軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無駄にしない者

治水工事予定地。

広がる平地。削られる土。積まれる資材。

工兵達は、慌ただしく動いていた。

その中で運び込まれて来た石材を見て、一人の工兵長が手を止める。

「……これは」

目の前。並べられた石柱。

長さ。太さ。加工。見覚えが、ある。

「……道標、か?」

思わず漏れる。

間違いない。王国管理の——あれだ。

「……」

周囲の工兵も、気付く。

「おい、これ……」

「本物だぞ」

「抜いたのか?」

「……」

驚き。当然だった。

本来なら——勝手に扱う物ではない。

だが。

「……」

工兵長は、石柱を持ち上げる。

重い。だが——

「……揃ってる」

形。寸法。加工精度。

基礎材として見れば——優秀。

「……」

「川石より、遥かにいいな」

ぽつりと漏れる。

拾う手間。割る手間。運搬効率。

どれを取っても——早い。

そこへ、伝令。

「エドワルド様の指示です」

「……」

「道標は基礎石へ転用との事」

工兵長は、一瞬だけ沈黙し——

小さく、笑った。

「……成る程な」

そういう事か。

道標。平時は、道。戦時は、欺瞞。おっとこれは口にだせねーな。

そして——

「……土台、か」

低く呟く。

「……」

無駄が、無い。いや。

「……無駄に、しないのか」

その言葉の方が、正しい。

「……」

工兵達もまた、動き始める。

据える。並べる。埋める。

加工済みだから、早い。

揃っているから、扱いやすい。

一人の若い工兵が、ぽつりと漏らす。

「……坊ちゃん、また妙な事を」

工兵長は、鼻で笑う。

「妙、か」

一拍。

「……だが、役に立つ」

それだけだった。

「……」

農。木。保存。道標。

聞けば、どれも本来別の物。

だが——

「あの方は」

工兵長が、石柱を据えながら言う。

「使えるなら、何でも使う。用途が一つとは、限らん」

「……」

若い工兵が、黙る。

確かに。道標を、基礎石にするなど——普通は考えない。

「……使える」

それで、十分。

作業が進む。石柱が、治水の土台になる。

本来、距離を示した石。

今度は——地を変える為の石。

工兵長は、小さく息を吐く。

「……無駄が無いな」

すぐに、自分で首を振る。

「……いや」

視線を上げる。

「……無駄を、許さないのか」

ぽつりと漏れる。

領主館の嫡男は、本当に妙な事をする。

だが——妙で終わらない。

「……」

戦は、近い。なら使える物を、使う。

それだけだ。

土台は、少しずつ形になる。

そして——その土台そのものが。

既に、あの男らしかった。