軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動かぬ心

セリユーは、派遣した文官達へ再度指示を飛ばした。

「順序を変えろ」

短く言い切る。

「まずは避難に時間が掛かる者からだ。老人を先に、次に子供。順次、移動させる」

文官が頷く。

「今すぐではない」

セリユーは続けた。

「敵の侵攻が確認された時点で動かす。事前に準備だけ整えさせろ」

「はっ」

「そして」

一瞬、言葉を区切る。

「武器を持てる者は残す。男女は問わん。守る側に回らせる」

「……承知しました」

文官達はそれぞれ動き出した。

報告は、すぐに戻ってきた。

「……やはり、か」

セリユーは机に肘をつき、額を押さえた。

「納得せぬか」

「はい」

控えていた者が答える。

「順序を分けても、なお拒む者が多く。“何故そこまでしなければならん”と“本当に来るのか”と」

「……」

セリユーは目を閉じる。

変わらない。形を変えても。

言い方を変えても。

「これでは……」

間に合わない。ぽつりと漏れる。

その時だった。

「セリユー様」

側近が一歩前に出た。

「それでしたら軍事訓練の方を先に開始しては如何でしょうか」

セリユーはゆっくりと顔を上げる。

「訓練、か」

「はい」

側近は頷く。

「実際に動きを見せるのです。武官を中心に、陣形、移動、防衛。それを村人に見せる」

「……」

「言葉では伝わらぬのであれば、目で見せる」

「……成る程」

セリユーは小さく息を吐いた。

「恐怖を……実感させる、か」

「はい」

「そして」

側近は続ける。

「“守る動き”を見せる事で自分達が何をするのかも理解させる。ただ逃げるのではないと」

「……」

セリユーはしばし考えた。

そして。

「やむを得ん」

低く言った。

「そうしよう」

「はっ」

側近が頭を下げる。

「既に準備は進めております」

「何?」

「以前、侵攻を受けた村です」

「……ああ」

セリユーの目がわずかに細くなる。

「あそこは違うか」

「はい」

「滞り無く進んでおります。動きも早い」

「……だろうな」

実際に見た者は違う。

言葉ではなく、記憶が動かす。

「ならば」

セリユーは立ち上がる。

「そこを基点にする。他の村に見せろ!動きを広げる」

「承知しました」

側近がすぐに動き出す。

セリユーは窓の外を見た。

変わらぬ日常。

何も知らぬ様に動く人々。

「……動かぬか」

小さく呟く。

「ならば、動かす」

その声には、わずかな苛立ちが混じっていた。

間に合わなければ意味がない。

守る為には——

理解を待ってはいられなかった。