軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

試作品

数日後のある日。

「準備は?」

「整っております」

クラウスの前に、木工師と数名の職人、そして護衛役が並んでいた。

場所は領都外れの訓練場。

人目は避けてある。

「持って来い」

運ばれてきたのは、布に包まれた長物。

木工師が慎重に布を外す。

「……これが」

護衛役が思わず声を漏らした。

見た目はクロスボウ。

上部に箱状の部品。

そして側面に奇妙な機構。

「試作段階ですが……」

木工師が口を開く。

「カートリッジ式で、矢をまとめて装填する構造です」

「ほぅ」

クラウスの目がわずかに細まる。

「一度に、何本入る?」

「現状で五本です」

「増やせるか?」

「重量と機構の兼ね合いになりますが……改良次第では」

「いい」

クラウスは短く言った。

「撃ってみろ」

「はっ」

護衛役が前に出る。

構える。

「……軽いな」

「連射を前提に、取り回しを優先しております」

「なるほど」

「撃て」

「はっ!」

引き金を引く。

バシュッ!

矢が放たれる。

そのまま。

カチッ。

次の矢が装填される音。

「……ほう」

「もう一度撃て」

バシュッ!

バシュッ!

連続して矢が飛ぶ。

的に次々と突き刺さる。

「……!」

護衛役が目を見開く。

「これは……!」

「連射出来るだろう」

クラウスが静かに言う。

「……はい」

「従来のクロスボウとは比べ物になりません」

木工師が頷く。

「装填の手間を大幅に削減しております」

「だが」

クラウスが歩み寄る。

一つ手に取る。

「……ここだな」

側面の機構を指で叩く。

「……はい」

「引きが重い。連続使用を想定すると負担が大きいかと」

「そこを軽くしろ」

即答だった。

「……しかし」

木工師が迷う。

「張力を落とせば、威力が」

「落としていい」

迷いはない。

「威力より数だ」

「……!」

周囲が一瞬静まる。

「一人で一発撃つより」

クラウスは淡々と言う。

「一人で十発撃つ方が早い」

「……」

「誰でも扱える様にしろ訓練も最低限で済む様に」

「……承知しました」

木工師が深く頭を下げる。

「構造を見直します」

「それと」

クラウスが続ける。

「カートリッジの交換速度だ」

「はい」

「戦場で詰まったら終わりだ」

「……確かに」

「誰でも、迷わず、すぐ交換出来る様にしろ形で覚えられる様に」

「……」

木工師の目が変わる。

「……やってみます」

「やれ」

短い一言。

「金は出すし資材も人も必要なら増やす」

「……はい!」

力強い返事。

クラウスは満足そうに頷いた。

「期待してる」

そう言って背を向ける。

背後ではすぐに議論が始まる。

「ここを削るか」

「いや強度が——」

「なら材を変える」

音が重なる。

作る音。試す音。変える音。

「……」

護衛役が小さく呟く。

「……これが揃えば戦いは変わりますな」

クラウスは振り返らない。

「もう変わってる」

静かに言う。

「気付いてないだけだ」

そのまま歩き去る。

的に突き刺さった矢。

その隣に、新たな矢が打ち込まれる。

連続して止まる事なく。

それは——これからの戦いの形、そのものだった。