軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

重なり過ぎる偶然

「……多いな」

エドワルドは机の上に広げられた報告書を見つめていた。指で一枚ずつ軽く叩く。

橋の崩落。村の壊滅。原因不明の体調不良。

「……」

「どうされました?」

レオンが静かに声を掛ける。

「いや」

エドワルドは短く答えた。

「一つ一つは、分かる。火災も、疫病も、起き得る話だ」

「……はい」

「だが」

一枚を持ち上げる。

「重なり過ぎている」

ぽつりと呟く。

「……」

レオンは何も言わない。

「橋が落ちる。流通が止まる。その直後に、体調不良が広がる」

「……」

「更に村の壊滅」

紙を置く。

「出来すぎている」

静かに言った。

「……偶然、では?」

レオンが慎重に言う。

「そうだ」

エドワルドは頷く。

「偶然でも説明は出来る」

「……」

「だが」

指が止まる。

“繋がっている”と仮定すると視線が鋭くなる。

「全て、意味を持つ」

空気が変わる。

「橋は流通の遮断。疫病は人の移動制限。村の壊滅は局地の混乱」

「……」

レオンの表情がわずかに引き締まる。

「全て、兵站を潰す動きになる」

「……!」

「だが——」

エドワルドは首を振った。

「証拠が無い」

「はい……」

「敵の動きも見えない。軍も動いていない。ならば」

自分に言い聞かせる様に言う。

「考え過ぎかもしれん」

沈黙。

「……いや」

小さく否定する。

考え過ぎで済ませるには、妙だ。

再び報告書を見る。

その時だった。ふと、別の紙に目が止まる。

「……兄上の報告」

短い文。簡潔。

「作戦は順調に進行中」

それだけ。

「……」

エドワルドの指が止まる。

「……時期が、合うな」

ぽつりと呟く。

「え?」

レオンが顔を上げる。

「橋の崩落に疫病。村の壊滅がだ」

「……」

「そして、兄上の“順調”」

「……」

レオンは言葉を失った。

「……まさか」

その一言が、空気を重くする。

エドワルドはしばらく黙った。

考える繋げる。否定する。

「……いや」

ゆっくりと首を振る。

「そこまでは、やらんだろう」

「……」

「流石に」

自分に言い聞かせる様に。

だが。

「……」

完全には、否定しきれない。

「……気持ちが悪いな」

小さく呟く。

「はい……」

レオンも同じ感覚を覚えていた。

「……レオン」

「は」

「最悪を想定する」

目が変わる。

「はい」

「流通の再確認。代替路の確保。備蓄の再配分。全て、前倒しで動かす」

「承知しました」

「それと」

一瞬、言葉を止める。

「……情報を集めろ」

「より細かく」

「はい」

レオンはすぐに動く。

エドワルドは一人、残った。

机の上の紙を見つめる。

繋がりそうで、繋がらない。

「……もし、そうだとしたら」

小さく呟くがその先を言わない。

言えない。

「……」

窓の外を見る。

静かな町。何も変わらない日常。

「……見えないな」

兄上がやっているのか。それとも偶然か。

何が起きているのか。

目を閉じる。

「確実に、何かが動いている」

静かに言った。

その違和感は——まだ、正体を持たない。