軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

195 クマさん、子供たちを救出する

子供の居場所を尋ねたら、勝手に捜せと言う。

エレローラさんは怒っていたけど、捜す方法はいくらでもある。

探知魔法でも、くまゆるたちの力もある。わたしが捜すよと言い出そうとしたとき、二十歳前後の髪の短いメイドさんが小さく手を挙げる。

「子供たちの居場所はわたしが知っています」

「ルーファ!」

ガマガエル男がメイドさんを睨みつける。

でも、すぐにエレローラさんがガマガエル男に水をかけて黙らせる。

「あなた、居場所を知っているの?」

「はい。食事の用意はわたしがしていました」

「ルーファ、俺を裏切ってどうなるか分かっているのか」

「これ以上、罪を犯すのは止めてください。わたしも罪を償いますので」

「ふざけるな。貴様の消えた親の借金を誰が払ったと思っている」

「ガジュルド様です」

「なら!」

ガマガエル男が叫ぼうとした瞬間、エレローラさんの水が再度、ガマガエル男にぶっかけられる。

「ランゼル、口を塞いでちょうだい。うるさいし、口が臭くて堪らないわ」

「エレローラ!」

ランゼルさんは言われるままにガマガエル男の口を布で塞ぐ。

ウーウーと唸っているが静かになった。

「えっと、ルーファだっけ。ガジュルドのことは気にしないでいいから。子供たちのところに案内してもらえるかしら」

「はい」

エレローラさんは周りを見たあと、ランゼルさんを見る。

「ランゼル。使用人たちから、ここにいない使用人の人数と名前を聞き出しておきなさい。そして、クリフたちが来たら、ここをクリフに任せて、あなたたちは屋敷に探索に行って、残りの使用人を捜しておきなさい」

エレローラさんは指示を出し終わるとわたしの方を見る。

「ユナちゃん。悪いけどわたしに付き合ってもらえるかな」

別に構わないので頷く。

「それとどちらか片方のクマを見張り役にここに残してもらえると助かるんだけど」

「それじゃ、くまゆる。見張りをお願いね」

くまゆるはクーンと鳴いて返事をする。

「ミサは」

「ユナお姉ちゃんと行く」

ミサはわたしに抱きつく。

「……わかったわ。でも、ユナちゃんから離れちゃダメよ」

ミサの面倒をわたしに押し付けるエレローラさん。別に構わないけど。

わたしはミサを持ち上げると、くまきゅうの背中の上に乗せる。

「ここなら安全だからね」

ミサはくまきゅうにしっかりと掴まる。

「大人しいクマですね」

ルーファさんがミサを乗せているくまきゅうを見て驚いている。

だけど少し怖がっているようにも見える。

「危害を加えようとしなければ大丈夫だよ」

「そんな、怖いことはいたしません」

そんなに怖がらなくて大丈夫なのに。

ルーファさんを先頭に歩き始め、エレローラさん、わたし、くまきゅうに乗ったミサと続く。

クリフのお屋敷もグランさんのお屋敷も広かったけど。このお屋敷も広いね。こんなに部屋が必要な物なのかといつも思ってしまう。

「でも、子供なんて攫って犯罪にはならないんですか?」

「今回は契約書があるからね」

「それじゃ、無罪放免?」

「う~ん、微妙なところね。もちろん、わたしから見れば犯罪よ。でも、法的に契約書があれば犯罪にはならない場合があるわ。実際に大金を借りるとき、子供を預ける商人もいるわ。お金をもらって逃げられたら困るからね。その場合はお互いの了承があるから問題はないわ。でも、今回は脅迫されているからね」

「それじゃ、今回は犯罪になるんだ」

それならいいけど。

「なる可能性は高いわね。まあ、子供たちの親の話を聞かないとなんとも言えないけどね。もしかすると、ガジュルドに誓いを立てるために子供を預けた可能性もあるわ。言ってはなんだけど、ユナちゃんが現れる前だったら、ファーレングラム家に付くよりはサルバード家についた方が将来性があったからね。だから、契約書の内容次第ね」

たしかに、グランさんに付かずにガマガエル男の方に付けばお金が多く入るとか言われたら、心変わりする可能性はある。

でも、わたしが現れる前ってなに?

まるで、わたしが現れたせいで、ガマガエル貴族が崩壊したみたいに言っているけど。

「自覚がない顔をしているわね。ユナちゃんが王都に来てゼレフを連れてこなかったら、グランさんのパーティーは失敗に終わっていたわ。そして、ミサを誘拐することも無かった。そうなればユナちゃんがサルバード家に殴り込みすることもなかった。殴り込みをしなければこんな状況にはなっていなかったわ。さらに言えばユナちゃんが王都に来なければわたしはここに居なかった。全部ユナちゃんと繋がっているのよ」

そう言われると全てわたしと繋がっている。

「でも、そうなるとミサがわたしにパーティーの招待状を送ってくれたおかげだね」

くまきゅうに乗っているミサを褒める。

ミサが招待状を送ってくれなかったらわたしはここにいなかったことになる。

出会いって大切だね。元の世界で引き込もっていたわたしには得られなかった経験だ。

「ルーファさんはどうして、ここで働いているの?」

ルーファさんはとても真面目そうに見える。それがガマガエル男のところで働いているのが疑問に思ったので尋ねてみた。

「わたしの父が残した借金のため、働かせてもらっています」

「借金?」

「わたしの父は商人でした。商売をしていた父はお金が必要になりました。そこで、ガジュルド様にお金を借りることになりました。でも、商売に失敗して、多額の負債を抱えてしまいました。それで、ガジュルド様は父が逃げないようにわたしの市民カードを取り上げました。わたしは人質です。父は一生懸命に働きましたが、返せる金額ではありませんでした。そして、ある日、父は他の街に買出しに行ったまま、この街に戻ってくることはありませんでした。それで、わたしは父の代わりに借金を返すためにここで働くことになりました」

今、聞き捨てならないことを聞いた。

「エレローラさん、市民カードを取り上げるって」

「通常はお金さえ払えば再発行できるから、カードを無くしたり、取り上げられようが困ることはないけど、相手が貴族だと話は変わってくるわね」

エレローラさんは、少し驚いた顔をする。

「ユナちゃんも分かると思うけど市民カードやギルドカードは街を出たり入ったりするのに必要になるわ。それを取り上げられるってことは街から出ることができなくなるってことになる」

「でも、お金さえ払えば再発行されますよね」

「普通はね。でも、ガジュルドによってカードの発行をさせないようにさせられたら。街から逃げ出すこともできなくなるわ」

「それは仕方ないことです。父は借金を返さずに逃げたのですから。わたしを逃がさないようにするのは普通だと思います」

「でも……」

「父に商才が無かっただけです」

ハッキリとルーファさんは答える。

ルーファさんの告白に静かになる。エレローラさんとルーファさんの歩く音だけが聞こえる。

わたしの足音はクマ靴のおかげで足音はしない。くまきゅうの足音? 聞こえないね。くまきゅうの足はどうなっているのかな?

わたしたちはお屋敷の裏口らしき場所から外に出る。そして、小さな物置小屋みたいなところに連れてこられる。

「こちらから地下に行く階段があります。そこに子供たちがいます」

ルーファさんは鍵でドアを開けて小屋の中に入り、全員が続く。

小屋の中はいろんな道具が置かれている。掃除道具からツボやわたしが知らないものが多くある。

ルーファさんは床に敷かれている布を取ると床にドアが出てきた。

そのドアを開けると下に続く階段が出てきた。

「声が漏れないように地下に部屋があります」

くまきゅうも通れるほどの幅はあるので一緒についてくる。

「地下牢?」

「はい。わたしも入っていたことがあります」

階段を降りて通路に出ると左右にドアが続く。

だいたい10個ぐらいの部屋があるみたいだ。そのうちの1つのドアにルーファさんが止まる。

「こちらでございます」

ルーファさんが鍵を開ける。わたしは隙間から覗き込むと三人の子供がいた。

小学生低学年ぐらいの男の子が二人とわたしと同じぐらいの女の子がいる。

「ルーファさん?」

最年長の女の子が尋ねる。

「みなさん、迎えが来ましたから、外に出られますよ」

「外にでれるの?」

「はい」

「殴られたりしない?」

「しませんから、大丈夫ですよ」

子供たちの言葉にエレローラさんとわたしが反応する。

ガマガエル男、子供たちには傷1つないって言っていたのに。

「わたしはエレローラ、あなたたちのお父さんに頼まれてあなたたちを迎えに来たから大丈夫よ」

エレローラさんが子供たちに優しく説明をしてあげる。

でも、子供たちはエレローラさんではなく、エレローラさんの後ろにいるわたしに目が向けられているように見える。

「クマさん?」

子供たちはわたしの方に近寄ってくる。必然的に部屋から出ることになって、くまきゅうに遭遇することになる。

「…………っ!」

尻餅を突いて驚く子供たち。女の子が小さな男の子を守るように前に立つ。

でも、すぐにくまきゅうに乗っているミサに気付く。

「クマの上に女の子が……」

「怖くないよ。くまきゅうは優しいよ」

ミサはくまきゅうに抱きついて子供たちを安心させる。

「みなさん、このクマは危険はありませんから大丈夫ですよ」

ミサの行動とルーファさんの言葉で三人は少しだけほっとした表情を浮かべている。

「それじゃ、みんな。クマさんに乗ってここから出ようか」

わたしはそう言うと、子供たちをくまきゅうに乗せてあげることにする。

さすがに子供でも四人は乗れないので、女の子には歩いてもらい、男の子二人を乗せてあげることにする。

初めは怖がっていた子供たちもミサの言葉や行動で安心して、くまきゅうに乗る。

乗れば楽しそうにする。帰りはくまきゅうを先頭に歩き出す。

そして、後方でルーファさんがエレローラさんに耳打ちするのが聞こえた。

「あとで他の部屋を確認してください。鍵はガジュルド様のお部屋にあると思いますのでお探しになってください。ただ、子供たちは絶対に絶対に連れていかないでください」