軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

止まる補給線

「エドワルド様。各偵察隊からの報告です……」

仮宿営地。

地図確認の最中、レオンが珍しく僅かに眉を寄せたまま文を差し出した。

「……何があった?」

受け取りながら、エドワルドは短く問う。

「敵補給隊——各地で停止の模様」

「……」

一拍。

「……各地で?」

顔が上がる。

「はい」

レオンも僅かに首を傾げる。

「しかも——場所も、関わらず」

「……」

紙へ視線を落とす。

街道途中、平野部、街道脇、開けた場所。

本来なら、補給隊が止まるには不向きな地点。

「……どういう事だ」

ぽつり。

「……解りません」

珍しく、レオンも断定出来ない。

「この報告だと……」

指で複数地点をなぞる。

「街道途中でも、平野部でも……急停車、ですな」

急停車。

その言葉が、妙に引っ掛かる。

「……」

エドワルドは、地図へ目を落としたまま考える。

故障?

いや——同時多発的過ぎる。

補給再編?

なら、こんな見通しの良い場所で止まる理由が薄い。敵が、こちらに気付いた?

「……」

違う。もし、潜伏や伏兵を疑ったなら。

止まるにしても、もっと警戒配置を取る。

円陣や偵察か索敵を放つ筈。

だが報告では——“止まった”それだけ?

「……俺達の存在が、バレたか?」

低く。

だが、すぐ自分で否定する。

「……いや……バレたなら」

さらに。

「少なくとも、見通しの良い場所で無防備に止まる事はない」

「……」

レオンも、小さく頷く。

「その通りですな」

なら——何だ?

命令かなら有り得る。障害?各地で同時に?有りえない……混乱……か?いや。混乱なら何かしら行動に出る筈。

「……」

敵将が、進軍再編を掛けた可能性もある。

だが——“各地”一点ではない。

複数。しかも、前線本隊だけでなく補給寄り。

「……妙だな」

ぽつり。

何かが起きている。

こちらが見えていない別方向で。

「……レオン」

「はい」

「偵察隊へ」

即座。

「停止地点、監視継続」

「……」

「近付き過ぎるな。動き出したら——直ぐに報告」

「……承知」

レオンが、すぐ伝令へ切り替える。

「各偵察隊へ通達!敵補給停止地点、継続監視!接触回避!再移動確認次第、即時報告!」

「はっ!!」

伝令が、一斉に散る。

仮宿営地に、一瞬だけ妙な静けさが落ちた。

「……」

エドワルドは、再び地図を見る。

線、敵本線、避難線、補給線。

そこに、点々と生まれた“停止”。

まるで。

「……引っ掛かっている?」

ぽつり。

何に?勿論、泥ではない。

偽道標?可能性はある。

だが、それだけで“急停車”するか?

「……」

違う。

何か、もっと直接的な——

そこまで考え、エドワルドは僅かに目を細めた。

「……まさか」

だが、まだ断定出来ない。父上か兄上が何かを仕掛けた?

そして——

「……グレゴール」

現時点で、領都方面から大きな混乱報は無い。

だが——“無い”事そのものが、逆に妙だった。

「……」

グレゴールは、繋ぐ者。

補給に避難。再編。

だが、あいつは——それだけか?

「……いや」

小さく、首を振る。

考え過ぎかもしれない。

だが——この止まり方。

誰かが、補給線そのものへ、何かした様にも見える。

「……」

口元が、僅かに上がる。

「……面白い」

まだ、情報が足りない。なら——見る。

敵が何故止まったか。何処で、何に、誰によって。

春。

動き続けていた侵攻線に、初めて生まれた“不自然な停止”。

それは、偶然か。再編か。

あるいは——まだ見えていない誰かが、敵の腹へ、先に牙を立て始めたのか。

エドワルドは、静かに次報を待った。