはお願いね」

くまきゅうは嬉しそうに鳴き、わたしも村の近くに来ることがあれば、行くことを約束する。

わたしはおじさんに教わった道をくまきゅうに乗って走らせる。

そう言えば、おじさんの名前を聞くのを忘れたね。わたしも名乗っていないし、名乗ったのはくまきゅうだけだ。

まあ、村に行くことがあれば、そのときに聞けばいい。

「くまきゅう、急ぐよ」

「くぅ~ん」

くまきゅうは返事をすると速度を上げる。

今度は迷子にならないように道なりに進む。休憩を何度かいれ、そのたびにくまゆるとくまきゅうを交互に入れ替える。

「くまきゅう、ありがとうね。休んでね」

走ってくれたくまきゅうにお礼を言って送還する。そして、くまゆるを召喚する。

「くまゆる、お願いね」

くまゆるに乗って進む。進むに連れて、岩肌が増え始める。

だんだんと砂漠に近づいている感覚になる。

やっぱり、雨が少ないのかな?

途中で一泊して、翌日の昼過ぎに町が見えてくる。周辺は岩肌ぐらいしか見えない。あの町が国王と、道を教えてくれたおじさんが言っていたカルスの町だろう。

この町を越えて進めば砂漠に出るらしい。

くまゆるに乗って、町の近くまでやってくる。

このまま、くまゆるに乗って町に入ることはできないので、人が見えていないところでくまゆるを送還して、町の入口まで歩く。

そして、入口に立っている人がわたしの格好を見ると、いつも通りに変な物を見るような目で見られる。まあ、いつものことだ。

「嬢ちゃん、どこから来たんだい?」

物凄く怪しい目で見られている。

素直に王都と言うべきか、近くの村と嘘を吐くべきか。

そもそも、クマの格好をした女の子が歩いてくることが怪しいんだよね。せめて、馬車や馬があれば別なんだろうけど。

「もしかして、ユナちゃん?」

わたしが悩んでいると、わたしを呼ぶ声が聞こえてくる。

「ああ、やっぱり、ユナちゃんだ」

嬉しそうにわたしのところに見覚えのある女性がやってくる。

「ローザさん? どうしてここに?」

わたしに声をかけてきた人物はミリーラの町でお世話になったローザさんだった。男のブリッツが一人に三人の美人や可愛い女の子を 侍(はべ) らせていたハーレム冒険者パーティーの一人だ。

でも、今はローザさんしかいないようだ。もしかして、愛想を尽かして、別れたのかな?

それから、わたしはローザさんのおかげで、言い訳をすることもなく、町の中に入ることができた。