軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

196 クマさん、お屋敷に戻ってくる

「馬車が必要になるから準備をしておけ!」

子供を連れて一階のフロアに戻ってくると、指示を出しているクリフの姿があった。

「やっと戻ってきたか」

わたしたちを見付けるとクリフがこちらにやってくる。

クリフの顔には少し疲労が見える。

わたしは子供たちをくまきゅうから降ろして、ミサに子供たちをお願いする。

「クリフ、来ていたのね」

「ああ、少し前にな」

クリフはエレローラさんに返事をして、ミサの方に視線を向けてからわたしの方を見る。

「ユナ、ミサーナを助けてくれて、ありがとうな。これでグラン爺さんたちも安心するだろう」

「ノアの方は大丈夫?」

フィナは目を覚ましたけど、わたしが飛び出すときはノアはまだ目を覚ましていなかった。

「大丈夫だ。ユナが飛び出したあと、すぐに目を覚ました」

良かった。ノアもちゃんと目が覚めたんだ。

もし、目覚めなかったら、暴れたかもしれない。

心配ごとが1つ減った。

「そういえば、グランさんはいないの?」

エレローラさんとわたしは周りを見渡すがグランさんの姿は見えない。

孫がさらわれたんだ、真っ先に駆けつけるかと思ったんだけど。もしかして、わたしたちを捜すために屋敷の中を見回っているのかな?

でも、クリフの返答は違った。

「グラン爺さんはおまえさんのせいで住民に捕まっている」

「わたしのせい?」

グランさんがいない理由が、わたしのせいで住民に捕まっているって、意味が分からないんだけど。

どうして、わたしのせいでグランさんが住人に捕まるの?

「ユナ、おまえさんは街中をクマに乗って走っただろう。それで住民が驚いて、いろいろと騒ぎになっていたんだ。そこに領主であるグラン爺さんが現れて、クマが現れたって住民がグラン爺さんを取り囲み始めたんだよ。兵士とか冒険者に依頼とか騒いでな。それで、グラン爺さんは興奮している住民を落ち着かせるために残った」

「確かに、あの狂気に満ちたクマに乗ったユナちゃんを見れば住民は驚くわよね」

エレローラさんは納得している。

そんなに街は大事になっているの?

もしかして、わたし、街の中を歩けない?

わたしピンチ?

わたしが落ち込んでいるとくまゆるが擦り寄ってきて慰めてくれる。

違う。くまゆるはわたしに謝っている感じがする。

「別にくまゆるたちのせいじゃないよ」

頭を優しく撫でてあげる。

「そうです。くまゆるちゃんもくまきゅうちゃんも怖くないです」

ミサはくまきゅうを抱きしめる。

「まあ、そんな訳でグラン爺さんはしばらくは来られない」

でも、これってわたしたちのせいじゃないよね。これはミサをさらったガマガエル貴族が悪いんだよね。誘拐なんてしなければ、怒ったわたしが街の中をくまゆるたちに乗って走ることもなかった。

だから、わたしは悪くない。

でも、しばらくはシーリンの街の中を歩けないかも。

「それでクリフ、話はどこまで聞いた?」

「途中で会ったミッシェル。ここでランゼルから話は一通り聞いた。ユナが暴れたことと。ミサーナを無事に助け出したこと。エレローラとユナが商人の子供を捜しに行ったこと」

くまきゅうと一緒にいる救いだした子供たちを見ている。

「とりあえず、子供たちは無事に保護はできたわ。あとは商業ギルドに連絡をして家族の居場所を聞かないといけないんだけど、今はギルドマスターには会いたくないのよね」

噂だとガマガエル男と商業ギルドのギルドマスターが繋がっているって言っていたっけ。

「なら、グラン爺さんの屋敷でいいだろう。グラン爺さんと贔屓にしていた商人なら、家族と連絡ぐらいとれるだろう」

「確かにそうね。一度、グランさんのところに連れていった方がいいわね」

「今、馬車を準備させているから、ちょっと待ってくれ」

ガマガエル家の馬車を用意しているらしい。

まあ、確かにグランさんのお屋敷に戻るよりは早い。

「気が利くわね」

「とりあえず、必要なことはしておいた。見張りはもちろん、馬車に、周辺の確認、ランゼルが使用人を捜しに行くと言うからこちらからも数名探索に出させておいた」

「屋敷の方にミサの救出の連絡は?」

「途中で会ったミッシェルにそのまま屋敷まで知らせに行ってもらった。早めに安心させた方がいいからな」

おお、さすが領主様、仕事がテキパキしているね。

「でも、安心させるために早めにミサたちを送った方がいいわね。でも、グランさんがいないとは思わなかったわ。いろいろと確認したいことがあったのに。まさかクマ騒ぎで来られなくなるなんて思いもしなかったわ」

チラッとわたしの方を見る。

だから、わたしのせいじゃないって。

緊急事態だったし、ミサが攫われなければクマ騒ぎも起こらなかった。悪いのはミサを攫ったガマガエル貴族だ。

「グラン爺さんからは警備兵は借りてきた。できるところからやれば良いだろう」

「そうね。使用人を全て集めたら、一人ずつ事情聴取。そのあとに各部屋の確認。やることはたくさんあるわね」

「それなら、事情聴取の方は俺がしておく」

「お願いするわ。わたしは部屋を調べに行くわ」

エレローラさんの発言でガマガエル男がウーウーと唸り、顔を真っ赤にさせる。

余程、見られたくない物があるみたいだ。

エレローラさんはそんなガマガエル男を無視してわたしに話しかける。

「ユナちゃんは馬車が来たら子供たちをグランさんのお屋敷に連れていってあげて。ミサも早く家族と会いたいだろうし、安心させてあげて」

わたしがここにいても手伝えることはないので了承する。

それから、すぐに馬車が用意され、わたしは子供たちと一緒に馬車に乗ってグランさんのお屋敷に戻ってきた。

クリフ曰く。

「お前さんを見て住民が騒ぎ出す可能性があるから、クマたちは戻して馬車に乗っていけ」

と言われた。

確かにクリフの話を聞く限りだと騒ぎになりそうだ。

クマたちを送還して、馬車でグランさんの屋敷に帰ってくるとミサの母親が泣きながら出迎えてくれた。

泣いている母親を見てミサも一緒に泣き出す。

その横では父親のレオナルドさんが嬉しそうに母娘を見ている。そして、わたしのところにやってくる。

「ユナさん。この度は娘を救っていただきありがとうございます。もし、攫われたままだったら」

「間に合って良かったよ」

「ユナさんには感謝しきれません。初めてユナさんの格好を見たときは驚きましたが、父はユナさんなら大丈夫だと言っていました」

「本当に娘を救い出してくれてありがとうございます」

ミサに抱きつかれている母親も頭を下げる。

「もう、いいですよ。そうだ。エレローラさんから伝言です。あの子たちの家族に連絡をしてほしいと言ってました」

「あの子たちは?」

「ミサを攫った屋敷に閉じ込められていました。たぶん、商人の子供だと思います。グランさんやレオナルドさんなら、知っているはずだと」

「わかりました。すぐに連絡をいたしましょう」

レオナルドさんは子供に近寄って名前を尋ねる。

わたしは無事にミサを送り届けたので屋敷の中に入って、フィナたちがいる部屋に向かう。

もしかすると2人は寝ている可能性もあるので、静かにドアを開ける。

部屋の中からノアの声が聴こえてくる。

「もう、大丈夫だよ」

「なりません。ちゃんと寝ててください。わたしがクリフ様に叱られます」

「でも、ユナさんが帰ってきたんでしょう?」

「そのようですが、ノアール様とフィナ様は安静にしているように言われています。ノアール様もフィナ様みたいに静かに寝ててください」

部屋の中はノアとメーシュンさんがベッドの側で言い争っている姿があった。

「ノア、元気そうだね」

「ユナさん!」

「ユナお姉ちゃん!」

2人はベッドから飛び出してわたしのところに駆け寄ってくる。

「ノアール様! フィナ様!」

ノアたちの後ろでメーシュンさんが叫ぶ。

「2人とも寝ていないで大丈夫なの?」

「大丈夫です」

「はい。もう、大丈夫です」

2人とも元気そうで良かった。

「それでユナさん。ミサは?」

「大丈夫だよ。ちゃんと助けたから傷1つないよ」

確認はしていないけど。たぶん、無いはず。

「だから、安心していいよ」

二人は相当ミサのことを心配していたらしく、安堵の表情を浮かべる。

わたしたちが話し合っていると、ミサが部屋にやってきて無事の姿を二人に見せてくれる。

「ノアお姉さま、フィナちゃんも心配かけてごめんなさい。それから、わたしを助けようとしてくれてありがとう」

「姉であるわたしが妹を助けるのは当たり前です」

「ミサ様はお友達です」

ミサは数分ほど会話すると部屋から出ていった。

今日は心配させた母親と一緒にいるそうだ。

夕食どきになるとゼレフさんが美味しい料理を振る舞ってくれる。

でも、夕食の時間になってもクリフやエレローラさん、グランさんたちは戻ってこなかった。

翌朝、朝食を食べるためにキッチンに向かうとグランさんがいた。

クリフやエレローラさんの姿は見えない。

グランさんには会う早々に昨日のことにお礼を言われる。

「無事で良かったよ」

一言だけ言う。

本当にミサが無事で良かった。それだけで十分だ。

「グランお爺様、お父様とお母様は?」

ノアが両親のことを尋ねる。

食堂に来る前に隣のクリフの部屋をノックしたが反応は無かった。

もしかして、食堂にいるかと思ったがいなかった。

「まだ、仕事をしておるよ」

二人は昨日は帰ってこなかったそうだ。

グランさんは年寄りだから帰されたと文句を言っている。

「徹夜の1日や2日ぐらい、わしだってできる」

と言うが一生懸命にミサの両親が止めていた。

「それに戻ってきたのは、ユナに言わないといけないことがあってな」

「わたしに?」

「ユナ、悪いがしばらくはそのクマの格好で外を歩かないでもらえるか?」

グランさんがそんなことを言い出した。