軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

灰の町の臨時司令部

「エドワルド様」

レオンが戻ってきた。

「使えそうな建物を見つけました」

「あるのか?」

「石造りで火の回りが遅かったようです。壁と屋根は無事。窓も少ない。拠点には最適かと」

「……案内してくれ」

焼けた領主館から少し離れた通り。

そこに、二階建ての石造りの建物が残っていた。恐らく商館か、役所の出張所か。

装飾は少ないが、造りは頑丈だ。

「悪くないな」

扉を押し開ける。中は荒らされているが、倒壊はしていない。

机と棚をどかせば十分使える。

「ここを臨時の司令部にする」

「はっ」

すぐに団員が動き出した。机を並べ地図を広げ、入口に見張りを立てる。

たった数分で、“拠点”の形が出来上がっていく。

流石、レオンの部隊だ。慣れている。

「周囲は?」

「既に索敵済みです」

レオンが即答する。

「この周辺三十軒ほどは空き家。死角も確認済み。伏兵の恐れはありません」

「ご苦労」

「現在はここを中心に、各方面へ偵察を出させています」

地図に印が打たれている。

北、西、南。三方向。

「接触があれば、煙と伝令で即報告させます」

「解った。何かあったらすぐ教えてくれ」

「了解」

外では民兵たちが水を運び、瓦礫を退かし、簡易柵を作っている。

たった百人程度。

確実に「陣」になっていた。

昨日まではただの民。

それが今は町を守る兵になっている。

……人は、環境でここまで変わるのか。

「……ここが終われば」

ぽつりと呟く。

「更に近隣の村々へ偵察を出す」

「はい」

「この町だけ助けても意味はない。周囲も拾っていく」

点ではなく、面で。

「道を作る」

「補給線も安定しますな」

「ああ。ここを中継にすれば南町からも運びやすい」

町を一つ救えばそれは拠点になる。

拠点が出来れば、次へ進める。

救助は連鎖する。

「……戦じゃない」

誰に言うでもなく呟く。

「これは、掃除だ」

腐ったものを取り除き。

生き残ったものを拾い上げる。

それだけだ。

「ですが」

レオンが小さく笑う。

「やってることは、ほぼ侵攻軍ですな」

「……言うな」

「はは」

軽口を叩ける余裕が、少しだけ戻っていた。

重苦しい空気が、僅かに和らぐ。

司令部の窓から、外を見ると焼けた町。

だが。

その中で、人が動いている。声があるし生きている。

「……次だ」

一つ終われば、また一つ。止まる暇はない。

「この町を整え次第、周囲の村を順番に拾う」

「了解」

レオンが踵を鳴らす。

「全て保護対象で?」

「……ああ」

迷いは無い。

「助けられる奴は、全員助ける」

それが俺のやり方だ。

灰の町の真ん中に小さな司令部が出来た。

そこから、確実に新しい流れが生まれ始めていた。