軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

繋がらぬ報告

「……多いな」

父は報告書を机に並べ、低く呟いた。

一枚。もう一枚。そして、更にもう一枚。

それぞれ別の経路から上がってきたもの。

「関連は、無い……か?」

誰にともなく呟く。

控えていた文官が口を開く。

「現時点では、それぞれ独立した事象と判断されております」

「……そうだろうな」

父は一枚目を手に取る。

大橋の崩落。紙を軽く叩く。火災が原因と見られる、か……

「夜間に発生し、発見が遅れた為、被害が拡大したとの事です」

「……」

「原因は?」

「不明です。焚き火の延焼、あるいは管理不備によるものかと」

「……曖昧だな」

「はい」

父はその紙を置き次の一枚を手に取る。

「村の壊滅」

目を細める。

「火災。死者あり……井戸も使えず、か」

「はい」

文官が続ける。

「生存者の証言も混乱しており、詳細は掴めておりません」

「井戸は?」

「異臭と濁りが確認されております」

「原因は?」

「……不明です」

「……そうか」

短く返す。三枚目に手を伸ばす。

「こちらは……別の地域か」

「はい」

「原因不明の体調不良が広がっております」

「嘔吐、下痢などが主で……」

「……疫病、か」

「可能性はありますが、特定には至っておりません」

「流通への影響は?」

「既に一部で停滞が始まっております」

「……」

父は三枚の報告書を並べた。

橋と村それに疫病。

それぞれ単独で見れば……説明はつく。

火災は起こり得る。管理が甘ければ、橋も落ちる。疫病も、この状況なら不思議ではない。

「いずれも、単体で見れば特異なものではありません」

「……だが」

父の指が、机を軽く叩く。

トン、トン、と乾いた音。

「……出来すぎている……内部に入り込んでいる可能性は?」

「いや。まさか、そこまでは」

静かに言った。

「……」

文官は黙る。

時期が重なり過ぎている。場所も妙だ。橋が落ちれば流通は止まる。そこに疫病が重なれば、動けなくなる。さらに村の壊滅……

言葉を切る。

「……偶然にしては、都合が良すぎる」

部屋の空気がわずかに重くなる。

その時だった。

「……失礼します」

セリユーが入ってくる。

「来たか」

父は視線を向ける。

「報告は聞いているな」

「はい」

セリユーは頷いた。机の上の書面を見る。

「……多いですね」

「そうだ」

「どう見る」

セリユーは少しだけ考えた。

そして。

「偶然にしては、多すぎます」

「……」

「ですが」

言葉を続ける。

「繋がりを証明する材料がありません」

「……だろうな」

父は小さく頷いた。

「各地で起きているだけ、と言われれば否定出来ません」

「はい」

「原因も、それぞれ不明。意図があると断じるには、弱い」

「……」

沈黙。父は三枚の報告書を見つめたまま動かない。やがて。

「……見えん」

ぽつりと呟く。

「何が起きているのか。何者がやっているのか」

「……分からん」

それが、正直な答えだった。

「だからと言って」

顔を上げる。

「何も無いとは考えん」

その目は鋭い。

「最悪を想定する」

静かに言う。

「……はい」

セリユーも頷く。

「流通の再確認。代替路の確保。備蓄の再配分。全て、前倒しで進める」

「承知しました」

「原因が分からぬ以上」

父は続ける。

「結果に対応するしかない」

「……」

「そして」

一瞬、間を置く。

「監視を強めろ。内も外もだ」

「……はい」

セリユーが深く頭を下げる。

命令は的確だった。

「……」

父は再び報告書に視線を落とす。

繋がりそうで、繋がらない。

見えそうで、見えない。

「……気味が悪いな」

小さく呟く。

その違和感の正体には——

まだ、辿り着けない。

それでも。

「……動くしかない」

静かに言った。

見えぬ相手に対して出来る事を積み重ねる為に。