作品タイトル不明
見当違いの答え
その頃、隣国内では……
「……またか」
低い声が、重く落ちた。
長机を囲む数名。その上には報告書が山の様に積まれている。
「南部方面の三村」
「東方面の二村」
「……被害は拡大中、か」
一人が紙を叩く。
「原因は?」
「不明です」
即答だった。
「共通点は?」
「……」
一瞬の沈黙。
「病状は類似しています。咳、呼吸困難、急激な衰弱。そして——」
少し言葉を選ぶ。
「短時間での死亡」
「……」
空気が重くなる。
「感染か?」
「……断定は出来ません」
「広がり方が、やや不自然です」
「……どういう意味だ」
「隣接していない村でも、同様の症状が出ています」
「……」
視線が交差する。
「……水か?以前から続いてる…?」
誰かが呟く。
「井戸か川か」
「……可能性はあります」
「ただ…」
別の者が口を開く。
「それなら、もっと広範囲に出るはずだ」
「……」
再び沈黙。
「……では、何だ」
苛立ちが滲む。
「分かりません」
その一言が、場を凍らせる。
「……煙、という報告もあります」
別の書類をめくりながら言う。
「煙?」
「はい」
「薪を使った際に、妙な匂いと重さを感じたと」
「……」
「しかしそれが原因と断定するには——」
「弱いな」
即座に切り捨てる。
「薪など、どこにでもある。それで人が死ぬなら、国中で死人が出る」
「……」
誰も反論しない。出来ない。
「……では、病だな」
一人が言う。
「流行り病だ。冬だ。不作もあったし、弱っている所に来たのだろう」
「……」
納得する者。納得しきれない者。
「……それで進めるしかない」
結論が出る。
「各村の隔離を強化しろ。出入りを制限する。医者を回せ。原因の特定は急げ」
「はっ!」
声が揃う。
会議は終わる。人が去る。
一人残る。
「……」
報告書を見つめる。
「……煙、か」
小さく呟く。
「……」
違和感があるが繋がらない。
「……」
紙を閉じる。
「……考え過ぎか」
そう結論付ける。
その判断が、何を意味するかも知らずに。
火は今日も焚かれる。煙は上がる。人はそれを吸う。
そして、また一人倒れる。
誰も気付かない。気付けない。
答えに、あと一歩届かない。
それが——最も致命的だった。