軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

息を抜くということ

冷たい空気が、肺に刺さる。

報告を受けたエドワルドは、しばらく黙った。

体調不良の増加。理由は明白だった。

寒さ。それだけではない。

慣れない土地に、慣れない軍務。

張り詰めた状態が続き——限界が来ている。

特に、領都から来た者。

環境の差。それが、そのまま負担になる。

緩んだわけではない。むしろ逆だ。

張り続けたからこそ、崩れる。

エドワルドは視線を落とす。

「……休ませるか」

小さく落とす。単純だが、必要な判断。

だが、それだけでは足りない。

息抜き。それが無い。

周囲を見回してみる。簡素な防壁。焚き火。

無骨な兵舎。必要最低限。それ以上は、無い。

この町は、戦うための形しか持っていない。

飲み屋も無いければ、ちゃんとした店も無い。食も、まだ足りない。生活としては、未完成。

兵は戦う。だが、人でもある。

「……何か」

ぽつりと零れる。大層な物はいらない。

ほんの少し、気を抜ける何か。

それだけでいい。

思考が巡る。簡単で、すぐ出来て、誰でも出来るもの。

「……」

浮かぶ。

ナインピンズ。

木と球。それだけ。

遊び。だが——意味はある。導入は容易。

準備も簡単だし、広げやすい。

さらに、褒賞をだし、競わせる。

目的が出来れば、参加が増える。

小さな仕組み。

だが、確実に効く。エドワルドは頷く。

方向は決まった。

指示が出る。すぐに動く。

木材。加工。場所の確保。

拠点の一角に、新しい空間が生まれる。

戦場の中に、わずかな余白。

それは、戦力ではない。

だが——戦力を支えるもの。

エドワルドはその様子を思い浮かべる。

焚き火の傍。笑い。競う声。

ほんの少しの緩み。

それでいい。それだけで。

小さな工夫に、小さな余裕。

それが——長く戦う為の、土台になる。