軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交わる視点

コン、コン——

「兄上、居るか?」

「おう、入れ」

軽い返事。

エドワルドが扉を開けると、クラウスは机に肘をつき、書類に目を落としていた。

「……何だ、難しい顔して」

視線だけが向く。

「少し、聞きたい事がありまして」

「珍しいな」

軽く笑う。エドワルドは一歩、近づく。

「兄上」

「ん?」

「橋と水だ」

「……」

その一言で、空気が僅かに変わる。

クラウスの手が止まる。

「……何の話だ?」

「とぼけないで下さい」

即座に返す。

「敵国の報告。橋の崩落。井戸の異常」

「……」

「そして、兄上の報告書」

沈黙。

クラウスはゆっくりと椅子に背を預けた。

「……で?」

軽く顎を上げる。

「何が聞きたい」

「……全部です」

エドワルドの目は真っ直ぐだった。

「どうやってやった。どこまでやった。何を狙った」

「……」

一拍。

クラウスは小さく笑う。

「いいな。その顔」

そして、逆に問う。

「どう思った?」

「……繋がっている」

静かに言う。

「橋と水。物流と生活。両方を崩した」

「……」

「結果、敵は動けない」

「……」

「しかも、原因が分からない」

「……そうだろう?」

部屋が静まる。

「……まあ、そんな所だ」

あっさりと肯定。

「……やはりか」

エドワルドは息を吐く。だが——

「やり過ぎです」

空気がわずかに張る。

「民も巻き込んでいます。井戸ですよ」

「……」

「そこまでやる必要があるのか」

真っ直ぐな問い。

「……」

クラウスは、少しだけ考えた。

「あるな」

即答だった。

「……」

エドワルドの目が細くなる。

「理由は?」

「簡単だ」

指を立てる。

「確実に効く」

一つ。

「復旧に時間が掛かる」

二つ。

そして——

「原因が分からん」

三つ。

「……」

「つまり」

視線が僅かに鋭くなる。

「長く、深く、効く」

「……」

エドワルドは黙る。理解は出来る。

だが。

「……それでも」

低く言う。

「民です」

「……」

「巻き込んでいいのか」

沈黙。クラウスはエドワルドを見る。

しばらく、見て。

「お前な」

少し呆れた様に言う。

「まだそこか」

「……」

「戦ってるのは誰だ?」

「……軍だ」

「違う」

即座に否定。

「国だ」

「……」

「兵も民も、全部だ」

静かに言う。

「だから」

一拍。

「切る時は、まとめて切る」

「……!」

空気が張り詰める。

「……それが、一番早い」

「……」

エドワルドは言葉を失う。

理解は出来る。だが——納得は出来ない。

その沈黙を見て。

クラウスは、わずかに笑う。

「まあいい」

軽く手を振る。

「お前は、お前でやれ」

「……」

「俺は俺でやる」

「……」

「どっちが正しいかは——」

一瞬の間。

「結果が決める」

「……」

エドワルドはゆっくりと息を吐く。

「……そうですね」

小さく言う。

「結果、か」

「おう」

軽い返事。

「そこは同じだろ?」

「……」

エドワルドは何も言わない。

その目だけが、変わっていた。

「……一つ、いいですか」

「ん?」

「そのやり方」

わずかに間を置く。

「どこまでやるつもりですか」

「……」

クラウスは少しだけ考える。

そして——

「さあな」

軽く笑う。

「必要な所まで、だ」

それだけだった。曖昧なはずの答え。

だが——そこに、限界は無かった。

「……」

エドワルドは何も言わない。

ただ一つ、分かる。兄は——止まらない。

その事実だけが、重く残った。