作品タイトル不明
第297話 名誉だけども……
話をしていると、定食がやってきたので食べる。
そして、ヘレンと共にさっさと食べ終えると、混んでいるので店を出て、2人と共に本部に向かった。
すると、受付にサシャがいたのでそちらに行く。
「あ、ジーク先輩、来られたんですね」
サシャが笑顔で声をかけてきた。
「ああ。リート以来だな。あの時は助かった」
「いえ、私もすごく勉強になりましたし、その節は大変お世話になりました。リートは良いところでしたし、皆さん、良くしてくれましたから楽しかったです」
それは良かった。
「勉強の方はどうだ?」
「過去一の状態で受けられそうです。頑張ります」
大丈夫そうだな。
「頑張ってくれ。お前なら大丈夫だ」
「はい。あ、ジーク先輩、アデーレ先輩達も試験を受けるために来られると思うんですが、いつまでおられるんですか?」
んー……
「具体的な日数は決まっていないが、有休消化のために3日、4日は滞在しようって話をしている。ただ、延びる可能性もある」
「有休消化、ですか……」
「そんなものもあったわね」
チビ2人が顔を見合わせた。
悲しい本部のエリート共だ。
「あの、時間があればちょっとお時間をもらえないですかね? 先輩に相談したいことがありまして……」
相談ねぇ……
「アデーレも一緒が良いか?」
「はい。そっちの方が良いです」
「わかった。明後日にはあいつらも来るし、ちょっと聞いてみる。多分、時間はあるし、大丈夫だ」
アデーレも断りはしないだろう。
「ありがとうございます。あ、本部長ですか?」
「ああ。おられるか?」
「ええ。ジーク先輩が来たら本部長室まで来いっていう伝言を預かっています」
「わかった。行ってみる」
俺達は受付を離れると、階段を上がっていく。
「相談って何だろ?」
ゾフィーがリーゼロッテに聞く。
「恋の相談じゃないですか? ジ、ジーク先輩、昔から好きでした、的な」
「あんた、本気で言ってる?」
「そんなわけないです。アデーレさんがセットならあり得ません」
「どっちみち、ないと思うけどね……」
絶対に違うだろ。
階段を上がると、2人が3階で立ち止まった。
「じゃあ、私達はこっちだから」
「ジークさん、ご馳走さまでした」
昼食代は俺が出したのだ。
「ああ。お前らも試験を頑張れよ。ゾフィー、落ちても気にするな」
「うっさい」
ぷんすかと怒るゾフィーと共にリーゼロッテも廊下を歩いていったので階段を上がっていき、本部長室の前までやってきた。
「本部長、ジークヴァルトです」
そう言いながらノックをする。
『おー、入ってくれ』
許可をもらったので扉を開け、中に入る。
すると、本部長がデスクにつき、書き物をしていた。
「お久しぶりです」
「そうかぁ? あ、いや、会ったのはこの前の鑑定士の試験以来か」
結構、電話してたし、久しぶり感はあまりないな。
「大人になると、時間が経つのが早いですね」
「私はもっとだよ」
知ってる。
30歳を超えると、本当にあっという間になる。
「お仕事中ですか?」
「たいした仕事じゃない。それよりも体調はどうだ?」
風邪のことね。
「もう大丈夫です」
「それは良かったな。お前が体調を崩すなんて珍しいことだ。お前の悪性に勝つなんて、よほど大臣の風邪は質が悪いらしい」
あんたがかかったくらいだからな。
「ゾフィーはリートに来たから知っていますが、クヌートは?」
「あいつも大丈夫だ。見舞いに行った時、ゾフィーは涙目だったが、クヌートはいつもと変わらなかった」
メンタルが雑魚と強者だからな。
「問題ないなら良かったです。両隣だったし、一緒に帰った2人だったので俺が悪いのかと思いましたよ」
「同じことを私も思った。そして、大臣が悪いと思うことにした」
俺も思った。
「質が悪いですからね。本題に入りますが、試験官の仕事は?」
「明日、朝から試験会場に行ってくれ。そこで説明がある」
あの箱モノの会館ね。
「わかりました。注意点は?」
「受験者を見ることも大事だが、試験官も見てくれ。アウグストのことがあるからな」
試験官の不正のことだ。
「何かあると思いますか?」
「いや、今回はさすがにないと思う。とはいえ、警戒はしろ。アウグストに近かった奴もいるだろ」
どうかね?
人のことは言えないが、あいつも結構な嫌われ者っぽいし。
「わかりました」
「お前の嫁共はどうだ?」
嫁じゃない。
「大丈夫だと思います。逆に一門はどうですか? 勉強会をしているんでしょ?」
「あれなー……私は懐かしいし、嬉しいんだが、何の意味があるかわからん」
そんなあんたのためだよ。
親孝行だ。
「皆も思うところがあるのでしょう」
「ふーん……まあいいか。試験ねー……クリスは微妙、ハイデマリーは受かりそう、テレーゼ、クヌート、ゾフィーは無理だな」
結構、無理だな。
「テレーゼも無理ですか?」
あいつは遊んでいたクヌート、背伸びのゾフィーとは違う。
「あいつは止めた。今はゆっくりさせた方が良い。リーゼロッテの指導に集中し、次で目指せって言ってあるんだ」
なるほど。
確かにそれが良いかもしれないな。
テレーゼは実力は間違いないし、無理をさせる必要もない。
「クリスがダメでハイデマリーが受かるってことはついに並びますね」
宿命のライバル同士が並ぶわけだ。
「面倒なことだ。いや、ハイデマリーが3級になるのは喜ばしいことなんだがな」
でも、争いがさらに激しくなる。
「ハイデマリーはそもそもすでに2級になってないとおかしいですからね」
あいつはそれだけの才能があるし、努力も情熱もある。
「弟子が可愛いんだろ。クリスに関しては申し訳ないが」
あんたが邪魔してるもんな。
対貴族のために仕方がないことではあるが。
まあ、クリスに関しては後で聞けばいいか。
「では、明日から試験官の仕事に入ります」
「ああ、頼む。時にジーク、お前、いつまでいる?」
「試験後、3日、4日はいると思います」
「そうか、そうか。実はとある人物が大変、お前を買っている。この国最高の錬金術師、いや、世界の中でも最高だとな。まさしく国の宝と」
ふむ……見る目があるな。
「誰ですか?」
「陛下だ」
あー……