作品タイトル不明
第295話 3回目の王都へ
仕事を終えると、エーリカの部屋で夕食を食べた。
その後、いつものように勉強会をしたが、さすがに早めに終え、自分の部屋に戻ると、明日の準備をする。
「今回はお一人ですね」
準備をしていると、ヘレンが声をかけてくる。
「お前がいるだろ」
「私は使い魔ですのでいて当たり前です。そういう意味ではなく、いつも御三方と一緒なので久しぶりの一人旅だなと思いまして」
わかっている。
ヘレンはもはや俺の一部なのだ。
いなくなったら死ぬ。
つまり心臓。
「別にたいしたことじゃない。何よりも2日で来るだろ」
「そうですけど、寂しくないですか? いつも賑やかな人がいませんし」
「まったく」
いた方が楽しいというのはわかる。
しかし、いなかったら寂しいと思うことはない。
何故ならたった2日だし、その2日もやることが多いから。
そして何よりもヘレンがいれば寂しいと思うことなんてない。
よく寝てるけど、そこにいてくれるだけで良いのだ。
「そうですか。まだかなー……」
何がだ?
ヘレンと話しながら準備をし、いつものように寝室でウィスキーのロックを飲むと、就寝した。
翌日、いつもの時間に起き、エーリカの家で朝食を食べる。
「今日からジークさんがいないので寂しくなりますね」
エーリカが苦笑いを浮かべた。
「そうか?」
「隣がいないのは寂しいですし、いつも一緒でしたから」
エーリカもヘレンと同じことを言っている。
もしかして、この感性の方が正しいのかもしれない。
「エーリカさんはオーバーね。すぐに会えるわよ」
「そうだよー。それよりもジーク君、浮気したらダメだよ?」
嫁が2人もいる奴に言われてもね……
「誰とするんだよ」
「うーん……姉妹はないだろうし、マルティナちゃんもない……消去法でサシャ?」
サシャも消去法で選ばれたくなかっただろうな。
「ねーよ。想像できるか?」
「できない!」
だろうな。
「そんなしょうもないことより、留守の時に何かあったらホテルか本部に電話しろ。それと今日、明日は別に仕事をしなくていいからな」
「まあ、ポーションの仕事しかないしねー」
そういう風に調整した。
帰ったらまた役所や軍なんかに営業をかけ、仕事を受ける予定。
「万全な状態で試験を受けられることを優先してくれ。ずっと勉強を見ていたが、普段の力を出せば、お前らなら絶対に受かる」
さすがに今回は妨害もないだろう。
そのために俺が試験官に入るわけだし。
「わかりました!」
「受かったら皆でサイドホテルに行こうか」
「良いわね」
アデーレのために睡眠薬を作るか。
また前日に泣かれたら嫌だ。
「じゃあ、俺は行く。明後日、ホテルでな」
食事を終えたのでヘレンを抱えて立ち上がる。
「はい。私達も朝一で行くので昼には着くと思います」
「ジーク君も忙しいだろうし、夕方くらいに会おうねー。ホテルに言って、同じフロアの隣の部屋にしてもらったから」
「ジークさんも頑張ってね。試験官とケンカしないように」
しない。
お前はお母さんか。
「ああ。支部長によろしく言っておいてくれ」
そう言って、部屋を出ると、表に回り、そのまま空港に向かった。
そして、チケットを買い、飛空艇に乗り込むと、窓から外を見る。
しばらくすると、飛空艇が浮いていき、リートの町並みが一望できる高さまで浮上した。
「久しぶりに見たな」
やはりリートは良い町だと思う。
「いつも窓際はエーリカさんとレオノーラさんに譲ってましたもんね」
2人は空の旅が好きだからな。
アデーレは嫌いだが。
「ふっ、なるほどな」
「どうしました?」
「お前やエーリカが言っていた寂しいというのが少しわかった」
飛空艇に乗ると、思い出すのは3人娘と乗った時のことだからだ。
外を見て、楽しそうな2人、すました顔でビビりまくっているアデーレを思い出す。
他にも例のよろしくない本を持たせて遊んだことなんかもだ。
「それが……愛ですよ」
………………。
「言ってて、恥ずかしくないか?」
「ちょっと……」
だろうな。
「最初、王都からここに来た時にお前と同じ風景を見たが、あの時と変わって見えるな」
あの時も良い町そうだなと思ったが、今は良い町だとはっきりと言える。
「そうですか?」
「育ててもらった本部長に悪いが、こっちの方が故郷に思える」
まだ半年くらいしかいないのに。
それほどまで王都に思い出がない。
思い出すのは図書館と孤児院、そして本部長の家だけだ。
「良いことですね。私も好きですよ。町の人は穏やかで明るいですし、海も美味しい……綺麗です」
そうだな。
魚介は美味しいな。
「お前も俺がリートにいた方が良いと思うか?」
「思います。リートにいた方が表情が和らいでおられますし、楽しそうです」
そうか……
まあ、それはヘレンもそうだな。
のんびり屋さんで寝てばかりなところは変わっていないが、楽しそうにしていると思う。
「それでいいか」
「そうですよ」
俺達が話していると、もうリートが見えなくなったので本を読みながら到着を待つことにした。
ずっと本を読んでいると、昼前になり、王都に到着したので飛空艇から降りる。
そして、ドックから地面に降り立つと、腕を伸ばした。
「あー、さすがに疲れるな」
「お疲れ様です。これからどうしますか?」
「まずはホテルにチェックインだな。そこから昼食でも食べて、本部に行こう」
「わかりました。ホテルはあっちですね」
俺達は空港をあとにすると、前回、前々回と同じセントラルホテルに向かった。