軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

雪解けの前触れ

長い様で——あっという間だった。

冬は終わりを迎えつつあった。

空は高く、白はゆっくりと薄れていく。

凍てつく風も、もはや肌を裂くことはない。

代わりに、湿り気を帯びた空気が漂い始めていた。

「……」

地面が、顔を出す。

泥が混じり、足を取る。

冬の終わり。

そして——動き出す時期。

隣国。

いくつもの村が、静かに消えていた。

人が減り、火が絶え、声が消える。

原因は分からない。

だが——確実に広がっていた。

「……」

街道は荒れ、物流は滞る。

必要な物が、必要な場所へ届かない。

それでも——

「……動く」

止まらない。

軍は、再編されていた。

削られた分を補い、歪んだ形のまま整えられていく。

南は、避けられている。

誰もが本能的に、そこを嫌う。

ならば——

「……北だ」

流れは、一つに収束していた。

北部方面。

防壁は、雪を越えて残っている。

歪み、軋みながらも——形を保っていた。

備蓄は、分散されている。

一つが落ちても、全ては崩れない。

「……」

静かだが、その静けさは——張り詰めている。

「……来るな」

誰もが、分かっていた。

前線拠点。

兵たちは、動きを整えていた。

長槍。配置。呼吸。大型クロスボウ。

「……」

揃う。

以前の様な乱れは無い。

動きは、形になっている。

だが——それでも、全てではない。

見えないものが、残っている。

領都。

準備は、整っていた。

積み上げられた物資。

整えられた兵。

そして——静かに、運び込まれるもの。

火。形を変えたそれは、まだ姿を見せない。

待つ。その時を。

雪は、完全には消えていない。

だが——もう、覆い隠す事は出来ない。

春は、来る。そして——戦も、来る。

その気配だけが、静かに広がっていた。