軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三騎の白旗

カン、カン、カン——!

見張り台の鐘が鳴った。短く、三度。

敵襲ではない。だが、異常ありの合図。

「報告!」

階段を駆け下りてきた見張りが叫ぶ。

「南側街道! 三騎接近!」

「三騎?」

思わず眉をひそめる。少なすぎる。

「騎兵……か?」

「はい。ですが……」

言葉を濁す。

「どうした」

「やたら荷物が多いです。馬の横にも後ろにも積んでいる」

「荷物?」

「ですが武装はしっかりしております。剣、槍、弓……完全武装です」

レオンと視線を交わす。

「……野盗か?」

「数が少なすぎますな」

確かに。野盗なら群れる。

三人で来る馬鹿はいない。

「騒いでいる様子は?」

「ありません。叫びも威嚇も無し」

「なら?」

「……じっと、こちらを見ています」

嫌な沈黙が落ちた。ただ立っている。

近づきも、逃げもせず。

「何だ……いったい」

思わず呟く。レオンが肩をすくめた。

「さー。何でしょうか?」

軽口だが、目は笑っていない。

「ですが」

顎で外を指す。

「普通の連中じゃありませんな」

俺たちは外壁へ上がった。

遠目に見える三騎。

確かに——妙だ。

距離を保ったまま停止。動かない。

まるで、

「……こちらを測っている」

「でしょうな」

武装。荷物。そして動かない、旅人ではない。逃亡者でもない。偵察か?

いや——その時。

「旗を確認!」

見張りが叫ぶ。

「……白旗!」

「またか」

レオンが苦笑する。最近やたら白旗が多い。

「……騎士団か?」

さらに目を凝らす。白旗の下。

もう一本、小さな旗が揺れている。

色。紋章。どこかで見覚えがあった。

「あれは……」

脳裏に引っかかる。確か——

「レオン」

「はい」

「あの旗……見覚えあるか?」

目を細める。数秒。

「あー……」

ポン、と手を叩いた。

「確かベルン領の紋章ですな」

「ベルン領……?」

俺の記憶を辿る。ここよりさらに東。

小さいが、農業と林業が盛んな領地。

確か——

「隣領の隣、だったな」

「ええ。うちとも直接は接してませんが……」

レオンがニヤリと笑う。

「つまり」

「……また“生き残り”か」

王国が崩壊した今。各地の領地は孤立。

王の命令も無い。つまり。

全員が独立勢力。敵にも味方にもなり得る。

「……忙しい世界だな」

「全くです」

三騎は、まだ動かない。白旗だけが揺れている。

「どうします?」

「追い払う理由は無い」

即答する。

「撃てば敵になる」

「会えば、選べる」

レオンが小さく笑った。

「前向きですなぁ」

「面倒事が増えるだけだ」

そう言いながらも、胸の奥では理解している。

今は——情報が命だ。

「合図を出せ」

「了解」

レオンが手を上げる。旗手が動く。ゆっくりと。白旗、そして。“接触許可”の合図。

風に翻る。それを見た三騎が。

ゆっくりと。こちらへ歩み始めた。

カッ……カッ……カッ……

蹄の音が、静かな町に響く。

また一つ。

この崩れた世界の“勢力”が近付いてくる。

王のいない時代。残ったのは。

剣と交渉だけだ。

「さて……」

俺は城壁に手を置いた。

「今度は、どんな話を持ってくる?」

白旗は。希望か。それとも火種か。

まだ、誰にも分からなかった。