作品タイトル不明
次の火種
「……ふぅ」
クラウスは一人、軽く息を吐いた。
先程の会話が、頭に残る。
エドワルド。理解はしている。
だが——踏み込みが浅い。
「……まだ甘いか」
小さく呟く。それでもいい。
時間はいずれ、追いつく。
「……」
視線を机へ落とす。図面。連射式クロスボウ。
隠し通せる代物ではない。いずれ、知れる。
「それでいい」
元の発想は、エドワルド。
自分は積み上げただけだ。
なければ、ここには至らない。
事実として、そう認めている。
「……」
指で机を叩く。問題は、その後。
気付けば、何か言ってくるだろう。
一瞬だけ、本の山が頭をよぎる。
「……まあいい」
すぐに切り捨てる。
気付いた時には——終わっている。
それだけだ。
扉が開らき、報告。
息の乱れているが、内容は簡潔。
例の物の群生地を発見。
「……」
クラウスの目がわずかに細まる。
見つかった。それも、領内の森の奥。
人が寄り付かない場所。
「……都合がいい」
即座に判断する。
立入禁止にし、人を絞る。
軍用の道を通し、荷馬車を通す。
継続して運ぶ。
一つずつ、決める。迷いはない。
「……」
一拍。
扱いに注意。不用意に触れるな。
誤るな。それだけで、十分だった。
理解は伝わる。
ただの資材ではない。
「急げ」
短く落とす。時間はあるようで、無い。
報告役はすぐに消え、扉が閉まる。
「……」
静寂。
クラウスは一人、窓の外を見る。
静かな領都。変わらない風景。
だが——中は、動いている。
準備は進んでいる。使い道も、決まっている。
「……これで、もう一段だな」
小さく呟く。
戦いは——まだ、始まってもいない。
それでも既に、進んでいる。