軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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王都の第二区域の外れにあるマリーダ商会の旧商館。そこを買い取り、『大黒屋』として俺の隠れ家的商店として利用することにした。

商店の受け渡しにマルタさんとマリーダさん。そして、今後手伝いをしてくれるエイミーとプリセラを連れて、各部屋を見て回っていた。

今は地下倉庫の中を見渡している。元々あった収納棚はすべて撤去され、古くなっていた床材を固い石材へと変更してもらった。

柱一つない広々とした空間を確認し、申し分ないと頷きながら振り返り、マルタさんとマリーダさんと共に二階の事務所兼休憩室へと移動した。

「いかがでしたか?」

「十分です、マリーダさん。ありがとうございます」

事務所の応接スペースでマルタさんらと向かい合うように座りながら、ここへ持ち込んだ茶葉からエイミーが淹れてくれたお茶を啜っている。

「ご満足いただけて良かった。それで、『大黒屋』で取り扱う商品はもうお決めなのですか?」

「えぇ、マリーダ商会と商品が被るのは避けようかと思いまして、取り扱うのは家具の類と簡素なヘアケア商品や浴室用具でも取り扱おうかと」

「へあけあ? ですか?」

「あぁ……、主に浴室で使う液体の石鹸と思っていただければ」

「あのシャフーワインは取り扱はないのですか? 王競祭で王侯貴族の皆さまにお出しした後、問い合わせが多数来ておりますよ」

「それはマリーダ商会経由でお願いします。後でシャフーワインの在庫を用意しておきますので、帰りに馬車で持ち帰ってください」

「在庫の補充は助かりますが、家具と浴室用品ですか……」

そう言って、いつもの柔和な笑顔とは違い、商人の眼を光らせてお茶を飲むのはマリーダさんの横に座っているマルタさんだ。

「そう言えば、“黒面のシャフト”の素顔を見られたそうですね。貴族のご婦人方やお嬢様方の間で噂になっておりますよ」

「やはり、広まっていましたか。王都の様子があまり変わっていなかったので、少し不思議に思っていたところです」

「一般都民にまでは、まだ広がっていないようです。むしろ、広がることはないと思われます」

「それはまた、なぜ?」

「秘密の共有ですよ。騎士たちは現場で見たことを言いふらすようなことはしませんが、その奥方や娘たちぐらいには話もします。それを聞いた女性たちは、“黒面のシャフト”の素顔について色々な噂をしているようです」

「噂――ですか?」

「えぇ、なぜ醜い顔を魔法で癒さないのか? それは誰かへの復讐だろうか? それとも何かを果たすための誓いなのだろうか? とね」

なんだよそれ……。

マルタさんの話によると、貴族の女子たちの間で、“黒面のシャフト”に対する評価が迷宮討伐者の大傭兵から、誓いのために自らに枷を嵌めた、黒衣の騎士と見る人が増えているそうだ。

それから、王城のバーグマン宰相からの手紙が届けられていた。転送魔法陣と模擬魔法陣の調整が完了したようだ。いつでも王城にきて回収しろと言うことだが、その際には必ずゼパーネル宰相経由で自分を呼べと言う条件付きだった。

その後もマルタさん、マリーダさんと色々と話しながら、ワインの在庫の受け渡しなどを済ませ、エイミーとプリセラを連れて帰っていった。

エイミーとプリセラの二人は、明後日の午後にまずは出勤してもらう予定でいる。

明日は魔法陣を受け取りに行き、その後は開店の準備だ。正直なところ、この『大黒屋』で利益を上げるつもりは全くない。ここの経営で時間を取られて迷宮討伐に出かけられません、なんて馬鹿を見るつもりはない。

取り扱う家具はVMBの個人ルームに置いてある TSS(タクティカルサポートシステム) の上位システムからSHOPにアクセスし、個人ルーム用のインテリアを購入する。

それをギフトBOXでこの世界へと持ち出して、通常の高級家具より遥かに高値で陳列して置く予定だ。

浴室用品に関しては、コンチネンタルからワインを取り出すついでに復元して持ち出せるものを考えた時に目についた物だ。他にも高級羽毛布団も持ち出す予定でいる。

どれも通常商品よりも高値で陳列し、形だけの高級インテリアショップを作る予定だ。

マルタさんたちを見送った後、一階の店舗スペースにスパイカメラを設置し、地下倉庫の入り口前にも設置した。

これで商店内の映像が俺の視界に常に浮いている。意識するだけで映像を非表示にすることもできた。

しかし、スパイカメラの映像を非表示にするなんて、VMBのゲーム内ではそんな機能はなかったはずだが……。

倉庫内に入り、何も置かれていない空間にコンチネンタルを召喚し、ベッドへと向かった。

翌日、俺は王城へと来ていた。

湖上に建つサンクチャ・グラーボ城へと繋がる吊り橋を渡り、衛兵に登城目的を伝えた。

待機所に通され迎えがくるのを待っていると、今回もやってきたのはシャルさんだった。

「お待たせ、まずは屋敷へ行きましょ。後でジジイもくるわ」

シャルさんの後を追い、芝生の広がる中庭に敷かれた石畳の道を歩き、ゼパーネル永世名誉宰相が住む、武家屋敷の様な瓦屋根の住居へと向かった。

「シュバルツ、この十日間は何をしていたの?」

黙って歩くことに飽きたのか、前を行くシャルさんが振り返りながら、そんなことを聞いてきた。

王競祭に参加していた――、のはシャフトだしな……。

「蛇頭の迷宮へ行っていましたよ。戻ってきたのは昨日です」

「迷宮かぁ~、あの暗くて狭い感じ嫌いなのよね。魔道弓が避けにくくて効果的な反面、常に対複数の迷宮は弓にはきついし」

「確かに、そういう面もあるかもしれませんね。逆に、シャルさんは普段何を?」

「わたし? 私は姉様と宗主の護衛をしながら、ここの近衛と練魔の毎日よ! たまには王都に遊びに出たいけど、姉様は宗主に付きっきりだし、宗主は殆ど外に出ないのよ」

「アシュリーは何を?」

「姉様はゼパーネル家の当主になるべく、宗主から色々と教わっているわ」

「そうですか……」

たしか……、あの南部の海での海賊船団討伐が、当主になるための試験のようなものだったはず。海賊船団自体は俺がほとんど壊滅させたのだが、それによってアシュリーは功績をあげ、ゼパーネル家当主としての教育が本格的に始まったということか。

アシュリーの未来が明るいこと自体は喜ばしいことだが、当主になるための教育と言うことは、あの不老の幼女――ゼパーネル宰相から色々と聞くことになるのだろう。

それは『魔抜け』の真実である『枉抜け』のこと……、そこから導き出される俺のこと……。

アシュリーがそれを知った時、彼女はどのような反応を見せるだろうか。

そんな不安や恐れが頭の中をグルグルと回り出した頃、石畳の先に瓦屋根の家屋が見えてきた。

「前に通した部屋は覚えてる?」

「えぇ、もちろんです」

「なら先に行ってて、姉様と宗主を呼んでくるわ!」

「わかりました、勝手に上がらせて貰いますよ?」

なんだか友達の家にあがるような感覚で返答しつつ、靴を脱いで玄関をあがった。

前回来た時にはまさか靴を脱ぐとは思っていなかったので、アバターカスタマイズで急遽服装を変更することになった。

今回は予めパワードスーツを脱いでおり、スムーズに玄関を上がることが出来た。

屋敷の奥へと向かうシャルさんと別れ、中庭の見える廊下を歩きながら応接室へと向かった。