作品タイトル不明
第293話 王都の予定
廃品から地金を抽出する仕事を終えてから1週間が経った。
あれからそんなに難易度の高くない仕事をし、主に試験対策を重点的にしていた。
そして、今日も仕事を終えると、エーリカの部屋で夕食をご馳走になり、そのまま勉強会をしていく。
「どう?」
二刀流錬成をしているアデーレが聞いてくる。
「良いんじゃないか? 多分、実技の方は大丈夫だろ」
もっとも、アデーレは筆記の方が得意だからどっちも大丈夫と言った方が正しい。
多分、この調子ならエーリカとアデーレは受かる。
レオノーラも焦らず、しょうもないケアレスミスをしなければ大丈夫だ。
「何とか間に合ったわね……後は本番……本番……」
本当にプレッシャーに弱い奴だ。
「安心しろ。普通にやれば受かる。ただな、アデーレ、先に言っておくが、次は厳しいぞ」
「試験を受ける前に言う?」
アデーレって本当にジト目ばっかりだな。
最初は怖かったけど、もう慣れたわ。
「言う。お前が今度受ける試験は7級。ここまでは凡夫でも行ける」
「あなたの中の凡夫ってハードル高くない? この世にその凡夫が何人いるのよ?」
1000人もいないな。
「それは努力不足、環境が悪い、勉強の仕方が間違っているかのどれかだ。普通にやればそこまでは行くんだよ。ただ、6級以上は違う。ここからは本当にハードルが上がる」
努力ではどうにもならない才能がいる。
「資格証の鷲のネックレスが銅から銀に変わる6級ね。エンチャントだっけ?」
「ああ。エンチャントはすでにできるようになっている。ただ、難しいのは確かだ。7級に受かった後の次の3ヶ月後に受かろうと思うならかなりの努力が必要になる」
俺はいらないが、俺以外の人間はそうだろう。
「頑張れってこと?」
「ああ。7級は通過点だ。」
3人娘はすでにエンチャントをできるようになっている。
だから才能はある。
ただ、3人娘の欠点である魔力の低さが壁になる。
「あなた、何故か私にばかりプレッシャーをかけるわよね?」
気のせいだと思う。
「お前はエーリカやレオノーラより一つ上の階級だから自然とそうなる。次の試験ではこいつらにも言う」
「プレッシャーです」
「というか、8級は通過点の通過点って言ってるんだよね」
そうだが?
落ちるなよ。
「お前らならそれくらいの才能と努力してきたものがあると思っているから言っているんだ。マルティナやサシャには言わない」
ゾフィーはどうでもいいや。
「おー! 頑張ります!」
「飴と鞭が上手になったねー」
「そうかしら?」
アデーレだけ納得していないっぽい。
アデーレの失敗を実は喜んでいたことがバレたからかな?
「何にせよ、頑張ってくれ。落ちてもいくらでもやり直せるのが試験だ」
心が折れなかったらな。
まあ、その辺は大丈夫だと思う。
「まあねー……ジークさんも今回は試験官として会場にいるのよね?」
「そうなるな。お前らと会うことはないと思うが」
俺が担当するのは10級か9級。
「ジーク君、明後日、先に行くよね? 何時に出るの?」
レオノーラが聞いてくる。
「朝一で出ると思う。午後から本部長と会って、その翌日には試験官の説明会がある」
あと、クリスを訪ねないといけない。
「私達は前日に着くから一緒にご飯を食べようよー」
そうだな……
「試験の前日だし、部屋で食べるか。翌日の試験が終わった時に打ち上げに行こう。アデーレ、店を頼んだぞ」
都会女子さん。
「そうね……それは良いんだけど、結局、いつまで王都にいるの? 今回はジークさんが頼まれごとをしていないし、帰るなら翌日になると思うけど」
「翌日はダメだよー」
レオノーラが腕でバツ印を作った。
「ああ……あなたはジークさんとディナーだったわね」
鑑定士に受かったのはレオノーラだけだからな。
「そうそう。私はジーク君と大人な夜のデートさ」
ちょっとドキドキする。
マナーとかの方で……
「私もエーリカさんと夜景を見ながら夜のデートを楽しむわ」
「素敵ですー」
良かったな。
「お前ら、有休って残っているか?」
「いっぱい残ってますねー」
「あんまり休まないしね」
「仕事も苦じゃないし、健康そのものだもの」
本当に俺の風邪が伝染らなくて良かったと思う。
「明日、ちょっと支部長に相談してみる。もう観光するところもないだろうが、良い機会だから有休消化をしても良いと思うし」
「お買い物とかありますよー」
「新しくオープンしたオープンカフェで優雅なティーを楽しむのが都会女子の嗜みらしいよ」
「良いわね。それ」
良いか?
青空錬金術と一緒だろ。
なんなら寮や海でバーベキューだってした。
「わからん。ヘレン、わかるか?」
「どこに行くかより、誰と行くかということはわかります」
ほう?
「なるほど。レオノーラとディナーを楽しむのは良いが、ハイデマリーとは死んでもごめんって思う感じだな」
まずどっちが誘っても断るし、そもそもどっちも誘わない。
あいつとも長い付き合いになるが、一緒に飯を食べた記憶が……あ、いや、この前、3人娘とテレーゼとバーベキューを食べたか。
あのテレーゼが底だった時。
「んー……まあ、そんな感じですね。ちょうど涼しくなってきましたし、オープンカフェで優雅にケーキを食べるのも良いものですよ」
ヘレンが食べたいんだな。
「そうだな。まあ、適当に考えてくれ。俺は何もない」
「また一門の勉強会とかないんですかね?」
エーリカが聞いてくる。
「どうだろ。あれ以降もやっているみたいだが……」
ゾフィーからそう聞いている。
「ジークさんはお姉さんやお兄さんや妹さんが多いですからなんだかんだで色々あるんじゃないですか?」
ないなー……
「あいつらも試験を受けるし、基本、激務だからな……まあ、顔ぐらいは見せると思うけど」
本部長やクリスは絶対に会うし、テレーゼとクヌートはちょっと気になるから会う。
ハイデマリーはどうでもいいが、マルティナに土産でも持っていこうと思っているから会うことになるだろうな。
ゾフィーはどうでもいいや。
この前会ったばかりだし。
「良いと思いますよ。アデーレさんもお友達と会いますよね?」
「あー……そうかも。多分、マルタとエルヴィーラさんは会うわね」
サシャは頭数に入れなくていいしな。
どうせ受付にいる。
「うーん……1週間とは言わないが、数日はいても良いかもな」
「そうですねー」
「良いと思う」
「明日、相談しましょう」
そうするか。