軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

273 クマさん、学生の魔法を見る

今日はシアと一緒に学園祭を回ることになっているため、一緒に学園に向かっている。

「今日はお姉様と一緒です」

ノアはシアの横を嬉しそうに歩いている。ここにエレローラさんがいれば三姉妹が揃ったかもしれない。見た目だけならエレローラさんは若いから三人が並べば三姉妹に見える。絶対に35歳には見えない。

学園に到着すると、顔を出すために一度お店に向かう。お店に着くとマリクスたちが準備している姿があり、シアも準備を手伝う。今日も途中から友達が手伝ってくれるそうだ。

「それじゃ、お昼過ぎには一度戻ってくるから」

初日は誰も学園祭を見回ることができず。2日目はカトレアとティモルが交代で学園祭を回り、今日はシアとマリクスが交代で見回ることになっているらしい。

「店は俺たちに任せて、遊んできてくれ」

マリクスに見送られ、わたしたちは学園祭3日目に出発する。

今日の道案内役はシアであり、シアが見たいところに行くことになっている。この2日間で十分に楽しんだわたしたちは、今日はシアに付き合うことにしている。

「それでどこに行くの?」

「本当は食べ物屋を回ろうかと思っていたんですけど。昨日、ユナさんが来たあと、友達がいろいろと差し入れを持ってきてくれたんですよ」

なんでも、初日のお店の話を聞いた友人たちがお店を手伝ったり、差し入れを持ってきてくれたりしてくれたらしい。

シアはわたしと違って友達は多い。これが日頃の友人関係によるものだね。

だから、学園祭に出店されている食べ物は食べたので、他の場所に行くことにしたらしい。

「本当はまだ早いんですが、昨日、お店を手伝ってくれた友達が、お城の騎士と試合をすることになっているんです。それを見に行こうと思っているんですが、いいですか?」

もちろん、断る理由はないので、わたしたちはその試合を見に行くことにする。

「でも、学生が騎士と試合しても、勝負にならないでしょう」

一方的な試合になりそうだ。

「本気の試合とかではなくて、騎士を目指す学生がお城の騎士の胸を借りて、練習試合をするみたいなものです。でも、学生たちは自分の力がどこまで騎士に通用するのか確かめるために本気で戦いますよ」

そんなものがあるんだね。ちょっと面白そうだね。自分が戦うのも面白いけど。他人の試合を見るのも面白い。

「あと、ユナさんが見てもつまらないかもしれないけど。魔法の演習もありますよ」

「お姉様、本当ですか!?」

「ええ、ノアが魔法を見たいって言っていたから」

「お姉様、ありがとうございます。嬉しいです」

少し歩いて、やってきたのは小さな第一練習場と言われている場所。3つある広場のうちの1つ。昨日も思ったけど、この学園は広いね。

広場を見ると、学生が魔法を使っている姿がある。

「そういえば、ノアは魔法は使えるの?」

今まで、一度も聞いたことが無かったけど。どうなのかな?

シアが魔法を使えることは知っているけど。

「まだ、教わっていないので、使えません」

そうなんだ。使えると思ったんだけど。

「やっぱり、魔法って学園で習うの?」

「学園でも教えてくれますが、両親から教わることもありますよ」

一応、異世界の住人は全員が魔力を持っている。その魔力で魔石を発動させたりして生活をしている。その中でも魔力が多い人が魔法が使えると聞く。

「ノアはクリフやエレローラさんから教わったりはしないの?」

「学園に通う前に教わることになってますが、まだ分かりません」

「そうなんだ。小さいときから教わった方が良いと思うんだけど」

異世界転生のチート物の話だと、小さいときから魔法の練習をすることで、チートを得る物が多い。魔力が増えたり、属性が増えたりすることがある。そう考えると、小さいときから魔法の練習をした方が良いと思うんだけど。

「ユナさん、なにを言っているんですか。小さいときに魔法を使うと、体の負担になって将来的に魔法が使えなくなるんですよ」

「そうなの?」

「ユナさん。魔法が使えるのに知らないのですか?」

だって、元の世界じゃ使えなかったし、この世界に来てから使えるようになったんだもん。

それに、購入した初心者用の本にも書いていなかった。あくまで魔法の使い方だけだ。

「だから、最低でも10歳まで、魔法は使わない方が良いと言われています。魔法を覚えるのは早くて10歳から12歳です。だから、ユナさんの年齢でそんなに魔法が使えるのは凄いことなんですよ」

なるほど。だから、冒険者ギルドに行くと、「こんなガキが」って笑われるわけか。まあ、冒険者ギルドで絡まれる一番の理由はわたしの格好だと思うけど。

そう考えると冒険者ギルドの入れる年齢が13歳なのも、その辺りが理由があるのかな。

そうなると、この世界には魔法を使える天才幼女はいないことになる。天才幼女がいないと思うとファンタジー的に残念だ。天才少年や天才少女には出会えることを願おう。

でも、ノアの話を聞いて納得した。だから、今まで、子供が魔法を使っているところを見たことが無かったんだね。それに、ノアならわたしに「魔法を教えてください」って言ってきてもおかしくなかったけど、言われたことが無かった。言わなかった理由にはそんな理由があったからなんだね。

なんか、納得してしまった。

でも、子供のときに魔法を使うのは良くないのか。魔力になにかしら原因があるのかな?

さすがに魔力のことを科学的に証明することはできないので、そういうものだと理解しておく。

「それに、わたしが魔法が使えるほど、魔力があるかも分かりません」

これは本に書いてあった。魔力が少ないと魔法が使えないと。

「大丈夫よ。わたしもお母様もお父様も使えるんだから、ノアも使えるわよ」

シアがノアを安心させるように言葉をかける。エレローラさんはミサの誘拐事件のときに、魔法を使っているところを見たことがあるけど。クリフも魔法が使えたんだね。

でも、やっぱり、この手のことは遺伝が関係しているのかな?

そうなると、ティルミナさんも昔に冒険者をしてたって聞いたことがあるけど、魔法は使えたのかな?

「フィナ。ティルミナさんは魔法は使えるの?」

「はい。少しだけ使えると聞いたことがあります」

「それじゃ、フィナやシュリも魔法が使える可能性があるんだね」

ここは「魔法が使えるといいね」と言うべきなのか困った。

魔法が使えるようになり、フィナやシュリが冒険者になりたいとでも言い出したら困る。妹のように思っているフィナやシュリには危険なことはさせたくない。それでなくても、フィナは冒険者ギルドで解体作業をしているから、冒険者側に近い。

もし、冒険者になりたいと言い出したら、ティルミナさんとゲンツさんに止めてもらわないと駄目だね。

わたしは横にいるフィナの頭に手を置く。

「ユナお姉ちゃん?」

いきなり、頭に手を置かれたフィナは首を傾げてわたしを見る。

「なんでもないよ」

わたしが微笑むと、さらにフィナは首を傾げる。

そんなフィナとシュリの将来を心配しながら、広場に目を向けると、学生が魔法を唱えて的に当てる姿がある。手から火の玉が飛び出し、土の塊が飛び出し、的を燃やしたり、壊したりする。

広場の周りはそれなりのお客様が見ている姿があり、魔法が的に命中するたびに拍手が起きる。

「魔法が使えない人はあまり魔法を見る機会がないから、結構人気があるんですよ」

でも、危険を考慮してなのか、大きな魔法は誰も使っていない。もしくは使えない可能性もある。

「わたしも早く魔法が使いたいな」

「お父様とお母様の許可が無いうちは使っては駄目だからね」

「分かっています。わたしもお姉様みたいに魔法が使いたいですから、使ったりはしません」

それから、風魔法や水魔法を使う生徒がいたりして盛り上がる。さすがに氷系の魔法は使う生徒はいない。やっぱり、難しいのかな?

学生による魔法の演習を見ていると、一部が騒がしくなる。

「なんだろう?」

騒がしくなっているところに目を向けると、国王が歩いている姿があった。その横には学生服を着たティリアの姿もあり、その二人を護衛騎士が囲うように歩いている。

フローラ様もいるのかと思って、国王の周辺を見るが、フローラ様や王妃様の姿はない。今日はいないのかな?

「……!?」

「お母様?」

ノアとほぼ同時に国王から少し離れた位置にエレローラさんが歩いていることに気付いた。そして、エレローラさんの方も、わたしたちのことに気付き、笑顔で手を振ってくる。それにたいして、シアを含むちびっ子たち全員が手を振り返す。エレローラさんはそれを見て嬉しそうにする。

国王と一緒に学園に来るとは聞いていたけど、この広い学園で会うとは思わなかった。

そのままエレローラさんは国王のところに向かうと思ったら、わたしたちのところにやってくる。

「偶然ね」

「国王の付き添いですか?」

「まあね。国王陛下みずから学生の実力を見ることになったのよ。本当は学園祭では確認したりしないんだけど。国王陛下がお城を抜け出す理由を作ってね」

そんな理由で見学を。

この国、そんな人が国王で大丈夫なのかと心配になってくる。まあ、性格に難があるが、息子の王子が真面目そうだから、未来の国は大丈夫だと思うけど。こんな父親を持つと息子は大変だね。

あの王子に同情してしまう。

でも、こう考えてみると、国王がわたしのところに来るのはわたしのせいではなく。国王の性格に問題があるように思えてくる。

あの親からどうして、あんな息子が生まれてきたかな?

王都七不思議の一つだね。

「それで、みんなはどうしてここに?」

「わたしの友人に騎士を目指している子がいるんで、応援に来ました」

「あら、それは楽しみね」

勘ぐるような目でシアを見る。

「お母様。勘違いをしているようですが。その騎士を目指している友人は女の子ですよ」

「あら、そうなの?」

エレローラさんは残念そうにする。

そうなんだ。お店の手伝いには男女がそれぞれ数人いた。てっきり、騎士を目指すと言うのだから、わたしも男の子だと思っていた。

「そういえば、マリクスは騎士を目指していないの? お父さんが騎士とか言っていたような気がしたけど」

本人もそんな感じだったけど。

「マリクスも参加するか、悩んでいたけど。綿菓子を選んだみたいです」

おいおい、それでいいのかマリクス。

「それに騎士との試合なら、父親が騎士団だから、いつでもできると言ってましたよ」

まあ、父親が騎士なら、騎士である父親と練習ができるよね。

「でも、国王様が来たって知ったら、悔しがると思いますよ。国王様に見てもらえることなんて、そうあることではありませんから」

たしかに、学生が国王に顔を覚えてもらえる機会はないのかな。大企業の社長に入社予定の学生が顔を覚えてもらえるのと同じことだと思う。

出世の道は上司に顔を覚えてもらわないと難しいって言うしね。

そう考えると、王族に 顔(クマ) ? を覚えられているわたしって凄いことなのかな?

あの王族に対してだと。あまり、ありがたみは感じないけどね。