軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

形になった備え

春の道を進む。

白は、もう遠い。

雪解けを終えた地は、柔らかな茶を越え。

芽吹き。若草。花。

進む度に、季節が変わっていく様だった。

「……」

その途中。エドワルドは、ふと足を止めた。

視線の先。広がる。

「……おい」

思わず、漏れる。

「……かなり、あるな」

そこには——溜まっていた。

水。

治水工事。溜池。補助水路。土塁。

呼び名は、何でもいい。

「……間に合った、か」

想像以上だった。

掘られた地。積まれた土。引き込まれた流れ。

工兵達の提案。上流から、一部を引く。

あれが——効いている。

「……」

雨頼りだけでは、不安だった。

「……これなら」

足りる。少なくとも——使える。

「……十分、ですな?」

隣のレオンも、同じ景色を見ていた。

「……ああ」

エドワルドは、小さく頷く。

「……問題無いだろうな」

完全ではない。天候と時期。未知数の流量。

不確定は、まだある。

「……一つ、消えたか」

気になっていた。最大ではない。

だが——大きい不安。

水量不足。

それが、かなり薄れた。

「……悪くない」

ぽつりと漏れる。

本当に思い付くだけでは、意味が無い。

形になって——初めて意味がある。

「……」

そして今、それは——形になっている。

なら。次だ。

「……進むぞ」

短い。

「担当地区へ」

「はっ!」

進む。やがて目的地に。

「……ここだな」

配置予定地。緩やかな起伏。平原。細い川筋。偽装余地。

「……」

以前見た時より——違う。

明確に。

「エドワルド様!」

大隊長が、駆け寄る。

「お待ちしておりました!」

「……」

エドワルドは、周囲を見る。

「……見る限り」

一拍。

「準備は、済んでいそうだな」

「はい!」

即答。

「偽道標。主要導線以外にも、打ち込み継続中です!」

「……」

視線が、広がる。

本物らしく自然に、少しズレて思わず。

「……ふふ」

笑みが漏れる。

「……流石だな」

「いえいえ!」

大隊長も、笑う。

「エドワルド様に比べたら」

「……?」

「道標を抜いて」

一拍。

「資材足りなければ、道標を使え——ですからな!」

「……」

「正直」

少し肩を揺らし。

「心底、笑いましたよ!」

レオンも、吹き出しそうになる。

エドワルドは、僅かに眉を上げる。

「……そんなに、か?」

「ええ!」

即答。

「普通、誰も思い付きません!」

沈黙だが——

「……使えるだろ」

ぽつり。

「……!」

今度は、大隊長が更に笑う。

「そこです!」

「……」

“使えるなら、使う”その発想。妙。だが——合理的。エドワルドは、少しだけ視線を逸らす。

「……無駄が、嫌いなだけだ」

「十分、変わってますよ」

「……」

「ですが——助かってます」

その一言で、空気が少し締まる。

笑い話。だが——現実。

偽装。基礎。準備。既に、役立っている。

エドワルドは、再び地を見る。

泥。水。偽道。配置。

「……」

ようやく。“自分の担当地区”として——見えてきた。

「……さて」

小さく息を吐く。

「最終確認だな」

笑って終わりではない。ここから先は……本番だ。