軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

295 クマさん、デゼルトの街への行き方を教えてもらう

「ユナちゃん、それじゃ行こうか」

宿屋のおばちゃんから鍵を受け取ったローザさんは、逃がさないようにわたしのクマさんパペットを握る。後ろからはランが背中を掴む。

えっと、逃げたりしないから、離してほしい。

でも、わたしの気持ちは通じることはなく、連行されるようにローザさんたちが借りている三人部屋に連れていかれる。部屋の中に入ると、剣の手入れをしているグリモスの姿があった。

グリモスは言葉数が少ない女性だ。女性としては背が高く、大きめな剣を扱っている。

ブリッツがリーダーでローザさんが影の支配者で、ランがムードメーカーなら、グリモスは縁の下の力持ちって感じのパーティー構成だ。

「グリモス、部屋を移動するから、片付けて」

ローザさんは部屋に入るなり、グリモスに向かって言う。

いきなり、そんなことを言われても困ると思ったんだけど、グリモスは「わかった」と言うと剣を鞘に納め、他の荷物も片付け始める。

ローザさんもランも荷物の片づけを始める。

そして、何事もなかったように部屋を後にして、四人部屋に移動する。

手慣れている感じだね。

部屋に入るとベッドが等間隔に4つ並んでいる。わたしは一番奥のベッドを借りることになった。

「ユナ、元気そうだな」

グリモスが荷物を置きながら、声をかけてくる。

無視をされていたわけじゃなかったんだね。

元から口数が少ないから、その辺りの判断が難しい。

「グリモスも元気そうだね」

「それだけが取り柄だからな」

言葉数は少ないけど、久しぶりに会えたのが嬉しそうに微笑んでくれる。

「それじゃ、ユナ。そろそろ、くまゆるを」

ランが隣のベッドにやってきて、くまゆるを所望する。

「ごめん。これから、冒険者ギルドに行かないといけないから、帰ってきてからでいい?」

「え~~~、どうして? なんで? 約束したじゃん」

約束はしたけど、今とは言っていない。

一年後でもいいはず。

「明日の朝には出発したいから、デゼルトの街の行き方を聞いておきたいの」

「それなら、わたしが教えてあげる。その方が早いでしょう」

たしかに、ランから聞いた方が早い。なによりも、トラブル回避ができる。わたしが冒険者ギルドに行くと、高い確率で絡まれたり、バカにされたり、笑いものにされる可能性が高い。それなら、ランから聞いた方が余計なトラブルは起こさないで済む。

「それじゃ、お願いしてもいい?」

「でも、教えると言っても、それほど話すことはないんだけどね」

「基本を守れば迷子にならずに済むからね」

ローザさんも来て、ランの隣に座る。

迷子と言われると、この町に来るときに道に迷ったわたしは苦笑いを浮かべるしかない。

「とりあえず、町の外に出ると、柱が見えるから、それを目指せば、デゼルトの街に行くことができるよ」

「柱?」

いきなり、変なことを言い出した。

砂漠の中に柱が立っているって、意味が分からない。

「昔の人が作ったらしいんだけど、デゼルトの街に行く方向に柱が等間隔で立っているの。砂漠で迷子にならないように建てたらしいの」

「砂漠には道もなければ、目印になるものもないから、砂漠で唯一、目印になるのがその柱なの」

「だから、デゼルトの街に行くなら、柱を目指して進めば、基本、迷うことはないよ」

なんとも耳が痛い話だ。数日前に国王から道から逸れなければ、迷わずに町に行けると言われたのに、近道やくまゆるたちが驚かれるのが嫌で、道から逸れて迷った自分がいる。

「本当に柱を建ててくれた人には感謝よね。進む先に柱があるから、デゼルトの街に行くときは迷わずに行けたわよ」

「ローザさんたちはデゼルトの街に行ったことがあるんですか?」

「護衛で一度だけね」

「あれは大変だったわ」

なにか、二人が遠い目をする。

「あと、ユナはラガルートは大丈夫?」

「ラガルート? 大きなトカゲだっけ?」

町の中を歩いていた、大きなトカゲを思い出す。

「うん。みんな、あれに乗って、デゼルトの街に向かうの。ランはね。ラガルートは苦手なのよ」

「あの、チョロチョロと出る長い舌が駄目。ユナも乗るなら覚悟した方がいいよ」

どうやら、ランは爬虫類系が苦手みたいだ。

わたしはどうなんだろう? 虫ほどの嫌悪感ないけど、くまゆるたちみたいなモフモフ系の方が好きだ。

「わたしはくまゆるに乗って行くから、ラガルートには乗らないかな」

「クマで砂漠を移動するの?」

「そうだけど」

わたしの言葉に二人は驚く。

まあ、砂漠とクマではイメージができないからね。

そもそもクマが砂漠を移動すること自体が間違っている。

「くまゆるが可哀想だよ」

「無謀よ」

「わたしのクマは召喚獣だから、大丈夫だよ」

心配されるが、うちの 子(クマ) は優秀だから、雪の中、砂漠の中、大丈夫なはずだ。

「そうなの?」

「羨ましい。わたしもくまゆるが欲しい」

ランが羨ましそうにするが、あげないよ。

「それじゃ、その柱を目指して行けば、デゼルトの街に行けるってことでいいんだよね」

「うん、冒険者ギルドに行っても、同じことを言われると思うよ」

「それ以外に行き方はないしね」

それじゃ、問題はすれ違う人たちの対処ぐらいかな。遠くに柱が立っているなら、多少離れても大丈夫そうだし、平気かな?

「それと、本当かどうかは分からないけど、柱には魔物避けがほどこされているらしいから、休憩するなら柱のところでするといいわよ。わたしたちもギルドで聞かされただけだからね。本当のところは分からないけど。移動する者は、皆、休憩や、夜営をする場合は柱のところでするわ」

「まあ、実際に柱にいても魔物と遭遇したって話も聞くから、半信半疑だけどね」

「わたしたちのときは、わたしの日頃の行いが良かったから、一度も魔物は現れなかったけどね」

なぜか、ランが自慢気に言う。

でも、多少なり、魔物避けになっているのは移動する者にとっては助かると思う。

まして、砂漠で移動しにくいし、熱いだろうし、そんな中で魔物と戦いたくないだろう。

「だから、柱と柱の間が魔物との遭遇が高いから気を付けてね」

ローザさんとランの説明が終わる。

思っていたよりも、簡単に目的地に着けそうだ。

あとはくまゆるたちが、砂漠でも問題がないかぐらいだ。

「ありがとう。助かったよ」

「それじゃ、さっそく、くまゆるを」

コンコン。

ランがわたしに迫ってきたとき、ドアがノックされる。

「みんな、いるのか?」

ドアの外から男性が尋ねてくる。

どこかで聞き覚えがあるような。

「いるよ~。入っていいよ」

ローザさんは迷うこともなく、ドアに向けて大きな声で返事をする。するとドアが開き、このパーティーのリーダーであるブリッツが入ってくる。

「クマの女の子と一緒に四人部屋に移動したと聞いたから、もしかしてと思ったが、やっぱりユナか」

部屋に入ってきたブリッツはわたしのことを見る。

「それで、なんでユナがここにいて、同じ部屋になったんだ?」

「ユナちゃんは仕事で来たの。それで偶然会って、この宿を紹介したんだけど、一人部屋が空いてなかったの。それで、四人部屋が空いていたから、みんなで移動したわけ」

「もしかして、焼きもち? 今日はブリッツのいる場所はないよ」

ランがニヤニヤしながらブリッツを見る。

「そんなわけがないだろう。俺は理由を知りたかっただけだ。とにかく、リベルさんが早く鍵を返しに来いだって」

「ああ、忘れていた」

ローザさんが慌てて立ち上がる。

話の流れからして、リベルさんって、さっきのおばちゃんの名前かな?

「それから、夕飯だぞ。俺は混む前に食べたいけど、お前たちはどうする?」

「えっ、もうそんな時間?」

外を見ると薄暗くなっている。

どうやら、話し込んでいる間に時間が過ぎていたみたいだ。

「くまゆるは? まだ、モフモフしていないよ」

「ラン、それは食事のあとだよ」

「え~~~」

「グリモス、ランを引っ張って、あと席の確保もお願い」

「わかった」

グリモスは背の低いランを軽々と持ち上げる。

「ちょ、行くから離して~~~」

そして、二人は部屋から出ていく。

「ブリッツもユナちゃんも行くわよ」

ローザさんはわたしの腕を掴むと引っ張る。

断る理由もないので、一緒に食事をすることになった。ローザさんは一階に降りると、おばちゃんのところに鍵を返しに行く。わたしはブリッツと一緒に、席を確保してくれたグリモスのところに行く。テーブルは円型になっており、すでにグリモスとランが座っている。

どこに座ればいいかと悩む。ハーレムパーティーだと、順位があって、パーティー中の順位が高いほど男の側に座れると聞いたことがある。

だから、わたしがブリッツの隣に座ることはない。

ブリッツがグリモスの隣に座る。そうなると、必然的にブリッツの隣の空いている席はローザさんになる。

わたしは結論に達して、ランの隣に座る。

「ユナ、今、変なことを考えて座らなかったか?」

「そんなことはないよ」

ブリッツに心を読まれた。

「人の顔を見て座っただろう」

「気のせいだよ」

目を逸らして、誤魔化す。

ブリッツが疑うように見てくるが、救いの女神がやってくる。

「おまたせ、料理も適当に注文しておいたからね」

ローザさんがわたしとブリッツの間の椅子に座る。

それと、同時に一人の男性がやってきた。

「ブリッツ、ついに子供にまで手を出したのか」

わたしの方を見て言うが、子供って誰?

「違う。これは知り合いだ。あと忠告だが、あまり、その女をからかうことはしない方がいいぞ」

「なんだ、違うのか。てっきり、また、女を増やしたのかと思ったぞ。しかも、変な格好をしているし」

子供とか、変な格好とか失礼な男だ。でも、この程度で怒らなくなったわたしも大人になったものだ。

「えっと、ユナちゃん。彼はこの町の冒険者でドラン。口は悪いけど、冒険者のために見回りをしている良い人よ」

「ブリッツは三人の綺麗どころを独り占めをして、妬みを買っているから、たまに様子を見に来るんだ。そしたら、クマの格好をした女の子が増えているから、トラブルになる前に声をかけた」

「人聞きが悪いぞ。ユナはローザが誘ったんだ。俺は関係ないぞ」

「外から見れば、おまえさんが囲っているように見えるものさ」

つまり、わたしもブリッツのハーレムメンバーの一人と見られていると。風評被害もいいところだ。

「ブリッツの言うとおりよ。彼女は前の仕事のときに一緒にしただけ。そのときにいろいろとお世話になったのよ」

「お世話になった? したの間違いじゃないのか?」

「普通はそう思うわよね。でも、違うのよね。彼女はわたしよりも強い冒険者だからね」

「冗談だろう」

ドランは笑う。

信じていないね。

「とりあえず、そっちの変な格好をした女の子が、おまえさんの女じゃないことは分かった。だから、部屋に連れ込むマネだけはするなよ」

「しないから。あっちにいけ!」

ドランは笑いながら、去っていく。