軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言葉にならない違和感

扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。

エドワルドはそのまま廊下を歩く。

足は止まらない。

だが——思考は、先程の会話に縛られていた。

「……おかしい」

ぽつりと呟く。

兄の言葉。“民を助けるために売った”……それは、正しい。俺も民を巻き込むな、と言った。

否定は出来ない。

「……だが」

足が止まる……それだけか?

小さく眉を寄せる。視線が落ちる。

……薪は軍事物資だ。それを、何の制限も無く売る……?

首を振る……違う。

兄上は、そこを理解していない訳がない。

沈黙……なら何故、止めない。軍事物資の量としては少ないと判断したか?

答えは出ない。再び歩き出す。

流行病ではない。確信に近い言葉。

……広がり方が不自然だ……離れた場所で、同時に発生。

「……何かに乗っている」

そこまでは見えている……水か?

首を振る。違う。水源は一致していないって話だ。

……人の移動?……それも違う。同時性の説明がつかない。思考が巡る。

「……物か」

小さく呟く。

「……物資……食料品か?」

市場の光景が浮かぶ。

荷馬車に積まれた薪。

……いや。食料品は積んではいなかった。食料品からの摂取じゃない。

「……薪」

言葉が止まる。

「……」

しばらくの沈黙。

「……いや」

首を振る……まさか。

自分で否定する……薪で、人が死ぬ?

あり得ない。そう思う。

だが、胸の奥に引っ掛かりが残る。

「……違う」

言い聞かせる様に呟く。

……何か、別のものだ。ここからは薪しか運んでいなかった。それとも向こうの国内での問題か?

……無い話では無い。思考が空回る。

「……足りない」

ぽつりと零す。

「……何かが、足りない」

答えは、すぐそこにありそうだが届かない。

エドワルドは空を見上げた。

冬の空に冷たい風。

……何を見落としている。自問するがその答えは、まだ言葉にならない。

違和感だけが確かに、そこにあった。

部屋に入るなり、エドワルドは声を落とした。

隣国の件。流行病と呼ばれているもの。

だが——病ではない。

その一言で、空気が変わる。

地図が広げられ、離れた地点。同時発生。

感染では説明がつかない。

水源も一致しない。

人の移動でも繋がらない。

ならば、何かに“乗っている”。

人ではない。視線が落ちる。

物資。食料。衣類。道具。候補はある。

だが——決め手が無い。

その時、新たな報告の紙が差し出される。

追加の発生。

三つの村で、ほぼ同時、発生した模様。

地図に印が増える。点。点。点。

だが——繋がらない。

水路でもない。街道でもない。

沈黙。

エドワルドは紙をめくる。

そして、止まる。

共通点。寒波の直後の気温の低下。

その後に、発生。

一瞬、仮説が浮かぶ。

寒さで、弱り。そこに病。

だが——否定。

弱った程度で、あの急激な死は起きない。

思考が、再び巡る。物?何か?

だが、何だ。

視線が止まる。一瞬だけ、形になる。

薪。

だが、すぐに切り捨てる。

あり得ない。それだけで人は死なない。

答えは、出ない。目を閉じる。

あと一歩。だが届かない。

何かが足りない。

静寂。

その中で、もう一つの視点が落ちる。

意図。偶然ではない可能性。

空気が止まる。その発想。

だが——踏み込まない。

「……考え過ぎだ」

小さく、自らを抑え否定した。

だが。違和感は消えない。

むしろ——増える。部屋に沈黙が残る。

積み重なりまだ、形にはならない。

だが確実に。何かが、そこまで来ていた。