軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

違和感の正体

領都の通り。

エドワルドは歩きながら、周囲を見回していた。この時期にしては、騒がしい。

木を削る音。金属を打つ音。

人の出入りも多いし、工房が動いている。

それも——異常な数で。

敵侵攻への対応か。

そう考えれば、辻褄は合う。

だが、規模が大きい、いや多すぎる。

違和感が、残る。

その時、視界の端に見覚えのある姿。

老木工師。

以前、クロスボウで世話になった男。

歩み寄り、声を掛けようとした、その瞬間に、目が合う。

「ひぃーーーっ!!」

叫び声。

次の瞬間、踵を返し——そのまま工房へ消えた。

「……ん?」

沈黙。何が起きたのか、一瞬理解が追いつかない。

逃げた。明確に。

「……」

しばらくして、エドワルドは小さく肩をすくめる。忙しかったのだろうか。そう結論付ける。

納得した様で、していない。

違和感は、残ったまま。

視線を前に戻す。

兄は居るか、それだけを考える。

屋敷の扉をくぐると、すぐに気配が動く。

クラウス。変わらない。

軽い調子で、前線の話。そして短い応答。

深くは触れない。

それで十分だった。

「……」

そして、思い出した様に告げられる。

土産。

部屋に置いてある。それだけ。

扉を開けると足が止まる。

本。

山の様に積まれている、数十冊。

一冊、手に取るとそれは敵国の書物。

建築。橋梁構造。水利。井戸。物流。

植物。魚。家畜。農業。林業。

そして——手が止まる。

恐怖の絵本……?

思わず、息が漏れる。

「……ふぅ。」

らしい。必要な物と、そうでない物の区別が無い。

だが——量は、ある。

ページをめくると情報が流れ込む。

知らない事ばかりだ。

ふと、思う。久しぶりだ。こうして、本を読むのは、椅子に腰を下ろす。

外では、音が続いている。

工房の音に止まらない音。

その音を背に、エドワルドは本を開く。

静かな時間。

だが——その裏で、何かが動いている。

まだ、全ては見えていない。

違和感の正体には、届いていなかった。