軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

手を動かすということ

クロスボウの大型化。

「……まずは、これだな」

ぽつりと呟く。

構造は単純だ。弦。腕。張力。

それを伸ばす。ただ、それだけ。

難しくはないはず。

だが——

「……これだけで良いのか」

思考が止まり、首を振る。

「いや、違うな」

小さく息を吐く。

「方向が合っているかなど、やってみなければ分からん」

指先を口元に当てる。考える。

だが、止まり過ぎる。

「間違えていたら、直せばいい」

低く言う。

「問題は——何もやらん事だ」

視線が上がる。

「……射程、か」

大型化すれば伸びる。確実に、それだけで優位が生まれる。単純で、確実な差。

その時、別の線が繋がる。

「……ん?」

目が細くなる。

「……槍も、同じか」

今の槍は二メートル前後。

歩兵同士の距離で使う前提。

「……それを、倍にすれば」

ぽつりと落とす。

「相手は届かず、こちらは届く」

沈黙し、想像する。間合いに、踏み込み。

先に触れる距離。

「……使い勝手は、悪くなるが」

それでも。

「届くか、届かないかは——全てだ」

小さく息を吐く。

「また考え過ぎか」

わずかに笑う。

「……いや」

首を振る。

「試せばいい」

それだけでいい。立ち上がる。

「槍なら、すぐに出来る」

歩き出す。思考は、もう次へ進んでいる。

工房へ向かい、木の匂いに削る音。

「……親方」

短く呼ぶ。

「槍を作る。長い物だ」

空気が変わる。長さ。用途。

想像が追いつかない。

「……四メートル」

その一言で、静まる。

常識の外。だが——不可能ではない。

先端は刃でなくていい。重しを付ける。扱いは後で考える。

要求は単純。だが意味は重い。

「……出来るか」

短い問い。一瞬の沈黙の後。頷き。

作業が始まる。削る音に、試作の音。

数刻。一本の槍が形になる。

長い。明らかに長い。

エドワルドはそれを手に取る。

重いし、バランスも悪い。

振ってみるが、遅い。扱いづらい。

だが。

「……届く」

その一点だけが、明確だった。

構える。足を一歩。

それだけで間合いが変わる。

通常では届かない距離。それが、届く。

「……なるほど」

小さく呟く。

理解する。距離は力だ。

それだけで戦いが変わる。

横で見ていたレオンも槍を見つめる。

無言で考える。

使い方に、並びと隊列。

強い。だが、扱えない。

エドワルドは槍を軽く回す。

鈍い軌道で、隙が生まれる。

それでも、価値はある。結論は早い。

「……やる事は一つだな」

体勢を低く落とし訓練、それしかない。

使えないなら使える様にする。

それだけ。

槍をもう一度見つめる。

粗いし、未完成。だが——可能性はある。

エドワルドは静かに頷いた。

「……手を動かす」

それだけが、前に進む方法だった。