軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

流れの先を断つ

工房には、既に二人を潜り込ませていた。

鍛冶場の熱気に油の匂いと鉄を打つ音。

その中に、紛れ込ませた。

「指示は?」

護衛役が確認する。

「出してある」

シュトライヒは簡潔に答えた。

「まずは——金の保管場所。もう一つは、作られた物の流れ」

「流れ……ですか」

「ああ」

机に広げた地図を指でなぞる。

「どこへ運ばれているか」

「どこで使われるか」

「どこに集まるか」

「……」

「そこが分かれば」

一瞬、間を置く。

「次が見える」

護衛役は静かに頷いた。

「金は……盗む為だ」

即答だった。

「当然だろう」

「はい」

「金が消えれば、内部が疑い始める。誰が盗んだか。どこで抜かれたか。それだけで——」

シュトライヒは小さく笑う。

「勝手に崩れる」

「……」

「そして武器の流れ」

視線が鋭くなる。

「これは次だ」

「次……」

「どこへ送られているか。補給先か、前線か、別の倉か。それが分かれば」

地図の一点を軽く叩く。

「そこを叩く」

護衛役の息がわずかに止まる。

「……なるほど」

「一つ潰すだけでいい」

シュトライヒは淡々と続ける。

「全部を壊す必要はない。一つ止まれば、全体が歪む」

「……確かに」

「この国の総製造量は分からんがな」

肩をすくめる。

「一つ潰せば、その分は確実に減る。それで十分だ」

「はい」

護衛役は深く頷いた。

「シュトライヒ様」

報告が入る。

「二回目、実行しました」

「……結果は?」

「抜かり無しです」

短い言葉。だが、それで十分だった。

「仲良し二人は?」

「酒の席での揉め事に見せかけております。周囲も“よくある話”として処理しております」

「……いい」

「変わり者の方は?」

「食事に混ぜました。症状は既に出ております。医者も“当たり”と見ている様子です」

シュトライヒはわずかに目を細めた。

「……繋がらないな」

「はい」

「別々の事象として扱われております」

「よし」

一つ頷く。

「ならいい」

静かに椅子に腰を下ろす。

「……急ぐな」

ぽつりと呟く。

護衛役が応じる。

「はい」

「次はどう動きますか?」

「動かない」

「……」

「暫くは商いだ」

シュトライヒは書類を手に取る。

「いつも通り売って」

「いつも通り買って」

「いつも通り話す」

「“普通”を積み重ねる」

「……承知しました」

「潜り込ませた奴らからの報告待ちだ」

「はい」

外では、いつも通り煙が上がっている。

鉄を打つ音も変わらない。

人も動いている。

見えない所で、少しずつ歪み始めていた。

「……いい流れだ」

シュトライヒは小さく呟く。

壊すのではない。

止める。そして。

「次で——止まる」

静かに確実にその準備は、整いつつあった。