軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

届かぬ確信

北方方面にある旧領主邸。

静かな空気の中、男は報告書に目を落としていた。

「……セリユーの報告か」

小さく呟く。

「大分、避難指定の村や町にも危険性が落とし込まれつつある、か」

紙をめくる。

「……如何にかなったな」

一息つく。

完璧では無いが、これでいざという時の被害は抑えられるだろう。

視線を上げ、次の報告書に手を伸ばす。

「……敵国の情報か」

目を細める。

「新たな流行病の可能性……?」

ゆっくりと読み進める。

「……南東方面」

指が止まる。

「……クラウスが入り込んでいた地域か」

沈黙。

「……妙だな」

ぽつりと漏れる。

「このタイミングでか?」

考える。

「クラウスが仕掛けたのなら……時間が経ち過ぎている」

「また“出た”のか?」

小さく首を傾げ、顔を上げる。

「グレゴール」

「はっ」

控えていた男が応じる。

「クラウスは、また領から出たという報告は来ておるか?」

「いえ」

即答だった。

「現在、領都におります。武器の増産の指揮を行っている模様です」

わずかな間。

「……そうか」

短く返す。

「……解った」

再び視線を落とす……それならば。

思考が巡る。

「どうやって、だ」

「工作員か?」

自ら口にする。

「……いや」

すぐに否定する。

「この規模だ。人も金も足りん」

沈黙。机に指を置く。

トン、トン——

「……だが」

低く呟く。

「何かが引っ掛かる」

視線が鋭くなる。

「……クラウスが」

ゆっくりと言葉を選ぶ。

「何かを仕掛けている気がする」

部屋の空気が僅かに張る。

「それに」

別の書類を手に取る。

「クラウスから、全体の予定防衛体制の方向性と地形図を送れと催促が来ておる」

眉が僅かに寄る。

「……何故だ……何を考えている」

誰に向けるでもなく、呟く。

グレゴールは答えないし答えられない。

しばらくの沈黙。

「……まあいい」

男は小さく息を吐く。

「叩き台は、元々送る予定だった。送る」

短く言う。

「はっ」

グレゴールが頷く。

男は椅子に深く腰掛けた。

視線は報告書へ。その先を見ている。

「……流れがある」

ぽつりと呟く。

「人か物か……」

「どちらかに乗っている」

だが——そこから先が、繋がらない。

目を閉じる。

「……証が無い」

それが全てだった。再び目を開く。

「……様子を見る」

静かな決断。

「……戦ではない戦、か」

小さく呟く。

その正体に——あと一歩、届かないまま。