軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

春路の先

「エドワルド様」

声が、届く。

「最終隊——集結完了しました」

「……」

エドワルドは、小さく頷いた。

「……そうか」

遂に全てが——揃った。

歩兵。補給。大型クロスボウ。工兵。

欠けていた最後の一片。

「……いよいよだな」

ぽつりと漏れる。

待つ時間は——終わる。

「……」

領都出立前。

視線の先には、グレゴール。

既に、自らの役目へ向かう準備を整えている。

「……お気をつけを」

短い。だが——それで十分だった。

「……グレゴールもな」

言葉を返す。

多くは、要らない。

互いに——分かっている。

「……」

役割が違う。場所も違う。だが——「……生きて、終えるぞ」口には出さず。

その意志だけが、あった。

エドワルドは、前を見る。

「出撃開始」

短く。

「担当地区へ向かう!」

「「おう!!」」

声が重なり、動き出す。

街道。冬とは、違った。

「……」

白。

それは、もう薄い。

雪に覆われていた景色は消え。

茶。土。芽吹き。そして——淡い緑。

「……」

春。確かに、変わっていた。

枝先。若葉。草。そこかしこ。

所々には——黄色。桃色。青色の花々。

ふと思い出す。老婆。李の花。

「……」

“花が咲くのが楽しみじゃ”

「……」

小さく、口元が緩む。

「……花を見るのも、悪くないな」

ぽつりと漏れる。

隣を進むレオンが、僅かに笑う。

「……ですな」

一拍。

「出来れば——単なる旅路なら、もっと良かったんですが」

「……」

エドワルドも、少しだけ笑う。

「……確かに」

本当に、ただの春道なら——どれほど気楽か。

花。芽吹き。陽気。

本来なら——穏やかだ。

美しい。

だが。

「……」

今は違う向かう先は、戦場予定地。

泥。偽道。大型クロスボウ。

その先で、地を変え人を止め。

壊す準備をしている。

「……」

不思議なものだ。同じ春。見る者次第で——意味が違う。

馬ではない。歩き進む。

その中で思考が、静かに沈む。

「……上手く、行くか」

不安は、消えてはいない。

「……」

本当に?泥濘化。道標。補助水路。

判断は、間違っていないか。

見落としは?敵は?天候は?

考えれば——尽きない。

そして何より。

記憶。

自分の知る“流れ”とのズレ。

それが——今も、頭の隅にある。

「……」

以前と違う。少しずつ。確かに。自分が動いた分。変わっている。なら……もう、完全には頼れんか。

低く、静かに知っている未来。

それは——絶対ではない。

「……」

むしろ今は、自分が変えている。

そう考えるべきか。

「……」

不安はある。当然だが——立ち止まる理由には、ならない。

エドワルドは、前を見る。

春の道。花々。緑。その先。

「……俺が選んだ道だ」

短く、心で言い切る。

正しいかは——まだ分からない。

「……正しく、してみせる」

それだけだった。春は、美しい。

だからこそ——その先にある戦が、余計に重かった。