軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動かぬ場所、動く戦

北部方面。旧領主館。

雪は、静かに降り続いていた。

音を吸い、景色を埋め、全てを鈍らせる白。

窓の外を一瞥し、父はゆっくりと視線を戻す。

机の上には地図。拠点、防壁、備蓄。

指で一つ、印をなぞる。

「……どうにか、整ったか」

低く呟く。

雪が本格化する前に、主要拠点の防備は固めた。街道沿い、後背、分散備蓄。

形としては——悪くない。

「……だが」

視線が外へ向く。

積もる雪。想定よりも深い……ここまでか。

小さく息を吐く。

雪解け後。壁は歪み、道は崩れ、資材は傷む。

「……もう一度、組み直しだな」

短く言う。想定が甘かった。

……蓄積だな。ぽつりと漏れる。

一度では足りない。

繰り返し、積み上げるしかない

椅子に深く腰掛ける。

静寂。

「……早馬、か」

ふと呟く。

クラウス。エドワルド。

それぞれに、情報は必要だ。雪が落ち着いたら。防衛体制基本の纏めて。

「……送るか」

決断は早い。視線が地図を滑る。

「……恐らく」

指が止まる。

「ここだ」

北部。

「……主戦場になる」

静かに言い切る。

理由は、単純。

「……南は、動けん」

ぽつりと呟く。

クラウスの仕掛け。隣国、国境付近。

「……数百キロ」

その範囲で、異常が広がっている。

名目は——流行病。

実態は分からない。

「……恐らく行軍は、しない」

する理由が無い。

危険を承知で、大軍を突っ込む指揮官はいない。

ならば。

「……残るは、こちらだ」

北部。視線が細くなる。

「……止まっていない」

ぽつりと漏れる。

情報。報告。断片。

「……冬備え」

本来なら、動きは鈍る。

蓄え、守る時期。

「……だが」

指で机を叩く。

トン。

「……まだ動いている」

準備が、止まっていない。

沈黙。

「……となれば」

低く落とす。

「答えは、一つだ」

敵は——来る。

それも。

「……遠く無い日に」

静かに言い切る。

だが——

「……いつかは、来る」

理屈ではない。状況が、そう示している。

父は立ち上がる。

窓の外。白。

「……動くな」

ぽつりと呟く。

雪に対してではない。

「……こちらは、動かん」

守る。削られても、崩さない。

視線が戻る。

地図。拠点。

「……寄せさせる」

短く言う。

「伸びた所を、叩く」

それだけ。小さく息を吐く。

「……クラウス」

低く呟く。

「あれは、効きすぎる」

削るには、過剰だ。

「……だが」

否定はしない。

「……使う」

静かに言う。

「崩させずに、な」

机に手を置く。

「……戦は、形だ」

ぽつりと漏れる。

「形を崩せば、勝つ……崩し過ぎれば」

一拍。

「何も残らん」

静寂。

雪は、まだ降り続いている。

「……来るなら、来い」

低く言い切る。

ここで、軽く止める。その言葉だけが——静かに、重く残った。