作品タイトル不明
見えた抜け道
クラウスは書類に目を落としたまま、報告を受けていた。
例の商人。既に数回、荷馬車を回し、引取りを行っている。一瞬だけ、手が止まる。
すぐに動く。
「……そうか」
それだけだった。想定外ではある。
だが——致命ではない。
視線を上げる。
この作戦が終われば、薪の管理を見直す。
抜け道はあった。なら、塞ぐだけだ。
文官は頷く。
数量管理。受入時の確認。
今まで無かったものを、追加する。
それで済む話だ。
一拍。
別の話題だ。大隊長が姿を見せない。
書類が滞り、現場の不満。
「……当面だ」
即答だった。理由は明かさないし、明かす必要もない。
沈黙。
文官は言葉を濁しながら直接、伝えてほしいとその一言。
「……無理だな」
ぽつりと落とす。視線を逸らす。
「……俺でも」
わずかに苦笑。
「今だに大隊長には、勝てん」
それだけで、十分だった。
文官は黙りそれ以上、踏み込めない。
空気が静まる。
クラウスは再び、書類へ目を戻す。
指が机を叩く。トン、トン、トン。
思考は止まらない。
次の報告。
例の葉をすり潰し、水に混ぜ、害獣に投与。
結果は、即死。
泡を吹き、短時間で絶命。
クラウスの指が止まる。
即効性は、予想以上。
人でも同様にその可能性。
沈黙。
「……そうか」
静かな一言に、感情は無い。
ただ、評価だけがある。
どう使うかは、まだ決めない。
今は——運び込み、保管する。
それだけ。
視線が上がる。
警備は、二十四時間。例外は無い。
一拍。
「俺以外が来た場合は——」
言葉が落ちる。
「その場で斬れ」
空気が凍る。命令は、明確だった。
文官は低く応じ、扉が閉まる。
静寂。
「……」
クラウスはゆっくりと息を吐く。抜け道があった。なら——使う。終われば、塞ぐ。
それだけだ。やる事は変わらない。
進める。ただ、それだけだった。