作品タイトル不明
第291話 身長は関係ない!
マルティナとギーゼラさんが帰った後も仕事をしていき、16時くらいになると、サシャが最後のフライパンから鉄を抽出し、1キロではないがインゴットを作った。
「できました」
「ああ。お疲れさん。ゾフィーもご苦労だったな」
「はい」
「気分転換になるかと思ったけど、さすがに飽きたわ」
ゾフィーはひたすら抽出だったからな。
「ジークさん、仕事を終えましたけど、どうしますか?」
一応、他の軍からの仕事は残っているが……
「キリも良いし、今日はもういいや」
「わかりました」
「え? いいんですか? まだ1時間くらいありますけど」
サシャが驚く。
「あと1時間で何をするんだよ」
「いや、まあ、そうですけど……」
「サシャ、これが地方の支部よ。こいつら、好き勝手やってるから」
ゾフィーが呆れたように諭す。
「ちゃんと成果は出しているからいいんだよ。それよりもお前らは今日までだ。支部長に挨拶でもしよう」
「あ、そうですね」
「…………あれ? 前回、挨拶したかな?」
してないな。
というか、支部長、すぐに帰ったからいなかったし。
なお、昨日もいなかった。
「今回はいる」
そう言って立ち上がると、2人も立ち上がったので支部長室に向かい、ノックをする。
『何だー?』
「ジークです。少しよろしいでしょうか?」
『いいぞー』
許可を得られたので扉を開け、ゾフィー、サシャと共に中に入った。
そして、デスクにつく支部長の前まで行く。
「支部長、サシャとゾフィーは今日が最後なので挨拶です」
「仕事の方は?」
「緊急依頼の方も鉄の抽出の方も終えました」
「そうか。2人共、よくやってくれた。助かったぞ」
支部長が頷きながら礼を言う。
「仕事だし、あれくらいなら問題ないわよ」
「私はすごく勉強になりました。ありがとうございます」
ガキンチョと礼儀がしっかりしている受付嬢の差。
「うむ。今回のことはちゃんと本部長にも報告しておく。とにかく、よくやってくれた。引き続き、本部でも頑張ってくれ」
「当然ね」
「ありがとうございます」
ゾフィーは……まあいいか。
「では、2人は明日帰りますので」
「わかった。ジーク、ちょっといいか?」
んー?
「2人共、片付けと戸締りをして、先に帰ってくれ。3人にもそれを伝えてくれ」
「わかりました」
「じゃあ、先に帰るわー」
2人はそう言って、支部長室を出ていった。
「支部長、何でしょう?」
「例の探知機の件だ」
「何かありましたか?」
「あれから色々と試してみたみたいだが、精度が高く、かなりのものらしい」
俺が作ったんだから当然だ。
「なら良かったです。ぜひとも活用していただきたいですね」
「ああ。町長は前に言っていた通り、緊急で予算を組み、鉄鉱石や銅鉱石の採掘を開始した。近いうちに市場にも出回るだろう」
出回っても当分は奪い合いだな。
まあ、それもひと月もあれば収まるだろう。
「それは良かったです。鍛冶屋もエーリカの実家も助かるでしょう」
「ああ。町長は大変喜んでおり、お前に表彰状を渡したいって言ってたぞ」
他にないんか?
「表彰状は一枚で十分です」
また取材がついてきたら嫌だ。
「そうか。では、こっちの方で断っておこう」
「お願いします」
こっちは忙しいのだ。
「試験は再来週だったな? 出張で来ていた3人も含めてどうだ?」
「ゾフィーとマルティナは無理ですね。ただ、3人娘とサシャは十分に可能性があります」
変なミスをしなければ受かるだろう。
サシャに至っては試験で普段の錬成を見せてくれたら丸を描く。
「わかった。引き続き、頼む」
「ええ。では、私も失礼します。あ、キリが良いので帰りますので」
「俺も帰る」
ですよねー。
俺は支部長に一礼をし、支部長室を出た。
すると、エーリカ、レオノーラ、ゾフィーの姿はあったが、アデーレとサシャの姿がなかった。
「2人はどうした? もう帰ったのか?」
「御二人は今日、サイドホテルで夕食を一緒にするらしいですよ」
あー、なるほど。
「先輩と後輩だったもんな」
「ジーク君の後輩でもあり、ゾフィーの先輩でもあるけどねー」
まあな……
俺達は支部を出ると、15秒で裏の寮に着き、その場で別れた。
「あー、リートも今日で最後かー。ご飯が美味しかったのになー」
ゾフィーはソファーに座り、着替えや本なんかで散らかっている周囲を片付け始める。
「リート支部に異動願を出せばいいんじゃないか?」
「ジークられるのは嫌」
俺の名前を動詞にするんじゃねーっての。
「お前が来てくれたら楽になるんだけどな」
やはりゾフィーは5級なだけあって、実力はある。
何も言わなくてもどんどんやってくれるのは非常に楽だし、他の者の指導までしてくれたのは助かった。
「私は私の仕事があるのよ。そういうのはサシャに期待しなさい」
サシャねぇ……
「どう思う?」
「私の予想では半々ってところ。やっぱり錬金術師志望なんだから実務をやりたいでしょ。実際、楽しそうに仕事をしてたしね。一方でせっかく本部に就職できたのに遠方のリートはねぇ……ましてや、あの子、王都出身で実家暮らしでしょ」
確かにそこはネックか。
「まあ、アデーレに期待するか」
「どうかしら? まあ、来ると良いわね」
俺達はその後、エーリカの部屋に行き、海鮮の夕食を食べる。
そして、この日は勉強会をせずにカードゲームをしながら過ごしていった。
ゾフィーがめちゃくちゃ強くてビビった……チビのくせに。