軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第237話 親不孝

ゾフィーが調子よくべらべらと人の悪口を言っていると、エーリカがお茶を持ってきてくれたので皆で飲む。

「そういや、お前、飛空艇製作チームに異動になったんだってな」

「そうそう。いやー、大変だわ。でも、あんたらと船を作った経験が生きたわ。本当に助かった」

まあ、飛空艇は空飛ぶ船だからな。

だからこそ、リートの錬金術師が引き抜かれたわけだし。

「次の4級は受かりそうか?」

「無理言うな。今は新しいチームに慣れるのにいっぱいいっぱいよ。というかさ、あんた、なんであんなところで人間関係に失敗するの? すごく良い人達ばかりじゃないの」

飛空艇製作チームか。

「それはな、すごく良い人ばかりということを今、お前に聞いて初めて知ったからだ」

知らねーよ。

「あ、そう……弟子3人とお幸せに……」

「お前も弟子を取ったらどうだ?」

「どれかちょうだいよ。私、誰かと上手くやる自信がない」

やらんわ。

「エーリカは同い年だが、レオノーラとアデーレは年上だぞ」

「無理ね……ああ、このままだと一門で一番性格が悪い称号が私のものになりそう」

なれよ。

「お前、いつまでいるの? 休みなんだろ? 帰れよ」

「良かった……あんただ」

ゾフィーがしみじみと頷いた。

「帰らないならちょっと手伝え」

「何を? ってか、あんた、何してんの? まだマルティナ用の問題を作ってるわけ?」

今、10級の試験問題を作っている。

「惜しいな。ちょっとした問題作りだ。マルティナが解けなさそうな物理の問題を作ってくれ」

ゾフィーに紙を渡す。

「あの子はほとんど無理じゃない? いやまあ、頑張っているみたいだけどさ」

「暇なんだろ? 作ってくれ」

「まあ、いいけど……」

俺達はゾフィーを加え、それぞれの作業を続けていった。

そして、昼になると、エーリカ……とアデーレが作ってくれた昼食を食べる。

「ゾフィー、クヌートに聞いたんだが、勉強会はどうするんだ?」

こいつが発起人だ。

「あー……本部長の体調次第ね。最悪はあんた抜きかも……」

「俺は構わんぞ」

「本部長は良くないと思うな……」

「来月で良いだろ。多分、来る」

試験官だからほぼ絶対だけど。

「また来るの? その弟子への優しさを他の人に向けたらいいのに」

「ほっとけ」

俺達はその後も話をし、昼食を食べ終わった。

「御馳走様。片付けや洗い物は私がするわ」

ゾフィーがそう言って立ち上がる。

「何もしてない私もやるよー」

レオノーラも立ち上がり、ゾフィーと空いた食器を持って、部屋を出ていった。

「コーヒーを淹れますね」

エーリカも立ち上がり、部屋を出ていく。

この場には俺とアデーレが残される。

あと、満腹になってご機嫌顔で丸くなって寝始めたヘレン。

「お前は行かんのか?」

いつも手伝っているのに。

「さすがにあの人数でキッチンに行ってもね……」

それもそうか。

屋敷は広いが、キッチンは普通の大きさなのだ。

「小さいの2人でいっぱいいっぱいか」

そこにコーヒーを用意するエーリカ。

「ゾフィーさん、元気だったわね」

「調子を取り戻したんだろ。ああいう口が悪い奴なんだ」

「仲が良くて結構」

別に良くないんだけどな。

「アデーレ、今日、楽器店に行くか?」

「あら? 覚えてたの?」

そりゃな。

「今日は早めに帰ろうと思うからホテルに戻ったら夕食までに時間がある。ちょっと見に行こうじゃないか」

「今さらだけど、ジークさんはつまんないと思うわよ?」

「そうでもない。お前の演奏は良かった。俺は音楽のセンスもないし、たいして興味もないが、また聴きたいと思えるものだったぞ」

あの酒をガンガン飲ますの以外は思考が穏やかになる感じがしたし、非常に良い演奏会だった。

「そ、そう? じゃあ……行く?」

そう言ってるし、お前が誘ってきたんだろ。

そう思ったが、目の前で寝ているはずなのに幽体離脱したヘレンが俺の肩で『行け行け』と言っているので口には出さない。

「行こう。せっかく王都に来たんだしな。やはりリートよりは豊富だろう」

「うん……じゃあ、行きましょうか」

アデーレの笑顔を見て、本当に音楽が好きなんだなーと思いながら待っていると、3人が戻ってきたので食後のコーヒーを飲み、午後からも作業を続けた。

そして、2時くらいにゾフィーが帰っていき、3時くらいになると、俺達も帰ることにし、片付けをする。

「明日もここですかね?」

エーリカが聞いてくる。

「そうだな。本部長のこともあるし、ここでやろう。だから材料や本は置いていっていいぞ」

「わかりました。そうします」

俺達は片付けを終えると、本部長の寝室まで行ったのだが、寝ていたのでメモ書きを残し、寝室を出た。

「ちょっといいか?」

寝室を出ると、ふと気になった。

「どうしたんですか?」

「こっちだ」

俺達は歩いていき、とある部屋の前に立つ。

そして、扉を開き、中に入った。

部屋は10畳くらいであり、デスクとベッドがあるだけのシンプルな部屋だった。

「ジーク君、ここは?」

レオノーラが聞いてくる。

「俺が10年以上住んでいた部屋だな。物置にでもなっているのかと思ったが……」

俺が魔法学校を卒業し、ここを出ていった時と何も変わっていない。

「さすがにしないと思いますよ」

「お母さんはいつ帰ってきてもいいようにしてんだね」

「ジークさん、さすがに年末とかは帰った方が良いわよ」

俺、師匠に年末には帰るようにって言われて、『なんで?』って答えちゃったな。

まあ、帰るか……