軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

止まらぬもの

雪は、まだ止まない。

白は音を消し、輪郭を曖昧にしながら——それでも、覆い切れないものがあった。

――領都外れ

クラウスは、落ちた土瓶の跡を見下ろしていた。

割れた殻。散った布。

そして——燃え続ける火。

「……」

前回とは違う。

雪の上でも、消えない。じわりと、広がる。これで雪がなければ、更に。

「……遅いが」

ぽつりと呟く。

「……消えないな」

それで十分だった。

速さは要らない。残ること。広がること。

それだけでいい。

もう一つ、手に取る。

重さを確かめる。火を入れる。

投げる。弧を描き、落ちる。

——割れる。

炎が上がる。

先ほどと同じように、雪を押し退ける様に残る。

「……揃ってきたか」

小さく息を吐く。

まだ、ばらつきはある。

だが——

「……使える」

短く言い切る。

視線が遠くへ向く。

「……運ばせる必要はない」

ぽつりと漏れる。

「届ければいい」

それだけだ。

――前線拠点

エドワルドは、焚き火を見つめていた。

ぱち、と音が鳴る。

火は揺れる。

「……妙だな」

小さく呟く。

寒さは厳しい。

体調を崩す者も出ている。

それは分かる。

「……だが」

視線が細くなる。隣国ないの報告だと

「……増え過ぎている」

一つではない。二つでもない。

場所も、時間も、揃っていない。

領内からの報告には、特に大きな変化は無い。

「……揃っていない、のに」

増えている。思考が止まる。

「……寒さか」

自分で言って、首を振る。

「……それだけではないな」

だが——

「……繋がらん」

低く漏らす。火が揺れる。

その煙が、わずかに重く見えた。

エドワルドは何も言わない。ただ、違和感だけが残った。

――北部 旧領主館

父は、報告書を静かに閉じた。

机の上に並ぶ紙。数字。物資。人員。

「……減っているな」

ぽつりと呟く。

兵ではない。町でもない。

「……生活が、だ」

視線を落とす。

薪。食料。小さな不足。

だが、それが——

「……広がっている」

一箇所ではない。

点在している。指で机を叩く。

トン。

「……自然ではないな」

低く言う。

冬だ。不足は、起きる。

……揃っていない。場所も、時期も。

目を閉じる。

「……削られている」

ぽつりと漏れる。ゆっくりと。確実に。

目を開く。

「……止めるか」

小さく呟く。

「……止まらん」

流れは、既に動いている。

「……なら」

視線が地図へ落ちる。

「……絞る」

短く言う。

「集まる場所だけを押さえる」

それだけでいい。

窓の外。白。その下で、何かが進んでいる。

「……クラウス」

低く呟く。

「……やり過ぎだ」

否定はしない。

「……使う」

静かに言い切る。

「崩させはせん」

その意思だけが、残った。

雪は、まだ降り続いている。それでも止まらないものが、確かにあった。