軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

抜いた物の使い道

抜く。運ぶ。植える。

また、抜く。

俺は、淡々と手を動かしていた。

道標を引き抜き。苗木を植え。

土を均し。水を与える。

一本。また一本。同じ作業。

だが——不思議と、苦ではない。

むしろ少しだけ——気が落ち着く。

どうやら。周囲からは——微笑んでいる様に見えるらしい。

自覚は、薄い。

だが——土を触り、植え形になる。

その感覚は、確かに嫌いではなかった。

そこへ。通りすがりの老婆。

李の苗木を見て、嬉しそうに足を止める。

「李か。花が咲くと綺麗じゃな。咲くのが楽しみじゃ」

なるほど。食える。保存も効く。そこばかり考えていた。

だが——

「……花、か」

ぽつりと漏れる。

そうだ。花が咲く。春に花。

「……」

確かに今まで——食に寄り過ぎていた。

役立つか。備えるか。飢えぬか。

そればかり。

だが。見る。楽しむ。

そういう価値も、ある。

人それぞれ。

同じ木でも——見る所は違う。

「……なるほどな」

小さく、土を均す。悪くない。

その時。

「エドワルド様」

伝令の足音。小声で耳打ち。

「……治水工事ですが」

「……」

「基礎石が、不足気味です」

「……石?」

手が、止まる。

「はい」

「……」

考える。平地。

そうだ。あの地域には、基礎になる石は少ない。

拾うにも手間。集めるにも時間。

川石はあるが——運ぶ?

「……距離もあり面倒だな」

かなり。重量、人員。

形が整い。運びやすく。数もある石。

そんな都合の良い物。

「……」

そこまで考えていると、ふと、手元。

抜いたばかりの——道標。

道標の石柱。

「……」

沈黙。

「……ん?」

目が、細くなる。

「……これ」

一本。二本。いや、数十本。既に大量。

距離表示。目印。

だが——今は、不要。しかも。

「……形が整ってる」

長さ。太さ。加工済み。

「……」

運びやすい。

「……これで、いいじゃないか」

ぽつりと漏れる。

「……!」

伝令兵が、目を瞬く。

「偽装に必要な本数を残す」

即座。

「残りを——回せ」

「……!」

「計算しろ。必要数との差を」

「はい!」

「……」

少し後に、答え。

「……十分です」

むしろ——余る。

俺は、小さく頷く。

「なら、使え。それと偽装の件は、一部責任者しか知らぬ。わかっているな?」

「はい!そのまま運び出します」

「……そうしてくれ」

「はっ」

伝令が去る。

「……」

抜く。迷わせる。植える。

そして——積む。

一つの物は、役目は、一つじゃない。

「……悪くない」

小さく笑う。

道標。平時は、道。

戦時は——偽装。資材。基礎石。

無駄が、減る。それがいい。

エドワルドは、再び苗木を植える。

抜いた物すら——使い切る。

それでこそ。少しだけ——自分らしい気がした。