軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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蛇頭の迷宮地下十階にある転送魔法陣で生体情報の登録を行い、魔法陣の起動キーワードを唱えて地上へと帰還した。

「ここはどの辺だ?」

迷宮内の転送魔法陣を利用すると、迷宮入り口の周辺へランダム転移する。周囲に見えるのは巨大な地割れと要塞スネークヘッドの巨壁。

地割れの下に転移したら面倒だなと思ったが、どうやら上部へと転移したようだ。

時刻は夕暮れ、スネークヘッドまでは少し距離があるので移動用車両を使いたいが、あそこには多数の監視所や監視員がいる。

迷宮から溢れ出る魔獣・亜人種の動きを監視するためだ。移動用車両を出して使えば見つかるだろう――、歩くか……。

スネークヘッドまで歩き、内側の門を通過して帰還報告を行った。身体に疲れはないが、地下十階まで繰り返し戦闘を続けてくれば精神的な疲労は積み重なる。

すぐに宿泊申請を出し、多人数用病室のような宿泊スペースへと向かった。

翌朝、朝食を終えた頃に出発する王都行きの巡回馬車の始発へと乗り込み、蛇頭の迷宮へのファーストアタックは終了した。

王都に戻り次第、マリーダ商会へ向かい六角水晶の引き渡しを行い、俺の王都での拠点となる旧商館へと向かう予定だ。

それと商業ギルドだな。シュバルツとして商業ギルドに加入し、旧商館をマリーダ商会傘下の商店として営業させる予定だ。

とは言え、ほとんど開店休業状態になるとは思うが……。開業に必要な書類や税金、営業開始後の税金などに関してはマリーダ商会にすべて担当してもらう。

もちろん諸費用など報酬を支払う形だが、俺自身が経理を行った場合の労力を考えれば、遥かに安く楽にできるだろう。

何事もなく、馬車の幌で二日が経過し王都へと戻ってきた。王競祭が終わってすぐに王都を出発したが、さすがに一週間も過ぎれば王都内は落ち着きを取り戻していた。

しかし、相変わらず第三区域の野外演劇場は“黒面のシャフト”を題材とした劇が演目としてラインナップされていた。

王競祭最終日に闇ギルド“ 覇王樹(サボテン) ”からの刺客に襲われ、俺はシャフトの素顔であるゾンビフェイスを多数の騎士や貴族に晒した。

その影響が何かしらの形で出るのではないだろうか? と考えていたが、今のところそれを見て取ることは出来なかった。

ゾンビフェイスの情報が秘匿されているのだろうか? 思ったよりも口の堅い騎士団と貴族たちなのだな、と思いながら第二区域へと入った。

その後は総合ギルドの商業会館に出向き、商業ギルドのギルドカードを作成し、続いてマリーダ商会へと向かった。

「こんにちはー」

マリーダ商会の商館前に立つ警備員へ挨拶し、奥の応接室へと通された。俺が部屋に入ってすぐにマルタさんもやってきた。

元々、帰還が今日になるのは伝えてあったので、直ぐに動けるようにしていたのだろう。

「ご無事の帰還なによりです、シュバルツさん」

「ありがとうございます」

「蛇頭の迷宮はどうでしたか?」

「そうですね、僅かな時間で地下十階まで到達することが出来ました。色々と初めての経験もしましたが、順調に下りられそうですよ」

応接室のソファーに向かい合うように座り、お茶を啜りながら二人だけで報告会を始めた。

「さすがですね。六角水晶はどうでしたか?」

「そちらも問題なく採集してきましたよ。一メートル越えの水晶を十八本です」

「十八本! それは凄い!」

「旧商館の準備はどうですか?」

「内装工事は終わり、一階は商店としていつでも使用可能です。二階は事務所と休憩所として利用できる程度の家具をご用意してあります。地下室はご希望通りに床を丈夫な石板に張り替えて、棚などはすべて回収いたしました」

「ありがとうございます」

「それではさっそく向かいましょうか。商業会館でギルドカードは準備されましたか?」

「えぇ、ここに来る前に加入してきました」

マルタさんと開業に関しての細かい部分を確認し、まずは旧商館へと向かうことになった。

商店の営業を開始後はマリーダ商会から人を借り、店番や商品メンテナンスを手伝ってもらうことになっている。

それと商店の警備と売り子の護衛として、マリーダ商会の護衛団から護衛もやってくる。

旧商館の引き渡しにはマリーダさんも合流し、マリーダ商会の馬車二台で商会の倉庫に寄りながら旧商館へと向かった。

倉庫に寄ったのは、蛇頭の迷宮で採集してきた六角水晶を取り出すためだ。倉庫内では俺とマルタさん、マリーダさんの三人だけになり、ギフトBOXを召喚して倉庫内に六角水晶十八本の受け渡しを行った。

その後、第二区域の外れまで移動し、通りに馬車を止めて一本内側の細い街路へと歩いていく。

見えてきた石造二階建ての旧商館。最初に訪れたときは、木扉の上部にある看板ブラケットには何もついていなかった。しかし、今は俺が注文した看板が吊るされている。

屋号は『大黒屋』、開業日も営業時間も不定の名ばかりの商店だが、基本的には昼過ぎから夕方ごろに営業する予定でいる。

売り子として手伝ってくれる娘たちも、掃除を兼ねてその時間に来てもらうことになっている。

その売り子たちだが、マルタさんが手配してくれた娘はエイミーとプリセラの十代の少女コンビ、その護衛はアルムとシルヴァラの狐系獣人族の姉妹だった。

出発の時に改めて紹介はされたが、マルタさんがこの四人を手配したのは、俺が抱える幾つかの秘密が露見する可能性があったとしても、命と尊厳の恩人であるシャフト=シュバルツの不利益になるような動きはしないだろう。

そう言った思惑の下、マルタさんは四人を大黒屋の手伝いとして連れてきたそうだ。

馬車にアルムとシルヴァラを残し、エイミーとプリセラを連れて中へと入っていった。

一階と二階を軽く確認し、少女たち二人は二階の給仕スペースでお茶の用意をしてもらいつつ、俺とマルタさん、マリーダさんの三人は地下倉庫へと移動した。

「シュバルツさん、これが地下倉庫の魔石消費型魔錠紋です」

マリーダさんから判子の様な形の魔錠紋を受け取り、錠紋の反対側に魔石を一つ入れる。入れる魔石の属性は何でもいいらしく、腰のポーチから取り出した小さな水属性魔石を入れれば錠紋が淡く光っているのが見える。

これで使用可能状態か。

大きな鉄製の両開き扉を固く閉める魔錠に魔錠紋を押し当てる。魔錠紋に刻まれた半円の魔紋と、鉄扉の魔錠に刻まれた半円の魔紋が合わさり、淡い光と共に接合部に小さな魔法陣が浮かび上がった。

『魔抜け』であり、魔力を持たない俺でも魔錠紋がしっかりと使用できたことに一安心しつつ、魔法陣が魔錠に染み込むように消えていくのを見守る。

魔法陣が消えるのと同時に、魔錠から鍵が外れる音が聞こえた。これで解錠が出来たのだろう。魔錠紋をポーチにしまい、鉄扉を開いた。