軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

197 クマさん、くまゆるたちと芸をすることになる

「ユナ、悪いがしばらくはそのクマの格好で外を歩かないでもらえるか?」

それって、わたしに外を歩くなと言っているのと同意語だ。

クマの着ぐるみを着ないと不安で外は歩けない。

「おまえさんなら、違う服を着れば気付かれないだろう」

そのような問題じゃない。わたしにとってクマの着ぐるみを着ないのは死活問題だ。

どこに喧嘩を吹っ掛けてくる馬鹿がいないとも限らない。

それにクマの着ぐるみ無しではフィナたちを守ることもできない。もしものことがあったら対処ができない。

そんなことを心の中で思っても意味がないことは分かっている。グランさんはわたしがクマの着ぐるみを着る理由は知らないのだから。

でも、こればかりは仕方ない。グランさんに迷惑をかけるわけにもいかない。それでなくても、ガマガエル貴族のせいで忙しいんだから。

「それじゃ、クリモニアに帰るまで部屋に引き篭もっているよ」

「ユナさん。帰るまで部屋にいるつもりですか?」

元、引き篭もりを甘く見ないでほしい。

テレビやパソコン、ゲーム、漫画、小説が無くても数日ぐらい引き篭もれる……はず。

無理かな?

娯楽が無くても、寝て過ごせばいいかな。それなら可能だ。

「クリモニアに帰るのは2日後でしょう。それなら大丈夫だよ。でも、みんなは出掛けるときは護衛を付けてもらうんだよ」

また、どこぞの馬鹿が現れるかもしれない。気を付けないといけない。

「わたしもユナお姉ちゃんと部屋に残るよ」

フィナが嬉しいことを言ってくれる。優しい 娘(こ) だ。

「それじゃ、一緒に寝てようか」

2日ぐらいなら寝ていられる。

惰眠は好きだ。なにもしないでベッドの上でゴロゴロするのは得意だ。

さすがに一週間とか言われたら辛いが2日ぐらいなら可能だ。

「クリフと一緒に帰るなら2日じゃ無理だぞ」

グランさんがわたしのゴロ寝作戦を否定する。

まあ、否定したわけじゃないけど。「2日で帰れないってどういうこと?」

「当たり前じゃろ、サルバード家があんなことになったんだ。昨日の時点でかなりの悪事が発見されておる。さすがにわしら貴族だけで対処できる案件じゃなくなっておる」

「そうなの?」

クリフやエレローラさんが居れば平気なのかと思ったけど。

どうやら、違ったらしい。

「国王陛下に指示を仰がないといけない。だから、王都に使者を送ったが、王都から人が来るまでエレローラはもちろん、クリフもクリモニアには帰れない」

「それじゃ……」

「間違いなく2日じゃ無理じゃな」

確かにそうだ。クリフもエレローラさんも仕事をしている。

ミサが攫われ、商人の子供も攫われた事件だ。しかも、悪事をしたのが貴族、いろいろと面倒なことはあるはず。

先にクリモニアに帰るって案もあるけど。

このままの状態にして戻っていいのかも悩む。今度、ミサに会いにシーリンの街に来たときに騒ぎにならないかな?

それはそれで面倒だ。

二度と来ない街なら、気にしないで帰るんだけど。

少し、考えごとをしていると、ノアがグランさんに尋ねる。

「でも、グランお爺様。少しは住民の方々には説明はしたのですよね。それなら3日ぐらい過ぎれば」

「もちろん、ユナのクマが安全なことは説明した。わしの知り合いだから大丈夫だと。人を襲ったりはしないと。でも、わしの言葉でも限界はある」

「一応、グランさんは領主なんでしょう。グランさんの言葉でもダメなの?」

「お主だって、目の前に狂暴なドラゴンが現れて、国王陛下がドラゴンに近寄っても安全だと言われても、信じられないだろう?」

まあ、確かにそうだけど。

たとえ、大統領や首相が大丈夫と言おうが怖いものは怖い。着ぐるみ無しでは絶対に近寄れない。

でも、なんで例えがドラゴンなのかな?

そうなると、どのくらいか分からないけど、長期の引きこもりかな?

それなら、トランプでも作るかな。完成したらフィナたちと遊べばいいし。リバーシと違ってゲームの種類も豊富だし。時間潰しには十分にできる。

「くまゆるとくまきゅうは怖くないのに可哀想です。グランお爺様、なんとかならないのですか?」

ノアが悲しそうにグランさんに訴える。

「なんとかと言われてものう。そもそもクマは恐怖の対象だから、怖がられるのは仕方がないじゃろう」

「なら、みんなにユナさんのクマさんは怖くないって知ってもらおうよ」

「どうやってだ?」

それが難しそうだから、外出を禁止され、引きこもろうとしている。

でも、ノアはわたしたちのために一生懸命に考えてくれている。

「……街の中をクマさんたちと散歩をしたらどうですか?」

「昨日の今日だぞ。怖がって逃げていくだけじゃないか? 失敗すると冒険者が駆けつけるぞ」

「そこの辺はグランお爺様がなんとかすれば」

「冒険者ギルドには伝えることはできるが、どこまで徹底できるかわからんぞ」

グランさんに否定されて、また考え出すノア。

「フィナは良い考えはない? このままじゃユナさんと一緒にお出掛けができなくなるよ」

ノアが黙って聞いていたフィナに尋ねる。

フィナは少し考えて案を出す。

「わたしたちがくまゆるとくまきゅうと一緒に遊ぶのはどうですか? わたしたちが一緒にくまゆるとくまきゅうと遊べば危険が無いって分かってもらえるかも」

「そ、それです! クマさんと一緒に遊べて一石二鳥です」

フィナの案にノアが賛同する。

「それなら、なにか芸をさせたらどうだ?」

グランさんがフィナの案に追加する。

「芸?」

「お前さんのクマならできるじゃろう。それならお主の言い訳もできる。わしの誕生日のパーティーのために来てくれたと。だから、調教がしっかりしているクマだと広めることができる。そうなれば普通のクマよりは恐怖心はなくなるじゃろう」

確かに、野生のクマよりは調教ができているクマの方が安心できる。まして、小さな子供と遊ぶ姿を見れば安心度は上がる。

「ユナさん。やりましょう。わたし手伝います」

「ユナお姉ちゃん。わたしも手伝うよ」

う~ん、あまり目立つことはしたくないけど。このまま住民に怖がられたままだといろいろと面倒なのは確かだ。

ミサに会いに来るのも、シーリンで買い物するのもできなくなる。

もしかして、クマを連れていた人物として通報される可能性もある。グランさんに話を付けてもらえれば、捕まることは無くなると思うけど、指を差されて叫ばれることだけは避けたい。

すでに目立つことをしてしまったんだ。それなら恐怖対象よりは、親しみを持ってもらった方がいい。

「うーん、それじゃみんなで一緒にやろうか?」

「「はい!」」

嬉しそうに返事をする2人。

わたしは部屋に戻ってくると、くまゆるとくまきゅうを召喚してなにをするか相談し始める。

そこにミサがやってきて、

「みんなでズルイです。お爺様に聞きました。わたしもクマさんと一緒に参加したいです」

ミサが参加することになり、大人の女性一人と少女が三人になる。

この人数でなにができるかな?

大人の女性がわたし1人だけだからバランスが悪いけど、そこは仕方ない。

みんなでどんなことをするか相談を始める。

でも、わたしが思い付く芸って、サーカスぐらいの知識しかない。

ノアたちもいろいろと考えて、くまゆるたちに聞いている。

「それじゃ、くまゆるちゃんには……」

「くまきゅうには……」

「こんなことはできますか?」

「クーン」

「それならこれは?」

「クーン」

少女とクマが会話している。なんともシュールだ。はたから見たらわたしもこんな風に見えるのかな?

クマに話しかける、クマの格好をした女の子として。

でも、くまゆるたちとフィナたちを見ていると和む。

確かにクマと少女が仲良くしている姿を見ると恐怖心は無くなるかも。

でも、これってくまゆるたちが大人しいって知っているからそのように感じるのかな?

怖いクマと一緒にいたら、「離れなさい!」って叫ぶかも。

わたしがそんなことを考えているとノアがわたしの方を見る。

「ユナさんもアイディアを出してくださいよ。みんなにくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが安心だと知ってもらうんですから」

わたしもノアたちの中に加わり、サーカスなどで行われることを思い出しながら案をだした。

夕飯の食事になるとクリフたちは戻ってきた。

「なんだ。おまえは芸をするのか!?」

クリフが笑い出す。

「わたしじゃないよ。くまゆるたちだよ」

「同じクマなんだから、同じようなものだろう」

どこが同じなのよ。全然違うでしょう。

エレローラさんも「そうね」とか言って笑っているし。

この夫婦、おかしいよ。

「お父様、お母様、わたしたちも一緒に参加するんですよ」

ノアが嬉しそうに報告をする。

ノアは恥ずかしくないのかな?

わたしは着ぐるみのおかげで、開き直っている。このクマの着ぐるみの格好で街を歩き、王都も歩いている。恥ずかしさなんて……。

うん、まだ、あるよ。羞恥心は捨てていないよ。残っているよ。乙女の最後の砦だよ。

「あら、それなら見にいかないといけないわね」

「本当ですか!?」

ノアは嬉しそうにするが、見に来なくてもいいよ。

今、クリフたち忙しいんだよね。大変なことになっているんだよね。そんな暇はないんだよね。あんなことがあったばかりだよ。

「忙しくないの?」

「一通り終わっている。あとは王都から派遣される検問官が来たら、証拠品とガジュルドを引き渡すだけだ」

「結局、ガマガエルはどうなるの?」

「いろいろと悪さをしていたみたいだからね。取り潰しは確定だと思うけど。それは王都に行ってからだね。さすがにわたしたちには貴族を裁く権限はないわ。貴族を裁けるのは王族だけだから。わたしたちはあくまで証拠品、誘拐の事実を報告するだけ。あとは国王陛下が裁きを下してくださるわ」

「まあ、あれだけの証拠があれば、爵位は剥奪だろうな」

含みがある言い方をする。わたしが知っている誘拐だけじゃなさそうだ。

マンガや小説でも悪人は酷いことをしている場合が多い。

取り潰しはいいけど。問題はどうなるかだよね。

平民に格下げになるのか、罰を受けて牢屋に放り込まれるのか。ミサに逆恨みとか無ければいいんだけど。

処罰が決まったら聞かないとダメだね。

「それで、芸はいつやるんだ?」

そういえば決まっていないね。

場所は広場と聞いているけど。

「なるべく、早目がいいじゃろう」

「なら、2日後がいいかしら。それなら、落ち着くと思うし」

「ミサも出るのよね」

ミサの母親が娘に尋ねる。

「はい。頑張ります」

「わたしたちも見に行くわね」

ミサの両親も来る気満々だ。

子供の学芸会を見る感じになりつつある。

わたしはフィナの方を見る。フィナだけ両親がいないのは可哀想だ。

「えっと、ティルミナさん、呼ぶ?」

「呼ばないでいいです。恥ずかしいです」

どうやら、フィナだけは恥ずかしさがあるらしい。

貴族のノアやミサはパーティーとかに参加するから、人前に出るのは慣れているのかな。

その点、フィナは経験が無さそうだ。

先日に誘拐騒ぎがあったのにもかかわらず、みんなで楽しく夕食を食べた。