作品タイトル不明
燃やすという事
文官からの報告書が机に置かれる。
「……例の商人から集めた噂を、纏めた物です」
「……そうか」
クラウスは手に取る。
領都で拾われた話と断片的な情報、それらを繋ぎ合わせたもの。
ページをめくる。視線が走る。
「……予想以上だな」
ぽつりと呟く。
「はい」
文官が頷く。
「被害は想定より広がっております」
「……」
「特に、敵王都から見て南東方面の大小の町、村に甚大な被害が出ていると推測されます」
「……」
クラウスは静かに読み進める。
「……あの商人の動きは?」
「余程、儲かる様で」
文官はすぐに答える。
「引き続き、こちらから運んでおります。噂も、当然耳に入っているかと」
「……」
「報告書の中にも、あの商人の名が記されております」
「……そうか」
クラウスは小さく笑った。
「知らない、というのは恐ろしいものだな」
「……そうですな」
文官も同意する。
「疑う理由が無い、というのも」
「……」
クラウスは紙を閉じる。
「……物の流れが見えるな」
ぽつりと呟く。
「はい」
文官が応じる。
「前回の工作も含め南東方面に、追い討ちの形になっております」
「……」
クラウスは頷く。
「……あの商人が来る限り」
視線を上げる。
「欲しいだけ渡せ」
「……承知しました」
「それと」
文官が続ける。
「あの葉の加工は、進めますか?」
「……念の為、進めておけ」
即答だった。
「取扱いには注意を再度、指示しておけ」
「はっ」
「……」
一拍。
「それと」
クラウスの声が低くなる。
「これは機密級だ」
「……」
「作業に関わった兵にもそれとなく伝えておけ」
「その辺りは抜かりありません」
即答。
クラウスは立ち上がる。
手にしていた報告書を見下ろす。
一瞬の迷いも無く暖炉へと放り込んだ。
「もう必要ない」
紙が火に触れるとふわりと炎が広がる。
一瞬で、勢いを増し文字は、消え形は崩れ。
やがて——灰になる。
「……」
クラウスはそれを見ている。
何も言わず何も残さず。
やがて、踵を返す。
報告書はもう無い。
残るのは結果だけだ。