軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

壊さぬために

静かな部屋で、父は机の上を見下ろしている。

本。そして——金貨袋。

「……」

答えは、出ている。止めるか。止めないか。

「……止めん」

短く落とす。迷いは無い。

だが、放置もしない。

それもまた、明確だった。

クラウスのやり方は、効く。

戦わずして削る。兵を使わずに、確実に。

だからこそ。

危険。あれは、広がる。人の手を離れては、制御を失う。

流通に人と物。これらは、全てが繋がっている。一度乗れば——止まらない。

敵は崩れる。間違いなく。

だが、崩れ過ぎると収集がつかなくなる。

それでは、支配も出来ずに、意味を失う。

残るのは——瓦解。

それでは、勝ちではない。

戦は、終わらせてからが本番。

維持出来ぬ勝利は、敗北と変わらない。

思考は定まるが止めない。

だが——握る。

流れはそのままに、暴走だけを抑える。

要所。人が集まる場所。物が集まる場所。

そこだけを押さえる。

全ては追えない。距離がある。

だが、それで足りる。

父は目を開く。静かに、確信を持って。

「……クラウス」

小さく落とす。盤面は見えた。

全てではないが——十分だ。

ならば、やる事は一つ。

「……壊さぬ様に勝つ」

静かな決意。削るのではなく。

残すための戦い。

それは同じ勝利を目指しながら。

まるで違う道だった。

一方でその頃、クラウスは机に向かったまま、報告を受ける。

例の物。既に隣国の大きな街へ。

手が止まり、そこまで届いた。

想定以上でも、想定内でもある。

「……なら上々だ」

小さく息を吐く。流れは出来ている。

あとは——広がるだけ。

王都まで届けば、理想。だが、限界も見える。

供給を続ける為に、建物の解体。

木材。いずれ尽きる。

二か月程度。それが、猶予。

クラウスは目を閉じる。

作戦は順調。だからこそ——次が要る。

「そのまま流せ」

短い指示。止めない。止める理由が無い。

無くなれば終わる。それでいい。

第一段階は、そこで終わり。

視線が机の端へ動くとそこには、木製の模型。

腕の様な構造。簡素な投石機。

手に取り、軽く揺らす。

軋む音と動きに、軌道。

攻城兵器。

本来の用途は城壁を崩す。

だが——

「……投げるだけだろ?」

ぽつりと落とす。重い物を遠くへ。

それだけ。

「……」

文官は言葉を失う。

発想が、ずれている。だが、間違ってはいない。

「……」

クラウスは模型を戻す。

「……薪は尽きる」

低く呟く。流通に頼る形。それは、続かない。

なら、次。

「……運ばせずに、届ける」

静かに決まる。

「……」

空気が変わり、理解は追いつかない。

しかし危うさだけは伝わる。

「準備しろ」

短く。内容は言わない。

まだ形になりきっていない。

それでも方向は決まった。

さらに、一手。

醸造所に酒。余った手が結びつく。

まだ曖昧なまま。だが確実に。

「……燃えるか」

小さく落ちる。試す様に、確かめる様に。

「……」

誰も答えない。理解出来ない。

クラウスは説明しない。

必要が無い。

見えない戦いは、形を変える。

流す戦いから投げる戦いへ。

静かに。確実に。

次の段階へ進んでいた。