作品タイトル不明
戻る理由
窓の外。重く垂れ込めた雲。冷たい空気。
エドワルドはそれを見たまま、静かに判断を下す。
一度、領都へ戻る。
北部の冬備えは、ほぼ終わっている。
外敵も、冬に入れば動けない。
時間がある。だからこそ——
自分の目で確認する。報告だけでは足りない。
「……」
準備は早かった。
指揮は任せる。本格的な雪の前に戻る。
それだけ決める。
数日後に出発。
背後には、整えられた北部の防備。
崩れかけていた領は、持ち堪えている。
「……」
だが。胸の奥に、わずかな違和感が残る。
静かすぎる。敵は弱っているし動きも鈍い。
それはいい。
だが——静かすぎる。
理由は分からない。
「……」
思考は、そこで止まり、答えは出ない。
道中に、曙町に立ち寄る。
人の動き。物資の流れて、おり滞りはない。
むしろ、整っている。安定している。
「……」
それでも何かが、引っかかる。
やがて、領都が見えてくる。
高い壁。門。見慣れた景色に戻った。
そう思った、その瞬間。
「……」
違和感が、形になる。
門をくぐり、空気が変わる。
「……何だ?」
思わず、足が止まる。
音に、耳を澄ます。カン、カン。
ギィ、と軋む音に、木を削る音。
至る所から響いている。
「……」
工房の音。
だが——多すぎる。一つや二つではない。
町全体から聞こえてくる。
人の動きも違う。流れが変わっている。
「……」
エドワルドはゆっくりと周囲を見渡す。
理解は、まだ出来ない。だが確信だけはある。
何かが変わっている。
そして——それは、今も動いている。
エドワルドは、その中心へと足を進めた。