作品タイトル不明
第294話 暇な職場
翌日、朝食を食べると、準備をし、支部に向かう。
すっかり綺麗になったエントランスを抜け、共同アトリエに入ると、3人娘がすでにデスクについていた。
「おはよう」
「おはようございます。支部長が呼んでおられましたよ?」
ちょうどいいな。
「じゃあ、ちょっと王都のことも併せて話してくる」
「お願いします」
エーリカがいつもの笑顔で頷いたのでそのまま支部長室に向かう。
そして、扉をノックした。
「支部長、ジークヴァルトです」
『おー』
返事が聞こえたので扉を開け、中に入る。
すると、いつものようにデスクにつき、新聞を読んでいる支部長がいた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。最近は暑さもなくなり、過ごしやすくなったな」
もう秋に入り始めている。
「ええ。良いことだと思います。それで用件は何でしょう?」
「国家錬金術師試験のことだ。お前は明日から行くんだろ?」
さすがにその辺の決定事項はすでに話してある。
「ええ。明日の朝一の便で行きます。3人娘も試験前日から行きます」
「ああ。それでいつまで王都にいる? 王都に行った前回、前々回と試験後も残っていたが……」
こっちと同じ話だったか。
「今回は特に依頼を受けているということもありません。ただ、せっかくだし、有休でも消化しようかなと昨日、3人と話し合いました」
「そうか。良いことだな。お前らは本当に休まないし、確かに良い機会だと思う」
俺はこの前、休んだけどな。
ただ、それ以外となると、誰かが休んでいるところを見たことがない。
「少し、王都に滞在すると思います。ただ、いつまでも支部に錬金術師が不在というわけにいきませんので数日で帰ってきます」
こういう時に人数が少ないのが影響してくるんだよな。
「わかった。こちらで緊急の用事があれば本部に連絡しよう」
支部長が残ってくれるから安心だ。
多分、午前中とかで帰ると思うけど。
「お願いします。鉱山の方はどうですか?」
「そちらは問題ないと思う。ただ、まだジーンが動いていることに変わりはない。王都で何かの動きがあるとは思えんが、気を付けろ」
さすがにないと思うが、試験といえば、アウグストの例があるからな。
「わかりました」
「それとお前は依頼がないと言ったが、多分、陛下から例の金属探知機をもう1つ作れと言われるんじゃないか?」
あー……俺が作ったやつはまだリートで使ってるもんな。
「ある、かもしれませんね」
「頭には入れておけ。滞在期間が延びるようだったらその都度、連絡をしてくれればいい。幸か不幸か、ウチが動かなくてもそこまで町は困らない」
最近は頑張っているし、町に貢献している自負もあるが、所詮は4人でできることだからな。
緊急の何かがあっても民間で対応できる。
「一応ですが、この前滞在していたサシャがウチに異動する可能性があります」
あくまで可能性だけど。
あれからアデーレに聞いたが、そこそこ好感触っぽい。
「あの受付の子か。確かお前とアデーレの後輩だったな」
俺は微妙……
一応は先輩と呼んでくれるけど。
「アデーレと同じく、錬金術師なのに受付をしていることに少なからずの疑問は持っています。ただ、アデーレと違い、受付の仕事も嫌いじゃないようですし、王都生まれ、王都育ちの実家暮らし民です」
「なるほどな。まあ、来てくれたらありがたい程度に思っておけ。無理に誘っても続かんし、逆に良くない噂が流れるぞ」
ただでさえ、俺のせいで左遷先のイメージが付いてしまっているからな。
「そうします。そういえば、支部長の息子さんも同じ魔法学校でしたよね?」
「残念ながら魔術師志望だ。そして何より、親のもとで働きたくないだろ」
ダメそうだ。
「わかりました。では、明日から王都に行ってきます。明日は支部に寄らず、そのまま空港に行きますので」
「ああ。試験官の仕事を頑張ってくれ」
話を終えたので一礼し、デスクに向かった。
そして、デスクにコーヒーが置いてあったので席につき、一口飲む。
「支部長さんは何の話でした?」
ポーションを作っているエーリカが聞いてくる。
「相談しようと思っていたことと同じだ。話をして、数日は王都に滞在することになった」
「おー、それは良かったです」
「数日ってどれくらいだろ?」
「さすがに試験が終わって、3日、4日じゃない?」
そんなものだろうな。
「それとだが、支部長曰く、陛下から金属探知機を作れって言われる可能性もあるかもしれん」
「あー……」
「あれはねー……」
「無理を入れるなら各鉱山、いや、山がある町分だけ作ってほしいわよね」
さすがに無理だがな。
「それについてはちょっと考えてみる。さすがに設計図は渡せない」
「なんでですか?」
エーリカが首を傾げる。
「あれは鉄や銅を探す機械だし、そう説明してあるが、そんなわけない。何だって探せる」
「とんでもないものを作りましたね。金が採れ放題じゃないですか」
さすがに金を採れ放題ということはないと思うがな。
この世界でも金は貴重だし、そもそも量が少ない。
ただ、それでも革命になる。
「面倒なことになりそうだから適当に誤魔化す」
「ジーク君、なんかとんでもない武器も作ってたし、その気になれば戦争を終わらせられるんじゃない?」
光線銃な。
「恨まれるような兵器は作りたくないな」
これは昔から思っていた。
前世の記憶がある俺は色んなものを作れる。
それは兵器もだ。
時間と暇があれば、戦闘機だって作れるだろう。
それだけの技術と知識を師である本部長から教わっている。
「そうですよ。錬金術師は人々の生活のためにあるんです」
「そうね。少なくとも、このリートでは必要ないわ」
まったくだな。
「そういうわけで俺はちょっと金属探知機を作る。お前達は引き続き、ポーションを作ってくれ」
「手伝いましょうか?」
「大丈夫だ。2回目だし、そこまで時間はかからない。適当にポーションを作ったら試験勉強のおさらいでもしてくれ」
ポーションなんかいつでも作れるし。
「わかりました」
「私は筆記をおさらいしておくよ」
「私は変わらず、これね」
アデーレの二刀流も違和感がなくなってきたな。