軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第290話 帰る

クリスが支部を出ていったので共同アトリエに戻る。

「クリスも大変ねー……」

抽出した鉄をインゴットに変えているゾフィーがしみじみとつぶやく。

「そう思うなら手伝ってやったらどうだ?」

「嫌よ。貴族なんかと関わって、怖い目に遭ったらどうするのよ。慣れているクヌートが手伝うべきね」

あいつがやるかねー?

そう思いながら席につき、仕事を再開した。

この日は残っているボーキサイトも片付け、全員が鉄の抽出をしていくと、夕方になったので家に帰る。

そして、エーリカの家で夕食を食べるのだがこの日はマルティナも来ていた。

マルティナは明日帰るため、皆で食べようということになったのだ。

「美味いのう……おぬしは本当に料理が上手じゃ。妾のメイドにならんか?」

アサリを頬に詰めながら食べているエルネスティーネがエーリカを称賛する。

「ありがとうございます。でも、錬金術師なんですよー」

「惜しいのう。マルティナを鍛えるか? うーん、こやつ、パスタを茹でるくらいしかできんからの」

「お手伝いくらいはしてますよ」

「皿を持ってくるだけな」

盛り付けることができるアデーレの方が上だ。

何もしない俺は何も言えないけど。

「マルティナ、実家の維持管理の方は業者が見つかったのか?」

「はい。役所の人が紹介してくれた業者さんです。エルちゃんも良いって言いましたので大丈夫だと思います」

じゃあ、大丈夫だ。

俺達はその後も料理を食べていくと、食後のお茶を飲み、勉強会をする。

「どう思う?」

マルティナの勉強を見ていると、エルネスティーネが聞いてくる。

「受かるかどうかか?」

「うむ」

「こいつが本格的に勉強を始めて、1ヶ月ちょっとだ。それを考えれば十分な進歩だと思うが、それで受かるようなら誰も苦労しない。国家錬金術師試験は最高峰の難易度の試験なんだ」

一言で言えば、無理。

「そうか。まあ、そうじゃろうな。実技と筆記では?」

エルネスティーネもわかっているだろうに聞いてくる。

まあ、マルティナに聞かせたいからだ。

「実技は今のままでは無理だが、このペースでやっていけば、10級の壁はすぐに越えられるだろう。筆記は厳しいな。これはもうひたすら勉強するしかない。ハイデマリーやお姉さん方に教えてもらえ」

「マルティナ、わかったか?」

「はい。頑張ります。でも、申し訳ないんですよね。皆さんの時間を奪うみたいで……」

その気持ちもわからないでもない。

多分、ハイデマリーの弟子連中は皆、そう思っているかもしれない。

「教えることも勉強になるんだ。教えるには本質を理解しないといけない。お前もいつか、妹弟子やもしかしたら弟子を取ったら教えてやれ。本当に勉強になるから」

「ジークさんもそうでした?」

いや?

「頑張れよ」

「あ、はい」

マルティナが頷く。

「よし、お前に特別な問題集をやろう。これをやると、ゼロ点は防げるぞ」

そう言って、問題集をテーブルに置く。

「そうなんですか?」

「そうなんだよ」

1、2問はそのまんまの問題を出したし。

なお、2、3問はひっかけ問題になっている。

似たような問題だが、ちょっと違う感じ。

ちゃんと理解してないと必ず、間違える。

「わかりました。やってみます」

「頑張れよー」

「はい」

「泣かんのか?」

エルネスティーネがマルティナを見上げる。

「泣きませんよ。10級に受かったら泣くんです」

当分、泣かないらしい。

「ほーん……」

エルネスティーネも同じようなことを思っていたようだな。

「エーリカ」

「はーい」

エーリカが封筒を取り出し、マルティナに渡す。

「んー? 何ですか?」

「お給料。手伝ってくれたでしょ」

「え? もらえるんですか?」

「そりゃそうだろ。ゾフィーやサシャは協会の人間で給料がちゃんと出るが、お前は協会所属じゃないからバイト代を払わないといけない。この前も船を手伝ったから渡しただろ。今回は鉄の抽出の仕事をしたからその金だ」

正直、この前はほぼ仕事なんかしてない。

でも、今回はちゃんと働いて、戦力になってくれた。

大手を振ってバイト代を出せる。

「ありがとうございます……」

「それはこちらのセリフだ。非常に助かったぞ。おかげで明日には終わりそうだ。また何かあったら頼むわ。ウチはどうしても人数が足りてないから緊急依頼が出ると厳しいんだよ」

「わかりました! 私でできることがあればやります! 地元ですし、恩を返します!」

うんうん。

頑張ってくれ。

その後も勉強会をしていったが、良い時間となったので解散となった。

翌日、マルティナがいなくなったものの、残っている廃品の数もわずかなので最後の一頑張りをしていく。

すると、受付の方にマルティナとギーゼラさんの姿が見えた。

「エーリカ」

「はい」

俺とエーリカは立ち上がり、2人のもとに向かう。

「こんにちはー」

「もう出られるんですか?」

ギーゼラさんに聞く。

「ええ。最後に挨拶をと思いましてね」

「そうですか。昨日、マルティナに聞きましたが、維持管理の業者が見つかったらしいですね」

「そうなんですよ。これで実家の維持の方はなんとかなりそうです。それと娘を見ていただき、ありがとうございました」

ギーゼラさんが頭を下げる。

「いえいえ。本当に手伝ってもらいましたから。またお願いしたいくらいですよ」

「なら良かったです。また王都に来た時は声でもかけてやってください」

ハイデマリーのところに行けば、そこにいるからな。

「ええ」

「ギーゼラさんもお身体に気を付けてくださいね」

「はい。それでは」

「ありがとうございました」

「またの」

ギーゼラさんとマルティナが頭を下げると、巣箱からエルネスティーネが顔を出し、すぐに引っ込める。

そして、2人は笑顔で手を振り、支部から出ていった。