軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第238話 デート

俺達は本部長の屋敷を出た後、ちゃんと鍵を閉め、ホテルに戻った。

そして、6時くらいに夕食にすることにし、部屋に入ったのだが、すぐに出て、アデーレと合流する。

「店は把握しているのか?」

俺、楽器店なんか知らんぞ。

「ええ。ちゃんと把握しているから大丈夫」

「じゃあ、行くか」

俺達は階段を降りていき、ホテルを出ると、アデーレの案内で町中を歩いていく。

「楽器店とかはよく行くのか?」

「いいえ、全然行かない……」

あれ? そうなの?

「なんで? 好きなんだろ?」

「楽器店ってね、見ていると店員が話しかけてくるのよ」

「そうなのか? それが嫌なのか?」

お前、そこまでコミュニケーション弱者じゃないだろ。

「話しかけられること自体は嫌いじゃないわ。服屋なんかはしょっちゅうだしね。問題は弾いてみませんかって聞かれること」

あー、恥ずかしいんだ。

「そんなに嫌なのか?」

「嫌というか、なんか自分の心情を吐露している気分になるのよ」

まったく何を言っているのかわからない。

やはり俺に芸術のセンスはないようだ。

「エーリカも良かったって言ってたし、レオノーラも上手って言ってたぞ」

「ジークさん、あまり褒めないで頂戴」

アデーレはそう言いつつ、にやけている。

「俺も趣味とかを見つけた方が良いのかね?」

「あなた、釣りが好きじゃないの」

好き、なのか?

ヘレンが喜ぶし、レオノーラが好きだからやっているだけなんだが。

「そう思う?」

「昨日、帰ったら何をしたいかって聞かれて、釣りって答えてたじゃない」

確かにそう言ったが……

うーん、まあ、深く考えることでもないか。

「魚は美味いしな」

「ええ。そればっかりは王都のどんなレストランでも味わえないわ」

確かにそうだ。

俺達は歩いていき、目的の楽器店に到着した。

店は3階建てのようで各階にさまざまな楽器が置かれているが、アデーレが見るのはヴァイオリンだ。

「店員が来ないぞ」

楽器店は見ていると店員が話しかけてくると言ってたが、店員が寄ってくる気配がない。

「まあ、来ないでしょう」

「そうなのか?」

「ええ」

なんでだろ?

まあ、何でもいいけど。

「ヴァイオリンって高いんだな」

アデーレが今見ているのは50万エルする。

「ヴァイオリンはピンキリよ。高いものは億に届くわ。さすがにお店にはないでしょうけどね」

は? バカじゃないの?

「バカじゃね?」

あ、声が漏れた。

「そういうものなのよ。さすがに買わないけどね。手が届くのはこの辺り」

それでも50万エルか。

高いなー。

「自分で作れば?」

「はい? ヴァイオリンを? 私、そっちの職人じゃないわよ?」

そりゃそうだ。

ヴァイオリンを作れっていう仕事なんかない。

「関係ないだろ。俺だって色々作っているし、エーリカは料理が上手だろう? これは趣味の世界だ。それに得意の錬金術を使ってみたらどうだ?」

俺はほぼヘレンのためだけど。

「自分で楽器を作る…………すごい時間がかかりそうね」

「かけろよ。ここにあるヴァイオリンはお前のためのものじゃない。自分のためだけのヴァイオリンを作ればいい。手伝ってやるぞ」

音楽のことなんか一切、知らんから戦力になるかどうかは微妙だけどな。

「付き合ってくれるの?」

「弟子だしな」

「そう……ちょっと楽器の見方が変わるわね」

「変えろ、変えろ」

俺達はその後もヴァイオリンを見渡していく。

ヴァイオリンは本当にすごく、300万エルのもあり、ヤバいなと思った。

それと同時にアデーレが持っているヴァイオリンがいくらなのかが気になった。

貴族だし、かなり高そうだ。

「アデーレはなんでヴァイオリンなんだ?」

「ん? どういう意味?」

「俺も詳しくないけど、楽器って色々あるだろ? その中でなんでヴァイオリンを選んだのかなと思って」

ピアノでもいいじゃん。

「たいした理由じゃないわよ。武家ってね、結構、楽器をやったりするのよ。お父様もお爺様も嗜んでいるし、たまに軍のお仲間さんと一緒に演奏会なんかもしていたから馴染みがあったの。そんな中、小さい頃の誕生日にお婆様から買ってもらったからやってみただけ。それから時間があればやってる」

へー……軍人が楽器をやるのか。

でも、確かになんとなくだが、イメージが合わないということもない。

「ピアノは?」

「それも実家にあったし、ある程度なら弾けるわね。ただ、もう何年も弾いてない。さすがにピアノは持ち歩けないし、王都のアパートでも今のアパートでもそんなものを置くスペースがないもの」

大きいもんな。

でも、やっぱりピアノは弾けるんだ。

なんとなく似合いそう。

「学校ではやらなかったのか?」

知らないけど、吹奏楽部みたいなのはなかったのか?

「恥ずかしいじゃないの」

それもそうか……

よくわからないが、そうなんだろう。

「前から気になっていたんだが、レオノーラの家と仲が良いんだよな? あいつの家も武家か?」

「いえ、そんなことないわよ。普通って言っていいのかはわからないけど、普通の領地貴族よ。仲が良いのはウチのお爺様と向こうのお爺様が同級生で親友同士だから。すごくてね、お爺様同士もお父様同士も私達も同い年なのよ」

へー……狙ったわけじゃないだろうし、すごい偶然だな。

「それで子供の頃から仲が良いわけか」

「お互いに遊びに行ったり来たりしてたからね。そして、何の因果か同じ職場で同じところに弟子入りしたわね」

俺ね。

「そりゃ良かったな」

「ええ。リートにはレオノーラだけじゃなく、エーリカさんもあなたもヘレンさんもいる。楽しいところよ……誘いに乗って良かったって思うわ」

エーリカも同じようなことを言っていた。

そんな気はないが、もう絶対に王都に戻れないなと思った。