軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第231話 だめー

「アデーレは真面目ですし、優秀です。3級にはなれるでしょう」

「ほう……それはすごいな。貴殿が教えていくのか?」

「そうですね。そうなるでしょう」

「ふむ……貴殿は魔力が素晴らしいな」

爺さんがじーっと見てくる。

「神より才をいただきましたので」

「貴殿の評判はよく聞いている。頭も良く、錬金術師としての腕だけでなく、魔術師としても超が付くほどの優秀だとな」

「そんなものでしょうね」

「否定せんのか? 謙遜は美徳だぞ」

「美徳? ただの嘘でしょう。真実は私に並ぶ者などいないということです」

左遷されちゃったけどね。

「ふむ……では、そんな男に此度の北部での戦争の終着点を聞きたいな」

はい?

「私は軍人ではありません。そういうのは参謀本部でじっくりと話し合ってください」

「ただの雑談だ。第三者の意見から大事な気付きを得ることもある」

それはそうだ。

「北部の戦線は膠着状態と聞きました」

「その通りだ。お互いに攻め手がない」

「向こうの戦力では前線を突破できない。しかし、こちらも追い払うだけの戦力がない。つまりお互いに資源を消費するだけの泥仕合になっている。向こうも何の戦果もないから下がれない……でよろしいですか?」

「誰に聞いたかは知らんが、その通りだ」

本部長。

「なら簡単です。もっとも軍部のやることはないですがね」

「どういうことだ?」

「戦争なんか外交戦略の1つでしかありません。別の外交戦略を選べばいい。レボットに親善の使者を送ればそれで終了です」

レボット王国は戦争している北部のノーザン王国の東に位置する国である。

「レボットはウチと何の繋がりもない国だぞ」

「だからこそですよ。ノーザンはウチとレボットが協力して攻めてくると思います」

ノーザン王国も背後を突かれたらたまらない。

「ノーザンがそう思うか?」

思うわけないだろ。

「思わないでしょう。これは言い訳です」

「ふむ。言い訳とは?」

「ノーザンは攻め手がありません。このままでは国力を消耗するだけ。これは向こうの前線も大臣も王も思っていることでしょう。しかし、此度の戦争は防衛戦ではなく、自分達から仕掛けており、少なくない犠牲が出ています。この状況で失敗しましたでは国内の不満が溜まります、向こうだって派閥があるでしょうし、一枚岩ではないでしょうから簡単には引き下がれません。だからこその言い訳です。レボットが攻めてくるかもしれない。ウチを攻めるのも重要なことだが、第一は国防です。だから仕方なく下がる。この言い訳で向こうは喜んで下がるでしょう」

正直、この戦争はもはや誰も望んでいない。

望んでいるのはウチとノーザン以外の国々だ。

「なるほど。一理あるな。我々軍部がやることがないとは?」

「膠着状態は勝利と同義です。我が国は守っているのですから先に資源が尽きるのは攻めている向こうです。軍は残り数ヶ月、現状を維持すればいいのです。何故なら冬が来るからです。北部では雪が降り、非常に厳しくなります。それは雪国であるノーザンが一番わかっていることでしょう。だからこそ、言い訳が非常に効いてくるわけです」

ノーザンは非常に厳しくなる。

もっとも、その数ヶ月で厳しくなるのはウチもだ。

「ふむ。陛下に上奏してみよう。戦わずして勝つ。これが最上だ」

「けっして追撃をしてはいけませんよ」

「我が軍はそこまで愚かじゃない」

勝ったうえでの追撃なら効果はあるが、そうじゃないならこちらがやられる。

「さようですか。さっさと終わらせてください。本部も北部の支部の錬金術師達もいっぱいいっぱいですよ」

「そうだな。時に貴殿はこれからも錬金術師を続けるのか?」

「もちろん、そのつもりです。来年には2級、5年後には1級ですね。リートで細々とやることになるでしょうが、国家のために尽くしましょう」

適当にやる。

「ふむ……よくわかった。話は変わるが、レオノーラ嬢は元気だろうか?」

レオノーラ?

「レッチェルト家と仲が良いんでしたっけ?」

「うむ。昔から親交がある家でずっと交流してきた家だ。レオノーラ嬢にも何度も会ったことがある」

「レオノーラは元気ですよ。まあ、いつも元気です」

今頃、エーリカと食事を楽しんでいるだろう。

俺もそっちが良かった。

「家出したことは?」

「聞きました。錬金術師になりたかったみたいですし、結婚して家に入るのが嫌だったそうですね」

「そうなのだ。レオノーラの両親も良かれと思って進めていたのだが、すれ違いがあったようだな」

本人の意思を確認してないのもどうかと思うが、よそ様の家のことだしな。

ましてや、貴族だ。

「みたいですね」

「このことを貴殿に伝えるかどうかは非常に悩んだが、伝えておこう。その婚姻先は王都貴族のイェーリス家だ」

どこ? 貴族の家なんか知らねーわ。

「そうですか。大きい家なんですか?」

「ん?」

ん?

「どうしました?」

「イェーリスだぞ。貴殿の兄弟子であるクヌート・フォン・イェーリス6級国家錬金術師の家だ」

………あ!

あいつ、クヌート・フォン・イェーリスだった!

いや、苗字なんて覚えてねーよ。

覚えているのはクリスのプレヒトと本部長のツェッテルだけだ。

他は知らん。

「さようですか……となると、婚約相手はクヌート?」

「そうなるだろうな。いや、そうだったんだろうな」

へー……これ、2人は知っているのかね?

あ、待て、クヌートがなんか気にしてたな。

そうか……レオノーラのことだったのか。

「あの……すみません。私はどうすれば?」

そんなことを教えられてもどうしようもないんですけど?

「知らん」

ヘレンせんせー。

聞かなかったことにしていいですかね?