軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第298話 絶対に嫌だ

「陛下ですか……例の金属探知機?」

「そうなるな。お前が作った機械はこれまでの採掘を大きく変えるものだ。鉱物はそのまま国力に繋がるし、戦争が長引き、資源が消費されている我が国ではとても明るいニュースになる」

うーん、やはりやりすぎだったか?

「筆跡鑑定機とは違いますか」

「比べ物にならないな。あんなもんはおもちゃだ。そう思えるくらいにあれは国にとって価値があるものだ」

筆跡鑑定の方が大変だったのにな……

「大量に作れと言われますかね?」

「普通にな。設計図は?」

「こちらです」

本部長に設計図を渡す。

「ふむ……なるほど。電磁波で金属を探しているわけか……確かにこれなら鉄や銅だけじゃなく、他のも探せるな。それをわざわざ制限をかけているんだな。というか、その制限の方が大変だろ」

それはそう。

「あまり大事にはしない方が良いと思いまして」

「それはそうだ。世界には少し早すぎる。技術革命は良いことだけではない。過ぎる力は人をダメにする」

それもそう。

「いかがしましょうか?」

「この設計図を預かるぞ。もうちょっと制限をわかりづらくする」

本部長がやってくれるのか。

「研究者の手に渡りますが、大丈夫ですかね?」

「今から言うことは聞かなかったことにしろ。あんな年を取っただけの無能共に何がわかる。あのジジババ共は試験を受けて1級になったわけではない。試験が確立する前にそれまでの実績や貴族の権力で1級になっただけだ。己の地位と権威を守るために否定することしかしない老害だな。これを見て、さらに改良しようという頭も研究欲もない。時代遅れの化石だ」

おー……まったくもって同意見。

「では、大丈夫ですかね?」

「あいつらが引退し、次の代になるまではな」

次の代は真面目に試験を受けて、1級になった奴らか。

それでもたいした奴らじゃないが、改良くらいはできる。

「では、それでお願いします」

「論文を出さないといけないが、どうする?」

さすがに要求されるか。

「師匠、お願いします」

「……まあ、私が書くか。さすがにお前の名前も載せるからな」

それは仕方がないだろう。

俺が作ったって陛下も知っていることだし。

「ありがとうございます。私は忙しいのです」

「絶対に私の方が忙しいぞ……まあいい。そういうわけで陛下が会いたいそうだ」

会う……

「謁見ですか?」

「そんな大層なものじゃない。普通に茶でも飲むだけだ。よく私も誘われる。忙しいってのに……」

今の言葉こそ、聞かなかったことにしろって言うべきでは?

「いつでしょう?」

「今日」

ホント、いつも急かすよな、この人。

「すみません。これからクリスのところに行きますし、多分、夜もクリスと一緒です」

「ん? 珍しいな。お前、ゾフィーやテレーゼとはよく一緒にいるが、クリスと2人なんてないだろ」

俺、そんなにゾフィーとテレーゼと一緒にいたか?

「そうですかね? いや、実はクリスに服を買ってもらったんですよ。ちょっと高いレストランに行くことになったんで」

「ほう? デートか。陛下よりそっちを優先するとは良い御身分だな」

陛下のお茶会なんてどうでもいいだろ。

「鑑定士を受かったら連れていくって約束したんですよ」

「受かったのか?」

「レオノーラだけ」

「あいつか……じゃあ、いつならいいんだ?」

んー……

「明日、明後日は試験官ですし、その翌日なら」

「わかった。それで調整しよう」

「実は陛下に作れと言われるかと思って、金属探知機をもう1つ作っている最中なんですが、それはどうしましょう?」

「明々後日までに作れ。陛下に寄贈する」

まあ、そうなるわな。

「わかりました。そのお茶会とやらはこの格好で良いですかね?」

なんかクリスがごちゃごちゃ言ってたけど。

「構わん。貴族ならまだしも庶民がそんなことを気にするな。それに陛下は懐のデカさだけが取り柄だから寝巻きで行っても笑って許してくれる」

録音機とか作ったら怒るかな……

昔からそうだったけど、この人ってナチュラルに人をバカにした物言いをするんだよな。

よく左遷されなかったと思うわ。

「では、このまま行きます」

「ああ。それとゾフィーに聞いたんだが、本格的にサシャを狙っているんだって?」

あの身内だけおしゃべりチビめ。

親しくない人にはおどおどするくせに身内には饒舌だ。

「言い方に語弊がありますね。この前、リートに来て、仕事を手伝ってもらったことがあったでしょ。勧誘自体は前からしていたんですが、実際に錬金術の仕事をやらせたあの時にちょっと揺らいでいただけです」

試験も受かりそうだしな。

「ふーん……受付嬢が好きだねー」

「受付の人間が不満を持っているだけですよ。本部長だって受付に配属されたら異動願を出すでしょ」

もっとも、この人も受付には向かないがな。

それもゾフィーやリーゼロッテの比ではない。

「まあなー……受付も大変とは聞いているし」

「確認ですが、サシャが異動願を出したら受理してくれますか?」

「リートが人不足なのはわかっているし、受付なんて代わりはいっぱいいるからな。却下する理由はないな」

じゃあ、問題ないな。

あとはサシャがどういう結論を出すかだ。

「では、そうします」

「はいよ。お前が面倒を見るのか?」

「全員で見ることになりますかね? 幸い、先輩のアデーレがいますので何とかなります」

頼もしいアデーレ先輩。

「そうかい。まあ、わかった。そうなったらハンコは押してやる。ただ、女ばっかりだな」

支部長がいるわ。

「じゃあ、クリスをください」

クヌートでもいい。

「無理。私が行ってやろうか?」

「それでは失礼します」

姿勢良く、一礼する。

「はいはい。陛下の件についてはまた連絡する。ホテルは?」

「この前と同じです」

「わかった。それでは頼んだぞ」

「はい」

用件が済んだので部屋を出た。