軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

火種と再建の足音

西で砦が築かれている頃。

同じ頃——

俺は瓦礫の山の上に立っていた。

「……こっちは、こっちで戦争だな」

小さく息を吐く。元領主館の町。

今は臨時司令部と化した建物の周囲では、

トン、トン、トン……

木槌の音が絶え間なく響いている。

兵が柵を立て。民が石を運び。

女たちが炊き出しを作り。子供が水を運ぶ。

戦場の音ではない。生活の音だ。

これも立派な戦いだった。

「エドワルド様」

レオンが報告書を持ってくる。

「南側区画、清掃完了。建物三十棟が使用可能です」

「思ったより残ったな」

「石造りが多かったのが幸いでしたな」

「住居は?」

「保護民を優先的に入れております。怪我人と老人は中央区へ」

頷く。

「食料は?」

「曙町からの補給と合わせ、十日は持ちます」

「水路は?」

「井戸三本使用可。問題ありません」

淡々としている。だがこの男。

戦場より、こういう整理の方が有能なんじゃないかと思う時がある。

広場を見ると炊き出しの列。

子供が笑っている。数日前まで、建物に籠もって震えていた連中だ。

「……よく、ここまで持ち直したな」

思わず呟く。

「人間は案外しぶといですからな」

レオンが肩をすくめる。

「兵より、民の方が強い時もある」

「違いない」

その時。

「報告!」

偵察兵が駆け込んでくる。

「北西の村より生存者二十三名を保護!」

「軽傷多数、重傷二名!」

「こちらへ移送中です!」

「よし、受け入れ準備!」

すぐに医療班が動く。

女兵——クロスボウ隊の連中も、自然に手伝いに入る。

包帯を巻き、水を渡し、子供を抱き上げる。

「……」

レオンがそれを見ながら小さく笑った。

「やはり悪くないですな、女兵」

「ああ。

怖がられん。むしろ安心されている」

戦うだけが兵じゃない。

守る姿が、民の心を掴む。

これは予想外の戦力だった。

「しかし」

レオンが真顔に戻る。

「周囲の野盗は減りましたな?煙と我々の巡回で近寄らんのでしょう」

「つまり」

「ここはもう“無人地帯”ではないって事だ」

俺たちが居る。それだけで意味がある。

「……町が生き返ってきたな」

瓦礫だった場所に、火が灯り人の声が戻る。

「侵攻」なんて言葉は似合わない。

これは。奪う戦いじゃない。取り戻す戦いだ。胸の奥がざわつく。北の空を見る。

「……父上と兄上は、今頃もっと物騒な準備してるんだろうな」

砦。伏兵。国境防衛。あっちは完全に戦争。

こっちは復興。

同じ戦なのに、やってる事が真逆だ。

「不思議なもんだな」

「何がです?」

「同じ家なのに、やってる戦いが違いすぎる」

レオンは少し笑った。

「どちらも必要だからでしょう」

「……だな」

我々が盾。彼方がが土台。

どちらが欠けても終わる。

「よし」

顔を上げる。

「明日から更に索敵範囲を広げる!まだ生きてる奴が居るはずだ」

「了解」

「この町を——」

瓦礫だった場所を見る。

「ちゃんと“町”に戻すぞ」

「はっ」

力強い返事。木槌の音が、また響く。

それはまるで。この土地の心臓の鼓動みたいだった。戦争の足音の中で。

それでも。

この南の地では、確かに「生きる音」が戻り始めていた。