軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274 クマさん、試合を観戦する

「エレローラさんは戻らなくていいんですか?」

エレローラさんが国王のところに戻らずにわたしたちの近くに座る。

「いいのよ。護衛の騎士もいるし、わたしは付き添いだしね。国王が無茶なことをしたら、止めるのが仕事だから」

無茶って、わたしからすれば似た者同士に見えるんだけど。「無茶する人×無茶する人=大事になる」火に油を注ぐようなことにならなければいいんだけど。

国王からしたら、エレローラさんの無茶を止められるのは自分だけと思っているはず。

お互いに自分のことは分からないものだね。

魔法の演習を見ていると、生徒は国王の登場に気付き、国王に良いところを見せようと張り切りだす。大きな魔法を使用する生徒が現れるが、先生らしき人が止めに入る。

ちょっと、見てみたかったけど。危険だし、これは仕方無い。

ならばと、今度は魔法の数で自分をアピールしようとする者が現れるが、命中率が下がって、散々な結果となる。そして、魔力が尽きたのか、座り込む生徒も出る。

魔力が少ないのか、無駄が多いのか分からないけど、もう少し考えて魔法を使ってアピールしないと、意味が無いような気がする。

「ユナちゃんも参加してくる?」

エレローラさんが学生の魔法を見ているわたしに尋ねてくる。

「遠慮しますよ。わたしは学生じゃありませんから」

それにわたしが人前で魔法を使う意味がない。

目立つだけで、わたしにメリットが無い。

「その格好なら誰も気付かないわよ」

「お断りします」

「あら、残念ね」

「ちなみに、彼らの実力はどのぐらいなんですか?」

「う~ん、学生の中なら、中よりやや上かしら。実力がある子は見せ物に参加はしないからね」

そして、しばらくすると魔法の演習も終わり、魔法を 行(おこな) った生徒たちは国王の前に立つと、全員が一礼をする。それに対して、国王は「これからも頑張るように」と一声をかける。学生たちは国王の言葉に嬉しそうにして広場から退出する。

やっぱり、国王の言葉を貰えると嬉しいものなんだね。実際は仕事はサボるわ、食べ物にうるさい。ただのおっさんだけど。それを知らないってことは彼らの目には立派な国王に見えるんだね。

まあ、わたしも初めて会ったときは立派な国王に見えた。でも、何回も会っていると、そんなイメージは崩れ去った。

魔法演習した学生がいなくなると、次は皮鎧みたいな防具に包まれた学生が広場に出てくる。

騎士を目指す学生かな?

どの生徒も国王がいるせいか、緊張しているように見える。国王に対して、全員で一礼をすると、一対一の学生同士の試合が始まる。いきなり全員でなく、何回かに分けて行われるみたいだ。

自分の番が来るのを待っている学生の方を見ると、女の子の姿が3人ほどいるのが見えた。

「やっぱり、女の子は少ないんだね」

男学生は20人ほどいる。女生徒は少ない。

「普通の女の子は騎士を目指したりしないからね。男性騎士にも嫌われるし、騎士になろうと思う人は少ないわ」

「それじゃ、なんで騎士を目指したりするんですか?」

もしかして、マゾ?

「それはね。ご結婚をした王妃様が当時、護衛騎士を側に置くなら、女性が良いと言われてね。それまでは護衛騎士を含めて、騎士は男性がなるものだったの。でも、王妃様のお願いもあって、女性が護衛に付くようになったの」

まあ、普通に考えれば男性騎士の方が力もあるから、強いだろうしね。でも、護衛がどこまで付いてくるか分からないけど。生理的なところまで付いてこられたら、ゾッとするね。

そう考えると、王妃様の気持ちも分かる。

「それから、ティリア様が生まれたことで、女性が護衛するのが良いと考えられてきたのよ。もちろん、魔物の戦いや戦争になれば、男性中心になるわ。実際に男性の方が騎士は多いからね。でも、王族に女性がいることから、護衛をするなら、女性の方が良いって言われているの。だから、今、騎士を目指している女の子たちはティリア様の護衛騎士を目指しているのよ」

ティリアの護衛騎士か。それなら納得できる。

2日しかティリアのことは知らないけど。天真爛漫で明るく。平民にも優しく。ティリアがお店に顔を出すと、みんな嬉しそうにする。みんなティリアを慕っているのが分かる。

そんなティリアの役に立ちたいと思う生徒がいてもおかしくはない。

「それじゃ、シアの友人って、ティリアの騎士を目指しているんだね」

「ティリア様に声をかけられて以来、ティリア様に心酔してね。手に血豆ができるまで剣を振って、今日まで頑張ってきたのよ。だから、国王陛下が見に来たよりも、ティリア様が来たことの方が嬉しいかもね」

騎士を目指している女の子の方を見ると、国王を見ているかと思ったけど。あれは隣にいるティリアを見ていたんだね。

「ちなみに魔法使いは護衛にはなれないんですか?」

護衛なら魔法使いって道もあると思うんだけど。

「なれるわよ。王妃様の護衛は初めは女性魔法使いがなっていたからね。でも、魔法が使えない者は、騎士になるしかないからね。それに敵に近寄られた場合は魔法よりも剣の方が速い。だから、普通は魔法使いと騎士の両方が護衛に付く場合が多いわ」

それじゃ、シアの友人は魔法は使えないのかな?

初めの試合が終わり、次に女生徒が出てくる。

「ユナさん、あそこにいるのが、友人のリーネアです」

短めの髪をした女の子だ。細身の剣を構えて、試合が始まる。

シアの友人のリーネアが一生懸命に剣を振り、男子学生と打ち合っている。

何度も剣の打ち合いが行われるが、そのたびにリーネアは後ろに押される感じに下がっていく。

こう見ると、やっぱり体格に差があり、騎士や兵士は男性の方が向いているかもしれない。

そして、リーネアが一方的に負ける試合も終わり、次の試合に移る。

「これはエレローラ殿、こんなところで見学ですかな?」

学生の試合を見ていると、鎧に包まれた40代ぐらいの男性が声をかけてくる。そして、エレローラさんが嫌そうな顔をした顔を見ると、男の口元がにやける。

その口元を見た瞬間、思い出す。

先日、お城の騎士の練習場にいたエレローラさんやノアに嫌な視線を向けていた男だ。

「……ルトゥム卿、どうして、あなたがここに?」

「いえ、騎士を希望している生徒の試合役ですが、わたしの騎士団が担当することになっているのですよ」

「そんな話の報告は受けていないわ。たしか、第4騎士団だったはずよ」

「そうですか? それでは行き違いがあったのでしょう」

その口元が釣り上がる笑みが嘘だと物語っている。

「それで、そちらがエレローラ殿の娘のシア嬢でしたな」

ルトゥムと呼ばれた男性はシアを見ると、シアはビクッと体を震わせる。

「それで、なにかしら、わざわざわたしたちのところに来て、騎士を纏めるあなたが、ここでサボっていていいのかしら?」

エレローラさんが前に出て、シアを少しだけ下がらせる。

「エレローラ殿には言われたくないですが、わたしの部下は優秀ですから、大丈夫ですよ。ここに来た理由はエレローラ殿とシア嬢がいるのが見えたので、再度、お願いに来たのですよ。息子との婚約を……」

「「「「…………!」」」」

とんでもない言葉が男から出てきた。

婚約、つまり、結婚ってことだよね。

「それはお断りしたでしょう」

「良い話だと思いますが」

「身分的には問題は無いけど。一番の問題があるでしょう」

「なんでしょうか?」

「あら、分からない? それは、わたしがあなたのことを嫌いなことよ」

気持ちは分かるけど。エレローラさん、ぶっちゃけちゃったよ。

「それは奇遇ですな。わたしもあなたのことが嫌いですよ」

「同じで良かったわ」

お互いに「ふっふっふ」と笑い出す。

この2人なんなの?

「それじゃ、嫌い同士。子供たちの婚約の話は無い方向でいいでしょう」

「そういえば、最近、妙な噂を聞いたのですが、なんでも、クリモニア領主が海に向けて山にトンネルを掘り、その先の町と交流を持ったと聞いたのですが」

「あら、どこでそんな話を」

「もちろん、息子の婚約者のいる街のことは調べてありますよ」

「あら、いつ婚約者になったのかしら? それにシアは婿をとる予定になっているから。お嫁には出せないわよ」

「大丈夫ですよ。息子を婿にすればいいことです。ローランド家が支えて差し上げますよ」

「いらないわ」

パチパチと火花が出る。

「でも、どうやってトンネルを掘ったのでしょうか。洞窟を発見した話もありますが」

「さあ、あなたに教えたりはしないわ」

わたしが掘りました。でも、あまり、知られていないってことは情報操作が上手くいっているみたいで良かった。

「わたしたちの仲ではないですか。教えてくれても」

「あら、わたしたちは仲は悪いでしょう」

「わたしの弟がお世話になるほどの仲です」

「不幸な事故だったわね」

「そうですな。賊が侵入して、殺されましたからね」

ふっふっふと笑い出す2人。

なんか、もう嫌だ。

シアとノアはエレローラさんの後ろに隠れ、フィナとシュリはわたしの制服を掴んでいる。

大人の腹黒い言い合いは子供たちに影響が良くないよ。

「二度とそのようなことが無いように、我が息子を」

「気持ちだけ頂いておくわ。それにクリフが二度と起きないように防衛を強化しているから大丈夫よ」

また、二人は怖い笑みを浮かべる。

「それなら、シア嬢、本人の確認をしましょう。本人が望めば、少しは変わってくるでしょう」

ルトゥムが笑みを浮かべながら、エレローラさんの後ろにいるシアのことを見る。

「わたしの息子と結婚を致しませんか。騎士としても強く。あなたを一生涯守り続けますよ」

「お、お断りします」

シアはちょっと、恐がる感じで勇気を絞って断る。

「そんなことは言わずに、会ってみるだけでも」

「止めてもらえるかしら、娘が怖がっているわ」

エレローラさんはシアの前に立ち、再度シアを庇う。

それに対して、ルトゥムは視線を広場に目を移す。

「おや、そろそろ、我々の騎士との試合が始まるみたいですな。試合を見れば気持ちも変わるかもしれませんね」

広場を見ると、学生は騎士に向かって礼をして、試合が始まる。

騎士は構えをとるが、自分からは攻撃をしたりはしない。あくまで、学生にさせる。でも、学生に隙があると反撃をする。やっぱり、実力差があるね。

こうやって練習試合を見ると、ゲーム時代にプレイヤー同士の対戦したことを思い出す。

あれはパラメータによって、いろんな戦い方があって、面白かった。

攻撃特化型、一撃でも当たると致命的になる。でも、動きが遅い難点があったり。速度が速いけど、攻撃力が低いとか、他にもバランス型もあれば、特殊な戦い方をする者もいた。

「そろそろ、女生徒が出てきますな。怪我をしないとよろしいですね」

ルトゥムが嫌な笑みを浮かべる。

試合が終わり、次に待ち構えていたシアの友人のリーネアが出てくる。

「あなた、まさか」

「この仕事を引き受けたのも、元は女性騎士を目指す者がいると聞いたからですよ。騎士は男性がなるものです。もし、護衛になりたければ女性は魔法使いになればよいのです。騎士は男性の仕事です」

「あなた、まだ、そんなことを言っているの? 女性騎士は認められたものよ」

「ほとんどの女性騎士は名ばかりで、使い物にならない。そんな者に騎士を名乗らせるわけにはいかない」

「女性騎士は、ティリア様、フローラ様のことを考えれば、必要なことよ。国王陛下が決めたことに、あなたが異を唱えるの?」

う~ん、でも、ルトゥムが言いたいことはなんとなく分かる。

試合を見ても男性は力強い戦いができる。でも、女性は力が無い。けど、女性は力は無くても、スピードがある。力を補って戦う方法はいくらでもある。だから、騎士が男性だけってことは否定したい。

「でも、国王陛下が見ている前で、女性騎士希望の学生が叩き潰されれば、どう思いますかな?」

「ルトゥム卿……」

「それに怪我を負えば、騎士を目指す者もいなくなるかもしれませんな」

「リーネア!」

シアが広場に向かって叫ぶ。シアが見る先はリーネアの騎士に対して剣を構える姿がある。

「友人が大怪我をしないと良いですね」

「もしかして、脅かしているのかしら?」

「そんなつもりはないですよ。わたしは国王陛下に現状を知ってもらうだけですよ」

ルトゥムは笑みを浮かべる。