軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

救いの灯と王都への視線

新たな保護民が、町へと入ってきた。

門の前。

荷馬車に揺られ、肩を貸され、あるいは子供を抱え。

ゆっくりと、だが確実に。生き延びた者たちが、こちらへ辿り着く。

「……また増えましたな」

レオンが横で呟いた。

「ああ」

以前なら頭を抱えていた数だ。

だが今は違う。炊き出し場。簡易寝床。

井戸。見張り台。仮設の治療所。

すでに“受け入れる準備”が整っている。

「随分、賑やかになりそうだ」

子供の泣き声。鍋の音。人の話し声。

死んだ町だったはずなのに、今は確かに生活の音がある。

「相当、苦労した顔だな……」

やつれた頬。擦り切れた服。骨の浮いた腕。

歩いてここまで来たのだろう。

「まずは休ませろ。仕事は回復してからでいい」

「はっ」

「焦らせるな。ここは“逃げ込んでいい場所”だと覚えてもらう」

保護した瞬間から働かせれば、それはもう救助じゃない。ただの徴用だ。

それだけは、絶対に違う。

「ゆっくり体力を回復してもらえればいい」

レオンが小さく笑う。

「甘いですなぁ」

「分かってる」

俺も苦笑する。

「だが、それでいい」

守るために来たのだ。兵を増やすためじゃない。……少なくとも、建前は。

司令部へ戻る。地図を広げた。この町を中心に、周囲へ円を描くように印が増えている。

保護済み。偵察済み。廃墟。

「当面、ここを拠点にする」

指で町を叩く。

「保護民が居れば救出。これを最優先だ」

「了解」

「兵の半分は常時待機。即応部隊にする」

「はい」

しばらく沈黙。

だが、頭の奥に引っかかるものが消えない。

「……しかし」

レオンが顔を上げる。

「どうしました?」

視線をさらに西へ。王都方面。

焼け焦げた記憶の方向。

「あそこだ」

「王都、ですか」

「ああ」

騎士団から聞いた話。地獄だったと。

暴動。略奪。放火。殺し合い。

「……それでも」

かつて数万単位で人が住んでいた都市だ。

全員死んだ?そんな馬鹿な話があるか。

「立てこもってる奴がいるかもしれん」

「……」

「地下に隠れている者。建物に籠城している者。周囲の山に潜んでいる者」

考えれば考えるほど。

「見捨てていい人数じゃない」

レオンが腕を組む。

「正直、危険地帯ですがな」

「分かってる」

王都は今、無法地帯。

野盗。崩れた兵。暴徒。何でも居る。

「だが、気になる事が山ほどある」

・本当に全滅か

・生存者は?

・他勢力は?

・物資は?

・そして……王都の現状

知らないのが一番怖い。

「……情報が欲しい、ですか」

「ああ」

即答だった。

「知らずに進む方が危険だ」

レオンがニヤリと笑う。

「つまり」

「偵察だ」

「精鋭を出す」

「お前の部下から選べ」

「了解しました」

少し楽しそうに見えるのが怖い。

「三日以内に準備します。軽装、潜入重視」

「無理はさせるな」

「無理しない偵察なんてありませんよ」

「……違いない」

苦笑が漏れる。地図の王都に、小さく印を付けた。そこには。まだ何があるのか分からない。

希望か。地獄か。

あるいは——

俺の知らない、未来の答えか。

「……行ってもらうか」

静かに呟く。遠く、西の空を見る。

あの日見た、オレンジ色の空が脳裏をよぎった。

王都。

全てが始まり、そして崩れた場所。

次に足を踏み入れる時。

そこには、何が残っているのだろうか。